薬事法改正2014。名称変更の理由と新しい法律の変更点・ポイント

今回は、2014年(平成26年)11月に施行された大きな薬事法改正の説明です。この改正によって薬事法は名称まで変化しており、これまで薬事法を扱うことが多かった企業や業者だけでなく、一般国民にとっても大きな変化となりました。
特に今回は、2014年6月12日に施行された改正の「医薬品のインターネット販売」といった国民生活に直結するような改正ではなく、医療機器や再生医療といったこれからの社会において必須といわれる医療面技術に重点を置いた改正になっています。

これまで医薬品を中心に扱ってきた中で、「医療機器」の章を追加し、近い将来に向けた再生医療技術の発展促進のための弾力的な制度構築が行われるようになりました。これだけみると、医療現場を離れた一般国民にはあまり縁のなさそうな話とも思えます。しかし、今回の改正内容を知ることは、これからもし自分が治療を受けることとなった場合、その治療に際して使われる医療機器等の安全性の変化を知ることができるため、有意義な点は多いです。
医療をする側、される側双方の点からみても大きな変化となった今回の改正を詳しく確認していきましょう。

目次

新しい法律の名称(略称)と施行日

これまで半世紀以上使われていた「薬事法」という名称は、度重なる改正の中でもその名称を変えることはありませんでした。しかし、今回の改正によって名称は大きく変化し、厚生労働省は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下、「薬機法」)という長い名称へと変化させました。各業界では略称について割れる点がありますが、ここでは「薬機法」という略称で以後説明いたします。

そして、この薬機法は厚生労働省により2014年11月25日により施行されているため、現在もうすでに適用されている法律ということになります。

薬事法が改正になった理由・概要

改正理由と概要を3つのポイントにそして説明します。

ポイント①:医薬品・医療機器などの安全対策強化

近年の医療技術の進歩により、併せて多種多様の医療機器が発明・運用されるようになってきました。この医療機器の発展のスピードは著しく、行政としてこの医療機器の発展・実用化のスピードを維持促進しながら、それに伴う安全性についての対策を徹底するための規制準備が必要となりました。

ポイント②:医療機器の特性をふまえた規制への対応

加えて、これまで医薬品、医療機器の製造販売業者に課せられていた添付文書では、最新の知見の動向が不明確で、業者が認識している利用上の注意と現場での注意認識にズレが生じる危険性がありました。現に、薬害肝炎等医療機器をめぐる安全配慮の問題を受け、今回そういった面を見直し、今後さらに増える医療機器等利用についての知見について一定のフォーマットを設ける必要性が唱えられるようになりました。

ポイント③:再生医療に対する規制への対応

また、ノーベル賞で話題となったiPS細胞を利用した再生医療は今後の日本における医療現場において革新的な技術変化を与える可能性が高いですが、現状の制度では、安全性配慮と実治験のために長い時間を費やす必要があり、技術の実用化には途方もない時間を必要としてしまいます。そのため、迅速的な実用化に向けた制度の充実が必要とされるようになりました。

このように、今回の薬事法改正の背景には、大きく変化する医療技術についてより高度な安全性を求めると同時に、柔軟に実用化できるような仕組みを設ける必要が高いと考えられたことにあると思われます。

過去の契約書内容は変更手続きすべきか?

原則的には、契約書の変更は必要ないと考えられます。今回の改正は周知の事実と思われるほどの大きな改正ですので、従来通りのままで運用できるでしょう。
もっとも、参照条文については条文番号、条文内容について変化しているところがありますので、条文番号については新しいものを、条文内容については新しいものに読み替え等を行って修正する必要があります。
いずれにせよ、変更手続きを要するほどの大きな変化とは考えられないと思われます。

薬事法と薬機法の違い

薬事法と薬機法の違いには、いくつかのトピックがあります。
順に見ていきましょう。
Concept of important choices of a businessman

医療機器について

薬機法の下では、医薬品と同様に扱われてきた「医療機器」について、医薬品とは別個の存在であると認めて異なる扱いをするための措置を設け、新たに別個の章を法律の中に追加することとなりました。この、医療機器の医薬品からの離脱が、今回の薬事法改正に伴う名称変更の大きな理由と言えるでしょう。

具体的には、上記も軽く説明したような添付文書の充実化が図られています。そもそも添付文書とは、製造販売行業者が作成する、医療品を実際に使用する際に必要な注意事項を記載した文書のことになりますが、これまでは行政側に届出がなされるものではありませんでした。

しかし、今回の改正によって、製造販売業者は販売開始前に予め行政への届出が義務づけられるようになり、これを受けた行政は逐次それをウェブサイトにアップする仕組みがとられています。これにより医療品、医療機器を現場で利用する使用者は最新の利用にあたっての知見を手軽に確認することができるようになり、使用方法の誤解等が予防される結果、これまで以上に安全性が増すものと思われます。

再生医療について

また、将来性が見込まれる再生医療技術の早期的な実用化に向けて薬事法の下の規定から大きく変化するようになりました。
これまでは、新しい医薬品等を実用化するには、臨床実験を行い、その後長期の治験を重ね、それが認められて初めて承認されるという方式をとっていました。しかしそれでは必要とする人が多いにも関わらず、なかなか市場に出すことができないということになりかねません。

そこで、今回の改正では、治験で有効性と安全性がある程度確認できれば、条件期限付きで承認を行い、早期の段階で市販開始できるようになされました。これにより、市販を行いながら有効性や安全性の追求といったことが行うことができ、これまで以上に柔軟で迅速的な対応ができるようになっています。

薬機法の内容とポイント

薬機法の内容の第一は医療機器についての充実をはかることにあります。上記で説明した添付文書の位置づけに関する取り決めはもちろん、それ以外にも医療機器の専門性高度性、リスクの程度からクラス分けを行い、これらについての認証について柔軟なものとするようになりました。これにより、いままで高度管理医療機器とされてきた部類の医療機器についても、その一部については(透析器や人工呼吸器等)大臣承認という方法ではなく、予め厚生労働大臣による登録を受けた民間の第三者認証機関による認証で足りるようになりました。これは新しい医療機器をいち早く現場に提供できるようにすると同時に、その安全性についての認証を同時に行えるようにする趣旨のものと解されています。

また、再生医療等の新しい医療技術についてもその危険性に配慮しながらいち早く医療現場で実施できる環境作りが求められるため、かかる技術を利用して行われる手術もいくつかのクラスに分けられ、高リスクなものを含めるクラスにあたる手術では「特定認定再生医療等委員会」による審査を、それより下位のクラスにあたる手術では「特定認定再生医療等委員会」の意見をというふうに詳細な場合分けを行い、安全性と迅速性の両方を確保しています。

まとめ

今回の改正は、これまで硬直的だった薬事法の内容を大きく改正することにより、場合ごとの対処方法を明確にすることで、安全性と迅速性を同時に高めるねらいのものと考えられます。
医療現場の技術は、IT技術と同じくらい目まぐるしい変化がなされてきたものでしたが、これまではあまりそれが深く認識されることはありませんでした。そのため、技術の実用化にタイムラグが生じる結果、医療の現場に弊害をもたらすこともあったものと考えられます。
それを一新するために、これまで注目されなかった「医療機器」について新たに章を設け、医薬品等とは別個の取扱いができるようになりました。
他方、それに合わせて将来的な医療技術が研究実用化しやすいような土台作りも今回の改正で同時に行われ、医療の技術の進歩に役立っていると考えられます。
こういった面からも、安全性と迅速性の2つの実現が今回の改正で大きく注目されたポイントといえるでしょう。

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