漢方薬の広告規制・輸入代行規制・薬機法違反事例

漢方薬って医薬品とどう違うのか迷ったことはありませんか?
漢方薬を販売する人は、正確にどのような規制があるのか知っておく必要があります。

さらに漢方薬、漢方(日本漢方及び中国漢方)、生薬など似たような概念があり、それらへの理解も押さえておきましょう。

この記事では、漢方薬の広告表現な、輸入販売の注意点、漢方薬の薬機法(旧薬事法)違反事例についても説明しています。曖昧なままにしてしまっていた漢方薬への知識を整理するのに役立ててください。

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目次

漢方と生薬の違い

まず、漢方と生薬の違いを見てみましょう。漢方と生薬は、それぞれどのような意味を持つのでしょうか。
そもそも漢方には、2つの意味があります。一つは中国漢方、もう一つは日本漢方です。

中国漢方は中国にて発展を遂げた独自の医術薬術のことで、日本漢方とは、古代中国から日本に伝来した医術、薬術が日本において独自の発展を遂げてきた伝統的な医学方法のことです。日本において「漢方」という場合、後者の日本漢方を指すことが多いと思われます。

これら漢方の特徴は、西洋医学と違って患者の個別の症状ではなくその原因に注目し、病気を身体全体の不調ととらえて身体全体の調子を整えることを目的とする点です。このように、漢方とは医学方法論全体を表す言葉です。

これに対し、生薬とは、漢方による治療に使う漢方薬を組成する素材のことです。

薬草の根や葉、皮や種などのそれぞれが生薬となります。
たとえば葛根や芍薬、生姜や甘草などの生薬を組み合わせて葛根湯という漢方薬を作る、という言い方をしたりします。

このように、両者は、生薬は漢方において使われる漢方薬の素材であるという関係になります。

漢方と漢方薬の違い

漢方とは、上記のとおり中国から日本に伝来して独自に発展した医術や薬術の総称であり、方法論です。
これに対し、漢方薬とはその漢方において用いられる医薬品のことです。

漢方薬と医薬品の関係

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次に、漢方薬と医薬品の関係について見てみましょう。
その前提として、そもそも医薬品とはどのような概念化を明らかにしておく必要があります。

医薬品とは薬機法上の概念であり、人や動物の病気の予防や治療を目的とするものであって、その効果効能や副作用、成分や用法容量、安全性などについて調査が行われた結果、厚生労働大臣や都道府県知事が認可したものです。

では、漢方薬と医薬品とはどのような関係にあるのでしょうか。

この点、漢方薬とは、漢方において用いられる医薬品のことです。よって、漢方薬は医薬品の一種ということになります。これに対し、漢方において用いられる生薬から組成される薬類であっても厚生労働大臣から認可を受けていないもののことを、漢方薬と区別して民間薬と呼ぶことがあります

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漢方薬の広告規制と表現できる効能効果

問題
昨今のインターネット通信販売の普及によって、漢方薬についても通信販売市場が盛況となってきています。

このような中、漢方薬を通信販売する機会も増えることでしょう。
そこで注意しなければならないのが広告表現です。
漢方薬の通信販売における広告表現においてはどのような点が問題になるのかを見てみましょう。

漢方薬は、医薬品として厚生労働大臣から認可を受けているものですが、その際特定の効果効能等について承認されているので、その認められた効果効能を標榜することについては問題ありません。

ただ、薬機法上、誇大広告の禁止(第66条)、特定疾病用の医薬品及び再生医療等製品の広告の制限(第67条)、承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止(第68条)という広告規制がありますので注意が必要です。

すなわち、まず医薬品においてはその効果効能について誇大な広告表現をしてはいけません。たとえば、医師などがその効果を保証したかのような表現をすることも出来ません。

また、がんその他の政令に指定される特殊な病気に使用する目的の医薬品については、その広告内容について規制することができるとされています。漢方薬の中にも、この特殊疾病治療目的に該当するものがありえますので注意が必要です。

さらに、承認前の医薬品についてはその製造方法や効果効能について広告をすることが禁じられています。これは、漢方薬についても未承認のものであれば当てはまる規制なので気をつけましょう。

生薬の効能効果表現について

生薬を含んだものが、認められた医薬品ではなく、ただの民間薬や食品でしかない場合、広告や商品パッケージで効能効果を書くと薬機法違反となります。

販売時に口で説明する場合も、規制対象となりますので、注意しましょう。

漢方薬の輸入販売代行にかんする法律・規制

さらに、漢方薬については輸入販売が問題になりがちなので、輸入販売代行にかんする法律や規制内容を確認しておきましょう。

①まず、輸入しようとする漢方薬が、薬機法に該当するものの場合は、厚生労働省が定めた「医薬品等輸入届取扱要領」に従う必要があります。

この取り扱い要領はウェブサイト上に詳しく載っています(厚生労働省 医薬品等輸入届取扱要領の改正について)ので、必要に応じて参照しましょう。

②また、製造販売の目的毎に許認可を得なければなりません
漢方薬を輸入して保管し、独自に表示して販売するなら、製造業許可と製造販売業許可をとる必要があります。

さらに、輸入する品目ごとに、必要な承認や届出をしなければなりません。

必要に応じて「製造販売承認」をとる必要がありますし、医薬品医療機器総合機構宛に「外国製造販売業者等届出書」を提出します。

そして、製造販売業許可を取得した都道府県業務主管課宛てに「医薬品製造販売届出書」を提出し、関東信越又は近畿厚生局宛てに「製造販売用医薬品輸入届出書」を提出する必要もあります。
日本への輸出する外国の業者が取得すべき「外国製造業者認定」については、輸入者が代行して申請することができます。

輸入代行には業界自主基準もあります
これは、日本製薬団体連合会が定めた「生薬及び漢方生薬製剤の製造管理及び品質管理に関する基準」であり、漢方薬等の安全確保のため、製造管理や品質管理・規格などについて規制するものです。

植物防疫法や家畜伝染病予防法上の問題もあります
生薬や漢方薬によっては、植物由来のものは植物検疫(これについては原則として全て検疫対象となります。土付きのものは不可)が必要になりますし、動物由来のもの(指定検疫物のみが対象です)は動物検疫が必要になることがあります。

具体的な詳しい手続きについては、輸入しようとする漢方薬の成分を示して、植物防疫所や動物検疫所に確認すると良いでしょう。どちらにしても、輸出国政府検疫機関等による検査証明書が必要になります。

また、近年増加する輸入に対応して、より効率的な植物検疫を行うために、2011年3月と2012年7月に改正植物防疫法施行規則が施行されました。

これによって、検疫有害植物リストや植物検疫措置内容の見直しが行われたので、ジェトロ貿易・投資相談Q&A「 植物防疫法 」などをご参照いただいて確認すると良いでしょう。

ワシントン条約関連/輸入貿易管理令があります。
ワシントン条約に基づく輸入貿易管理令がありますので、絶滅のおそれのある野生動植物やこれらの個体の一部および派生物について、輸入禁止であったり、輸入時に経済産業省による輸入承認書や確認書、輸出国当局による輸出許可書、原産地証明書等が必要になることがありますので注意しましょう。

⑥最後に麻薬および向精神薬取締法による規制があります。
漢方薬内に、この法律に該当する成分が含まれている場合は、輸入の際事業所それぞれにおいて、厚生労働大臣または都道府県知事による免許が必要になります。

輸入業者の場合は厚生労働大臣の免許取得が必要ですが、この輸入認可は輸入の度に必要になります。輸入相手国が発給した輸出許可証明書を輸入日から10日以内に提出しなければなりません。

なお、結果として輸入しなかった場合は、当該輸入許可書を返納する必要があります。さらに麻薬や向精神薬原料は、輸入貿易管理令上の輸入承認品目ですので、これを輸入する時は経済産業省への承認申請手続きや税関の通関時確認も必要になります。

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漢方薬の薬機法(旧薬事法)違反事例

警察
最後に、漢方薬の薬機法違反事例を確認しておきましょう。

大阪府における東洋漢方製薬が、製造販売していた漢方エキス剤等について、承認申請内容と違う方法で製造販売していたことにより業務停止(2012年3月23日)となった事例があります。

具体的には、この東洋漢方製薬は、その業者が認可を受けて販売していた「東洋漢方の黄耆建中湯エキス顆粒」の有効成分を変更したり、「東洋の安中散料エキス顆粒」その他45品目の有効成分を無断で減量又は増量して、承認書に記載されていない有効成分や添加剤を加えたり、「小青竜湯エキス(顆粒)」の添加剤を増量し、更に異なる添加剤を加えたりしていたことが判明しました。

さらに、同社はこれらの取り扱い製品の適切な品質管理をしないで、適正な製造販売を行う配慮も怠ったという経緯もありました。

まとめ

以上、漢方薬の薬機法上の位置づけやその広告表現、さらには輸入販売代行の規制内容について見てきましたが、いかがでしたか。

漢方、漢方薬、生薬はそれぞれ全く異なる概念なので、しっかり区別しておいてくださいね。

漢方薬を販売するときの広告表現や輸入代行の取り扱いについては間違えば、逮捕や業務停止になる恐れがありますので、漢方薬を正しく扱い、安全なビジネスを行っていきましょう。

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