まだ伸びる?アフィリエイト広告市場規模推移への考察

インターネットに出稿する広告と言えば多くの広告主が、Yahoo!プロモーション広告とGoogle AdWordsに代表されるリスティング広告を、まずは思い浮かべることと思います。

サーチエンジンの検索結果で自社が上位に表示されるという非常にわかりやすいメリットがありますが、入札価格が高騰したり、競合と比較されやすいというコスト面でのデメリットも少なくありません。

一方、アフィリエイト広告は「成果報酬型」とも言われるように、コスト面でリスクが低く使いやすいメリットがあります。そのため広告主からは根強い支持があり、着実に市場規模は拡大しているのが現状です。

美容品・健康食品を販売する方も積極的に活用しています。
※自社だけでなく、アフィリエイター活用時の薬事法違反にもご注意下さい。

まずはアフィリエイト広告市場の規模と推移をご紹介します。

目次

アフィリエイト広告市場は堅実に成長


日本の広告費の統計としては(株)電通の「日本の広告費」が最も代表的です。
それによると、2014年度にインターネット広告全体の広告費(制作費用含む)が初めて総額1兆円を超え、コミュニケーション媒体の潮流の変化を実感させる象徴的な年となりました。

内訳としては、リスティング広告に代表される「運用型広告」がインターネット広告媒体費の6割を占めると推定しています。

一方アフィリエイト広告費の規模は公表されていないため、(株)矢野経済研究所が2012年に行った予測(図)でアフィリエイト広告費の規模を見てみます。2014年度の予測値は、PCとモバイル合計で1,570億円。電通の日本の広告費2014にあてはめると、インターネット広告媒体費の2割を占める規模と推定されます。

図1)矢野経済研究所 アフィリエイト広告費の市場規模予測
アフィリエイト市場規模推移

次にアフィリエイト広告費の伸び率をみると、2010年度以降毎年10%前後で堅調な伸びを示しています。中でもスマホが中心となる「モバイル」の伸び率は顕著です。

海外でもアフィリエイト広告市場は成長

アフィリエイト広告は世界でも堅調な伸びを示しています。
例えば楽天が行った調査結果によると、アメリカのアフィリエイト広告市場は2020年までの5年間で年平均10%成長し、7,500億円規模に拡大すると予測しています。

アフィリエイト広告市場が堅調に伸びている要因

(1)アフィリエイトが広告手法として商材と相性が良い広告主からの根強い支持

アフィリエイト広告は、広告で直接的に訴えかけるのではなく、ユーザーの体験談や第三者の評価を通じてコンバージョンが取れることも大きなメリットです。そのため、金融や教材、化粧品といった広告主からの根強い支持があります。

(2)インターネット広告の主目的であるネット通販市場そのものが拡大を続ける

日本のGDPは人口減少もあって高い伸びは示していませんが、B2Cネット通販市場は引き続き高い伸びを示しています。
またネット通販によらない取引割合が大きく、転換していく余地も極めて大きいのが現状です。

(3)生活者のコミュニケーション手段のネットへの移行は止まらない

SNSの急速な発達により、生活者にとってはますます、インターネットが最も重要なコミュニケーションや情報行動のツールになっている。このことに疑問を感じる人は少ないと思われます。実際にインターネット広告市場の伸びは他媒体に比べて明確に顕著です。

続いて、ネット通販市場とインターネット広告市場について見てみましょう。

BtoCネット通販の伸びしろは極めて大きい

ネット通販市場の規模については、経済産業省が毎年発表しています。
2014年の日本国内のBtoC-ECの市場規模は12.8兆円で、前年から14.6%増えました。2014年の日本のGDP実質成長率はマイナス1.0%でしたので、この伸び率がいいかに大きいかを実感していただけるでしょう。

また「物販系」のすべてのBtoC商取引に占めるECの割合は4.37%、すなわち95%以上の物販購入がまだネット通販化されておらず、取り込める可能性は巨大です。

図2)経済産業省 日本のBtoC-ECの市場規模の推移
日本のBtoC-ECの市場規模の推移

電子出版や動画配信といったコンテンツ販売で構成される「デジタル系」は、物販系やサービス系に比べ目立っても高い伸びを示しています。コンテンツ販売は試聴や部分閲覧によるプロモーションが中心だと思われますが、新たなアフィリエイト広告の対象として伸びる可能性があるかもしれません。

図3)経済産業省 日本のBtoC-ECの市場構成比率の推移
日本のBtoC-ECの市場構成比率の推移

BtoCネット通販の大きな伸びしろを支える要因はもう一つあります。「越境EC」です。
2014年度にアメリカと中国の生活者が日本のサイトから購入した金額は1兆932億円。中でも中国からの購入は2018年には2014年の2倍以上になると予測され、人口規模を考えるとその可能性ははかりしれません。

中国人訪日客による「爆買い」が長く続かないと考えられる要因の一つが、この越境ECの一般化でもあります。「越境アフィリエイト」という言葉が、日本のネット広告業界で一般化する時が近いかもしれません。

図4)経済産業省 越境BtoC-ECの市場規模推計
越境BtoC-ECの市場規模推計

インターネット広告を不安視する材料は見当たらない

次にインターネット広告市場の規模と推移をご紹介します。
(株)電通「日本の広告費」によると、2014年の製作費を含むインターネット広告費は1兆519億円、金額ではTVのまだ半分程度にとどまります。しかしグラフの伸び率をみると一目瞭然、上昇傾向が続いているのはインターネットだけなのです。

広告は古今東西、ターゲット顧客のニーズに合ったその時代のコミュニケーション手段、すなわち人がたくさん集まるところに向けて発信されます。その人の集まるところが今、インターネットです。

またインターネット広告は、その効果を確認しやすいという他の媒体が苦手とするメリットが断然大きいことも、広告主がインターネット広告に軸足を移していくことを下支えしています。

図5)媒体別広告費の推移
媒体別広告費の推移

またネットやリアル店舗、様々なチャネルで同じように買い物ができたりサービスが受けられる「オムニチャネル」構築も現在の大きなトレンドです。

この構築にあたっては複数のサイトを統合して買い物しやすくする改善も行われており、より快適にネット通販できるようになってきています。
ユーザーの行動特性を分析した上でのきめ細かいアプローチは、インターネット広告と非常に親和性が高いのです。

インターネットを生活者や広告主が使わなくなる要因は見当たらない、すなわちインターネット広告を不安視する材料はない、といっても過言ではありません。誰も今更アナログにはもどれません。

ASP企業の動向は?

日本のASP(アフィリエイト・サービス・プロバイダ)の中で、代表的な企業の業績を見ていきましょう。アフィリエイト広告市場を把握するやり方の一つになります。

現在日本の代表的なASP企業は4社あげられます。
業績を参照するにあたっては、以下の注意点を見ておいてください。

・いずれの企業も上場しており、公表された各社の決算短信・決算説明会資料・有価証券報告書から業績値を引用しています。
・グループ企業全体の「連結」業績に加えて、可能な限り「ASP部門」に絞ったセグメント業績値も引用しています。
・ASP部門に絞るセグメント定義は各社により異なります。
・セグメント区分変更等の理由で業績値を前年比較できない場合は「-」で表示しています。

1)株式会社ファンコミュニケーションズ

アフィリエイト広告は、主にPC向けには「A8.net」を運用し、アフィリエイト・サイト数が約200万、広告主数が約15,000でともに業界最大級です。主にモバイル向けには「Moba8.net」を運用しています。ASP企業では初めて上場を果たした企業です。

ファンコミュニケーションズ業績推移
(注)
2014年度以降のASP部門の業績値は「CPA型アドネットワーク事業」セグメント。A8.netとMoba8.netに加えて、スマホアプリCPI広告サービス「adcrops」を含みます。2013年度以前のASP部門の業績値は「パソコン向けアフィリエイト広告サービス」+「モバイル向けアフィリエイト広告サービス」セグメント。A8.net、Moba8.net、adcropsに加え、スマホ向けアドネットワークサービス「nend」を含みます。

2015年12月期の決算短信によると、主力のPCアフィリエイト「A8.net」は、美容・人材カテゴリで売上が大きく伸び、ASP部門全体の売り上げも前年比約20%増加しています。2016年12月期の予測としても「消費者のインターネット利用が堅調」なため、連結売上高6%増を見込んでいます。

2)株式会社アドウェイズ

アフィリエイト広告は、主にPC向けには「JANet」を運用し、アフィリエイト・サイト数は約50万。主にモバイル向けには「Smart-C」を運用しています。伊藤忠商事の資本参加を受け、中国やアジアへの事業展開に積極的な企業です。

アドウェイズ業績推移
(注)
ASP部門の業績値は「広告事業」セグメント。JANetとSmart-Cに加えて、スマホ向けアフィリエイト広告サービス「AppDriver」と、スマホアプリ向け効果測定システム「Party Track」を含みます。

2016年3月期第3四半期の決算短信によると、スマホ向け広告やPC向け広告における金融関連が堅調で、ASP部門全体の売り上げも前年同期比約9%増加しています。2016年3月期の予測としても「スマホの急速な拡大に伴う市場拡大」「アジア諸国でのインターネット関連市場の急拡大」により、連結売上高6%増を見込んでいます。

3)株式会社インタースペース

アフィリエイト広告は、すべてのデバイスに対応する「ACCESS TRADE」を運用し、アフィリエイト・サイト数が約40万です。子育て支援コミュニティサイト「ママスタジアム」の運営企業としても知られています。

インタースペース業績推移
(注)
ASP部門の業績値は「インターネット広告事業」セグメント。ACCESS TRADEに加えて、携帯販売店向け成果報酬型プロモーション「Store Front Affliate」を含みます。

2015年9月期の決算短信によると、FX、カードローン、美容、人材サービス、化粧品、健康食品の広告需要が増加し、ASP部門全体の売り上げも前年同期比約25%と高い伸びを示しています。2016年9月期の予測としても「スマホ広告市場の拡大」により、連結売上高8%増を見込んでいます。

4)バリューコマース株式会社

アフィリエイト広告は、すべてのデバイスに対応する「VALUE COMMERCEアフィリエイト」を運用し、アフィリエイト・サイト数は約60万です。アフィリエイト・サービスを日本で最初に始め、現在はヤフーのグループ企業です。

バリューコマース業績推移
(注)
ASP部門の業績値は「アフィリエイトマーケティングサービス事業」セグメント。

2015年12月期の決算短信によると、金融分野をはじめ、旅行、ショッピング、美容、人材分野の広告出稿が堅調で、ASP部門全体の売り上げも前年同期比約23%増と大きく伸びています。2016年12月期の予測としても「Eコマース市場の拡大とともに一定の成長が見込まれる」ため、連結売上高14%増を見込んでいます。

アフィリエイトの今後、やはり「堅調」

主要ASP企業の業績は、ずばり「堅調」です。ASP部門に限定した来季の予測値はわかりませんが、各企業とも連結に占めるASP部門の割合が高いことから、連結全体の予測傾向がASP部門の予測と大きくずれることはないと考えることができます。主要4社の来期の連結売上高予測は6%~14%増であり、この数字を見てもやはり「堅調」です。

アフィリエイト市場の成長を今まで支えてきた要因として3点を解説しましたが、「ネット通販市場の拡大」「生活者のコミュニケーション手段のネット移行は継続」について当面は向かい風となる要因の出現は考えにくいのが現状です。

もう1つの下支え要因「広告で直接的に訴えかけるのではなく、ユーザーの体験談や第三者の評価を通じてコンバージョンが取れる」というアフィリエイト広告の最大の特徴については、これを凌駕するような新しい手法が開発され普及していくならばわかりませんが、今のところそうした技術はまだ顕在化していないと考えられます。

これらを総合すると、アフィリエイト市場の今後の予測は、やはり「堅調」なのです。


根っこがしっかりしていると長続きする

アフィリエイト広告は、自社の事業を売り込みたい「広告主」、自らの才覚で勝負を挑む「アフィリエイター」、商品サービスを選ぶために背中を押してほしい「生活者」、この三者が絶妙のバランスで並立して成り立っていると言えます。

「TVに出てた」「新聞にのってた」「雑誌で見た」という既存のアナログメディアによるプッシュだけが、生活者の背中を押すのに有効だったのは遠い過去です。

どこにでもいるようなフツーの一生活者が、いつしか「有名ブロガー」「凄腕アフィリエイター」と呼ばれ、タレントや記者といったプロを凌駕する影響力を持つ時代です。新製品発表会や内覧会にその分野の著名ブロガーを招待するのは、今や企業にとっては常識です。

日進月歩新しい技術や手段が開発されるインターネット。そんな慌ただしい中でもアフィリエイトは絶妙のバランスで関係者に支えられています。インターネットの仕組みの中では数少ない「勝ち組」「生き残り組」として、しっかりと根付いたものと言えましょう。基本的でわかりやすいプラットフォームとして長続きする気がしてなりません。

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