機能性表示食品の定義とは?効果・メリット・デメリット

わが国には、保健機能食品制度という制度があります。国が有効性や安全性を個別に審査し許可した特定保健用食品(トクホ)と、国が定める特定の栄養成分の規格基準に適合した「栄養機能食品」に加えて、平成27(2015)年4月に、新しく「機能性表示食品」制度ができました。

機能性表示食品とはどのような制度でどのようなメリットがあるのかを学んでいきましょう。

目次

機能性表示食品とは


機能性表示食品とは、機能性を表示した食品のことです。機能性とは、たとえば、「おなかの調子を整えます」「脂肪の吸収をおだやかにします」など、健康の維持や増進に役立つという食品のはたらきのことをいいます。

そして、この機能性や安全性の根拠については、事前に事業が消費者庁に届出がされていますが、消費者庁長官の個別の許可を受けたものではありません。

機能性表示食品が、食品の中でどのような位置づけにあるのか分かりやすい図がありますので、ご紹介します。

機能性表示制度と他の制度
※引用先:機能性表示食品制度に関するパンフレット(消費者向け)

機能性表示食品の市場規模

株式会社富士経済によると、2021年の機能性表示食品の市場規模は4,418億円とのことです。

届出数は順調に増え続けていて、健康食品・サプリメント・加工品・お菓子・生鮮食品など幅広く取り入れられています。

機能性表示食品とトクホ(特定保健用食品)の違い


トクホとは、特定保健用食品のことです。トクホマークでおなじみの方も多いでしょう。トクホも機能性を表示した食品ですが、その有効性や安全性について国の審査が行われ、消費者庁長官による許可を受けたものです。機能性表示食品は、有効性及び安全性の根拠に関する情報等を消費者庁へ届出すればよく、機能性の表示はあくまで事業者の責任です。

トクホは国の許可という高いハードルがあり、これまで事業者は機能性を表示するにはこれを乗り越えなくてはなりませんでした。自社の実験のデータなのでその効果が明らかでも、トクホの許可を得る労力に二の足を踏んで、機能性をはっきり表示できないということがあったのです。

しかし、機能性表示食品の制度により企業はより簡易な手続で消費者にわかりやすい表示ができるようになったのです。このような点が、トクホにはない機能性表示食品のメリットといえるでしょう。

機能性表示食品と栄養機能食品の違い

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栄養機能食品は、「食生活において特定の栄養成分の補給を目的として摂取をする者に対し、当該栄養成分を含むものとして国が定める基準に従い当該栄養成分の機能の表示をするもの」(食品衛生法第19条第1項の規定に基づく表示の基準に関する内閣府令第1条第1項第13号)です。

栄養機能食品と称して販売するには、国が定めた規格基準に適合する必要があります。国が定める基準(http://www.caa.go.jp/foods/pdf/syokuhin830.pdf)ではミネラル5種類、ビタミン12種類について、一日当たりの摂取目安量に含まれる当該栄養成分量の上・下限値、栄養機能表示、注意喚起表示が定められています。

規格基準に適合すれば国等への許可申請や届出は必要ないのがトクホや機能性表示食品と異なる特徴です。もっとも、機能性表示食品は、これら以外の成分についても表示が可能なところにメリットがあるといえるでしょう。

機能性表示食品とサプリメントの違い

サプリメントとは、特定の栄養成分を錠剤・カプセル・飲み物などにしたもので、法律上の定義はありません。
一方、機能性表示食品は、機能性表示制度を利用して消費者庁の求める様式に従って届出されて、認められたものだけが機能性表示食品のマークを付けることができます。

機能性表示食品における表示は?効果効能は何が書ける?

(1)表示すべき事項

機能性について可能な表示は、妊娠していたり、疾病に罹患している方以外の健康の維持及び増進に役立つ旨又は適する旨の表示に限られています。

実際に消費者が手に取る容器包装への表示については以下の事項が必要な記載事項となっています。
(1) 機能性表示食品である旨
(2) 科学的根拠を有する機能性関与成分及び当該成分又は当該成分を含有する食品が有する機能性
(3) 栄養成分の量及び熱量
(4) 一日当たりの摂取目安量当たりの機能性関与成分の含有量
(5) 一日当たりの摂取目安量
(6) 届出番号
(7) 食品関連事業者の連絡先
(8) 摂取の方法
(9) 摂取する上での注意事項
(10) 調理又は保存の方法に関し特に注意を必要とするものにあっては当該注意事項
(11) その他

(2)表示の際に注意すべき事項

これらの表示の際、科学的根拠情報に基づかない表示をすれば、食品表示法違反になるおそれがあります。また、科学的根拠情報の範囲を超えた表示をすれば、不当景品類及び不当表示防止法の不当表示又は健康増進法の虚偽誇大広告に該当するおそれがあります。

また、機能性表示食品の届出等に関するガイドライン[1]では特に注意されるべき記載事項が以下のように挙げられています。

(1) 疾病の治療効果又は予防効果を標榜する用語
(例)「花粉症に効果あり」、「糖尿病の方にお奨めです」、「風邪予防に効果あり」等の表現

(2) 食品表示基準第7条及び第 21 条の規定に基づく栄養成分の補給ができる旨の表示及び栄養成分又は熱量の適切な摂取ができる旨の表示をする場合を除き、消費者庁長官に届け出た機能性関与成分以外の成分(食品表示基準別表第9の第1欄に掲げる栄養成分を含む。)を強調する用語
-1 強調する用語とは、「○○たっぷり」、「△△強化」のような表示をいう。
-2 含有量を色や大きさ等で目立たせた表示は望ましくない。
-3 主要面に成分名のみを目立つように特記した表示や機能性関与成分であると消費者に誤認を与えるような表示(例:◇◇(届け出た機能性関与成分以外の成分)のパワー)は望ましくない。

(3) 消費者庁長官の評価、許可等を受けたものと誤認させるような用語
「消費者庁承認」、「消費者庁長官許可」、「○○省承認」、「○○省推薦」、 「○○政府機関も認めた」、「世界保健機関(WHO)許可」等、国や公的な機関に届け出た、承認を受けた、と誤認させる表現である。

(4) 食品表示基準別表第9の第1欄に掲げる栄養成分の機能を示す用語
別表第9の第1欄に掲げる養成分の機能には、別表第 11 の第3欄に示されている機能も含む。

機能性表示食品の機能の科学的根拠について

化学試験
食品の届出に当たっては、表示しようとする機能性の科学的根拠を説明するものとして、 (1)最終製品を用いた臨床試験(2)最終製品又は機能性関与成分に関する研究レビュー、のいずれかの資料を用意しなくてはなりません。

これらの資料は、公正かつ正確であることが求められています。たとえば、機能性表示食品については、主観的な指標によってのみ評価可能な機能性の表示も対象となり得るので、主観的な指標を評価指標とすること自体はかまわないのですが、その指標は日本人において妥当性が得られ、かつ、当該分野において学術的に広くコンセンサスかが得られたものでなければならないとされています。

なお、機能性表示の内容に関する科学的根拠情報等については、消費者庁のウェブサイト等詳細に情報開示されており、消費者が販売前から知ることができるようになっています。

機能性表示食品の安全性確保

ナースとドクター
喫食実績、既存情報を調査、安全性試験の実施のいずれかにより安全性を評価することが事業者に求められています。また、機能性関与成分と医薬品の相互作用がないか、機能性関与成分を複数含む場合、当該成分同士の相互作用がないかの評価も求められています。

また、届出の際には、消費者の食品の選択に資する情報として、加工食品における製造施設・従業員の衛生管理体制、生鮮食品における生産・採取・漁獲等の衛生管理体制、規格外製品の出荷防止体制、機能性関与成分の分析方法について説明することが求められています。

また、機能性表示食品は、医薬品とは異なり誰にでも手に取ることができるものであることから、健康被害が発生した際には、急速に被害が拡大するおそれがあります。そこで機能性表示食品の届出の際には、健康被害情報の収集体制について、健康被害情報の対応窓口部署名、連絡先、連絡対応日時(曜日、時間等)を記載する必要があります。

これらの方法で、機能性表示食品の安全は確保されているのです。

機能性表示食品にはどのような商品例があるか


消費者庁のウェブサイトにおいて、一覧が示されています。先ほど述べたように機能性表示食品については、その機能の根拠などがすべて公開されているのです。

機能性表示食品のデータベースサイトはこちら

特定機能を表示できる食品は、⑴特別用途食品及び栄養機能食品 ⑵アルコールを含有する飲料 ⑶国民の栄養摂取の状況からみてその過剰な摂取が国民の健康の保持増進に影響を与えているものとして健康増進法施行規則(平成15年厚生労 働省令第86 号)第 11 条第2項で定める栄養素(脂質、飽和脂肪酸、コレステロール、糖類(単糖類又は二糖類であって、糖アルコールでないものに限る。)、ナトリウム)の過剰な摂取につながるもの以外の食品全般になります。

つまり、これに該当しないものは手続きをふめば機能性を表示できるので、みかんや、もやしの生鮮食品の生鮮食品の届出も消費者庁で受理されていますし、ノンアルコールビールやチョコレートの機能性表示食品も販売されています。

すでに大ヒット商品となっている有名商品には以下のようなものがあります。

<具体的な商品例
カロリミット、えんきん、カラダカルピス、ルテイン、カゴメトマトジュース、快眠サプリ、ロートV5、など。

事業者側から見た機能性表示食品の実質的なメリット

機能性表示食品で表示できる効果効能は限られていますが、それでもトクホしかなかったときに比べると、表現幅が広がりました。さらにトクホに比べると低い投資金額で始めることができ、中小企業でも取り組むことができます。

消費者側から見た機能性表示食品の実質的なメリット

医学・科学が発達するにつれ、以前よりも優秀な健康食品・サプリメントが市場に増えていましたが、以前は、商品の明確な効果効能が表示できなかったため、消費者にとってもどれが良い商品なのか選びにくいというデメリットがありました。機能性表示食品の登場によって以前よりも明確な効果効能の中から、消費者が商品を選べるようになりました。

機能性表示食品のデメリット

機能性表示食品は、事業者にとって色々とメリットがある制度ですが、デメリットもあります。
届出を出すには、準備しなければいけない資料がたくさんありますし、提出方法は複雑です。さらに、専門的な知識が求められます。また、届出を出したとしても修正を求められたり、審査に時間がかかったりと届出が通るまでには長い道のりがあります。

機能性表示食品取得にかかる費用

機能性表示食品について詳しい人材が社内にいなければ、外部のコンサルティングサービスや専門家に依頼する必要があるかもしれません。その場合は、コンサルティング費用がかかります。

さらに、科学的根拠として、①最終製品を用いたヒト臨床試験、②最終製品又は機能性関与成分に関するシステマティックレビュー、のいずれかの資料を用意しなくてはいけないので、それにも費用がかかります。

①ヒト臨床試験:約数千万円〜
②システマティックレビュー:約数百万円〜
が費用目安です。

まとめ

機能性表示食品についての理解は深まりましたか。機能性表示食品は機能性を事業者の責任で表示することにより、こうした商品の選択肢を増やし、消費者が商品の正しい情報を得て選択できることを目指した制度です。

消費者もこの趣旨を理解し、自らの食生活を省みながら、賢い選択をすることが求められています。

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