漢方薬の種類と効能効果一覧

漢方薬って目にすることが多いですよね。体調が悪い時に飲んだことがある方も多いと思いますし、飲んだことがなくてもテレビのCMで見かけたことがあるのではないでしょうか?

漢方薬は、基本的に複数の生薬を組み合わせて作られています。生薬の組み合わせや配合量が違えば種類が変わりますので、もの凄い数の漢方薬があることになります。それだけの種類があるとどういう時に使えばいいのか分かりませんよね。そして漢方薬の名前は漢字ばかりですし、難しい漢字が含まれていて、違いがよくわからないという方も多いと思います。どういう種類の漢方薬があるのか気になる方も多いでしょう。

そこで、漢方薬の種類と効果についてお伝えしたいと思います。

目次

漢方薬とは?

薬効を持つ植物や動物の一部分や鉱物を生薬と呼びます。「生薬」は、植物の根や皮、ミカンの果皮などの植物性のものから牡蠣の殻や石膏まで普段は口にすることがないようなものまであります。

いくつかの生薬を適切な量で組み合わせて、それを煎じたり、粉薬にしたりすると「漢方薬」になります。

ちなみに、皆さんがドラッグストアで見かける漢方薬は、エキス剤(エキス顆粒)という形になっています。これは煎じて作った漢方薬の水分を飛ばしたものでして、飲みやすくなっています。イメージとしては、ドリップコーヒーに対するインスタントコーヒーみたいな感じです。

漢方薬は生薬の組合せだけでなく、それぞれの配合量が違うと異なるものになりますので、かなり多い数の漢方薬が存在することになります。患者さんの状態によってオーダーメイドで配合量が調節されることもありますので、数千種類以上あると言ってもおかしくはないでしょう。

病院で使われる漢方薬を挙げますと、風邪の症状に使う葛根湯、麻黄湯やお腹の症状に使う大建中湯、肝臓の病気に使われる小柴胡湯、こむらがえりに使われる芍薬甘草湯、冷え性を改善する当帰四逆加呉茱萸生姜湯、イライラという精神状態を抑えることができる抑肝散などなど数多くあります。幅広い症状に対応できることが分かってもらえると思います。

もちろん、これらはあくまでもほんの一部でして、実際、健康保険が適応されることが認められている漢方薬だけでも約150種類あります。

ただ、種類が多すぎて良く分からないという方も多いことでしょう。そこで皆さんが目にすることが多い、ドラッグストアでの販売数や病院での処方数の多い漢方薬の効果について紹介したいと思います。

漢方薬の効能効果一覧15種類

※ここでは、約150種類ある中から一部を紹介しています。
まずは風邪の症状に使われる漢方薬の種類をいくつかピックアップします。

1. 葛根湯(カッコントウ)

葛根湯は飲んだことがある方も多い漢方薬だと思います。風邪の初期症状に使う漢方薬として有名ですよね。頭痛や発熱、首の後ろや背筋のこわばった感じ、寒気がする時に使うのが良いでしょう。身体を温め、発汗を促すことで効果を示す漢方薬です。ですので、汗をかかないような風邪に効果があります。もし、汗をかくくらいの高熱がある場合や体力が落ちている場合には違う漢方薬の使用をお勧めします。

風邪の初期症状の他にも、鼻炎、緊張性頭痛、肩こりの症状にも使われます。

2. 麻黄湯(マオウトウ)

麻黄湯も風邪の初期症状に使われる漢方薬で、体力がある人や症状に関節痛がある場合に効果が高いと言われています。感染症で関節痛と聞くと、インフルエンザにかかったことを思い出す人もいるのではないでしょうか。そうです、麻黄湯は、身体のふしぶしが痛むインフルエンザにも効果があります。こちらも葛根湯と同じく発汗作用がある漢方薬ですので、汗をかくような症状には向いていません。風邪のひき始めで、関節痛を伴う場合に使うのが効果的です。

その他にも、咳に対する効果がありますので、気管支炎やぜんそくにも用いられることがあります。

3. 桂枝湯(ケイシトウ)

桂枝湯も風邪の初期症状に用いられる漢方薬です。これまでに出てきた葛根湯や麻黄湯は体力がある人に使われますが、この桂枝湯は体力がなく疲れやすい人や、胃腸が弱い人に向いていると言われています。ですので、高齢者にも使いやすい漢方薬です。のぼせるような感じ、頭痛、寒気や微熱があって汗が出るような症状に向いています。

4. 麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ)

麻杏甘石湯は、咳に対して使われる漢方薬です。風邪の初期よりも慢性期に使われることが多い薬になります。例えば、風邪を引いて数日経っても咳が止まらない時や、のどの渇きがある状態に適しています。

気管支の緊張をほぐす効果がありますので、風邪による咳以外にも小児ぜんそくや気管支ぜんそくに使われます。

5. 半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)

この名前に含まれる「瀉心」とは、みぞおちのつかえを取り除くと言う意味です。ですので、半夏瀉心湯はみぞおちがつかえてしまうような以下の症状に使われます。吐き気、食欲不振、下痢、軟便、胃腸炎、胸やけなどです。ストレスからくるこれらの症状に効果があり病院でも使用されますが、風邪などの感染性からくる吐き気や下痢にも使われます。中等度の体力があり、吐き気や下痢を伴う風邪の時にお勧めです。

その他、吐き気や下痢を伴う二日酔いにも効果がありますので、お酒を飲み過ぎて翌日まで吐き気が続いたり、下痢になった時に使うのも良いでしょう。

塩酸イリノテカンという抗がん剤を使った時に副作用である下痢が出ることがあり、時には命に関わることもあります。半夏瀉心湯はこの副作用の下痢を軽減させる効果があることが臨床試験によって示されています。このように、がんの治療のサポートとしても使われる漢方薬もあるんですよ。

6. 補中益気湯(ホチュウエッキトウ)

補中益気湯は、名前の通り「気」を補いますので、気力や体力が湧かない、疲れやすい時によく使われます。全身倦怠感や食欲不振といった症状に効果があります。気を補う種類の漢方薬のとされています。

ですので、風邪が長引いて体力が落ちている、倦怠感が強いという時に使われます。また、病気の後、手術の後、夏バテによって体力が落ちた時の食欲不振に使われますし、多汗症にも使われます。

7. 小柴胡湯(ショウサイコトウ)

小柴胡湯は風邪が長く続くような時に使われます。例えば5日以上風邪の症状が続いて体力が落ちて、食欲がなくなったような状態です。横隔膜の前後(肋骨の下部)からお腹の上の部分に対して作用すると言われています。ですので食欲不振や胃腸が弱った感じ、上腹部が苦しくて疲労を感じるような場合に効果があります。

さらに慢性の疾患にも効果があり、「慢性肝炎における肝機能障害の改善」にも使われます。病院でもらう場合にはこの肝機能の改善目的が多いでしょう。

以上、風邪の症状に対して使われる代表的な漢方薬を紹介しました。「風邪かなと思ったら葛根湯」というイメージを持っている方も多いと思いますが、葛根湯以外にもたくさんの種類の漢方薬があるんですよ。そして、症状や体力の有無という状態によって使うべき漢方薬が異なることが分かってもらえたのではないでしょうか。状態にぴったり合った漢方薬を選ぶと速やかに効果が出てきますので、1日~2,3日の服用で十分です。凄いですよね!

ただし、状態にあった漢方薬を使わないと効果が出ませんので、この点を意識して使ってもらえたらと思います。もし、ご自身で分からない場合や医師やドラッグストアの薬剤師に聞いてみると良いでしょう。

ここからは身体の各部位に効果がある漢方薬で代表的なものを取り上げていきます。

8. 大建中湯(ダイケンチュウトウ)

大建中湯は病院での使用数が多い漢方薬です。お腹が冷えて痛むような症状やお腹が張った感じがする症状に使われます。お臍を中心とした冷えがある場合に効き目がでやすいと言われています。血流を良くしてお腹全体を温める効果や腸の動きを活発にする効果があります。

またこの大建中湯もがん治療のサポートとして使用されます。使われるのは、お腹を開ける手術の後です。がんの開腹手術では幅広い部分を処理することが多いため、腸閉塞という腸が詰まったり動かなくなるような症状が出ることがあります。大建中湯は腸の動きを活発にしますので、この手術後の腸閉塞(イレウス)の予防や治療に使われるのです。

9. 芍薬甘草湯(シャクヤクカンゾウトウ)

芍薬甘草湯は古くから痛み止めとして使われてきた漢方薬です。筋肉に作用しますので、筋肉の緊張による様々な痛みに効果があります。有名なのはこむら返り(足がつる症状)に使われることでしょう。「足がつるような時には芍薬甘草湯」というキャッチコピーを見たことがある方もいるのではないでしょうか?
長距離を歩いたり、運動した後などのこむら返りの予防にも使われています。その他にも筋肉の緊張からくる腹痛や腰痛にも効果があります。

さらに最近の研究で、がんの痛みにも効果があることが分かってきました。がんの痛みにはモルヒネなどの麻薬が使われますが、それと一緒に使うことで鎮痛効果が強くなるようです。

10. 当帰四逆加呉茱萸生姜湯(トウキシギャクカゴシュユショウキョウトウ)

当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、名前が長く、難しい漢字が入ってますので、読みにくくわかりにくい漢方薬ですよね。でも実は、冷え症に効果が高い薬なんですよ。手足の先が冷えて痛みが出たり、しもやけになりやすい人にお勧めです。末梢血管の血流を良くして、手足の先を温める効果がありますので、冷え症の治療に使われています。

その他にも冷え症の女性の生理痛も抑えることができると言われています。

11. 抑肝散(ヨクカンサン)

抑肝散は怒りっぽい、イライラしやすいなどの精神状態に作用する漢方薬です。肝を抑えるという名前ですが、ここでの「肝」とは、簡単に言うと気の流れを調節し、感情や自律神経をコントロールする臓器のことです。ですので感情の高ぶりを抑えるというイメージです。昔から子供の夜泣きや疳の虫に使われてきましたし、今では大人のイライラや不眠症にも使われています。

また最近の臨床研究で、「認知症患者の行動・心理症状を改善する」との結果も出ましたので、今後は認知症患者さんにも使われるようになることでしょう。

12. 防風通聖散(ボウフウツウショウサン)

防風通聖散は、お腹の脂肪を落とす、痩せ薬、漢方ダイエットなどと注目されましたので、特に女性の方はご存知なのではないでしょうか?
体力があって、お腹周りに皮下脂肪が多く、便秘気味な人に効果が出るようです。肥満症、むくみ、便秘に効果がありますので、皮下脂肪が多く便秘気味な方の痩せ薬や漢方ダイエットに適していると思います。ただし皮下脂肪が少ないような方のダイエットには効果が期待できませんので、ご注意ください。

その他にも、高血圧からくる、どうき、肩こり、のぼせにも効果があると言われています。

13. 加味逍遙散(カミショウヨウサン)

加味逍遙散は、更年期障害に効果がありますので、女性に対して使われることの多い漢方薬です。更年期障害の症状である、のぼせ、発汗、イライラ、不安などを抑えてくれます。精神を落ち着かせる働きもありますので、更年期障害からくる不眠症だけでなく、ストレスによる不眠症にも使われます。

他にも月経困難症や冷え症にも効果があります。

14. 牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)

牛車腎気丸は腎臓の周囲の気の流れを整えてくれる漢方薬です。尿量を調節する作用がありますので、尿が多いときだけでなく、尿量が減少している時にも使えます。体力が落ちてきた方や高齢者に使われることが多い薬です。
夜間頻尿、排尿困難やむくみの症状に効果があります。

手足の先のしびれにも効果がありますので、糖尿病の合併症のしびれや抗がん剤の副作用のしびれ(末梢神経障害)に対して使われることもあります。

15. 桂枝加芍薬湯(ケイシカシャクヤクトウ)

桂枝加芍薬湯は、過敏性腸症候群に使われる代表的な漢方薬です。テレビなどでご存じの方も多いと思いますが、過敏性腸症候群は現代のストレス社会の病気だと言われています。通勤中の電車の中で急な下痢くるというイメージを持っている方もいると思います。過敏性腸症候群には便秘が酷くなる方もいますが、桂枝加芍薬湯は腸の運動を抑えてくれますので、下痢を抑える目的で使われることが多いようです。

まとめ

漢方薬が幅広い症状、疾患に対応していること、そしてがん治療のサポートとしても使われていることが分かってもらえたのではないでしょうか?

このように漢方薬はいろいろな症状を改善することができます。

今回は皆さんが目にすることの多い漢方薬を選んで紹介しました。体調不良などで困った時に、ドラッグストアで購入する際の参考になれば幸いです。でも実際はまだまだ数多くの漢方薬がありますので、今回紹介した症状に該当しない場合には、専門の病院や薬局に行って相談してみてください。きっとあなたの症状に合う漢方薬が見つかると思います。

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