みなさんは普段ノンアルコールビールを飲んでいますか?
まったくアルコールが含まれていないノンアルコールビールは2009年に発売され始めましたが、飲酒運転の取締や罰則が強化したこともあり、あっという間に市場が拡大しました。
今では、ハンドルキーパーのみならず、妊婦や授乳期の女性、ブームになりつつある昼宴会など、たくさんの人にたくさんの場面で利用されるようになりました。
この「ノンアルコールビール」ですが、新しい制度である「機能性表示食品」として認められた商品も最近発売されました。
飲酒運転の罰則強化や、健康志向の高まり、若年世代の人口減少などによりアルコール飲料の販売数が減少しているなか、酒税がかからないことから利幅が大きなノンアルコールビールは、企業にとってもまさに救世主なのです。
機能性表示食品として発売されたノンアルコールビールについて詳しく見ていきましょう。
機能性表示食品のノンアルコールビールとは?
機能性表示食品とは、事業者の責任で、科学的根拠を基に商品パッケージに特定の保健の 目的が期待できる(健康の維持及び増進に役立つ)という食品の機能性を表示するものとして、消費者庁に届け出られた食品です。
機能性を表示することができる食品としてみなさんがよく見かけるものに、特定保健用食品(トクホ)というものがあります。トクホの食品は、国が個別に許可して、機能性が表示されています。
しかし、2015年4月に、機能性を分かりやすく表示した品の選択肢を増やし、消費者が商品の正しい情報を得て選択できることを目指してはじまったのが、機能性表示食品の制度です。
国が個別に許可したものではなく、事業者がその責任で食品の機能性を表示している点がトクホとの違いです。
機能性表示食品のノンアルコールビールは、2015年6月に飲料では初めての機能性表示食品として、キリンビール、アサヒビールが相次いで発売しました。ノンアルコールビールの需要が高まる夏に向けて、健康を意識した新商品が市場に登場したのです。
キリンとアサヒのノンアルコールビール広告でどんな効果表現を使われているのかにも注目して見てください。
キリンの「パーフェクトフリー」詳細
CM動画も見てみましょう。
発売日
2015年6月16日
表示成分
<原材料名>
難消化性デキストリン(食物繊維)、大豆たんぱく、ぶどう糖果糖液糖、ホップ、米発酵エキス/炭酸、香料、酸味料、カラメル色素、甘味料(アセスルファムK)
<アレルギー特定原材料>
大豆
<栄養成分>
表示単位 350ml当たり
アルコール分0.00%
エネルギー0kcal
たんぱく質0~0.7g
脂質0g
炭水化物5.6g
糖質0g
食物繊維5.6g
食塩相当量0~0.1g
栄養成分その他
機能性関与成分 難消化性デキストリン(食物繊維として)5g
味
クセは少なく飲みやすい。
泡が滑らか。
苦味がやや強い。
ビールに近い味わい。
効果
この商品の機能として届出された表示は、「本品には難消化性デキストリン(食物繊維)が含まれます。
難消化性デキストリンは、食事から摂取した脂肪の吸収を抑えて排出を増加させるとともに、糖の吸収をおだやかにするため、食後の血中中性脂肪や血糖値の上昇をおだやかにすることが報告されています。
本品は、脂肪の多い食事を摂りがちな方や食後の血糖値が気になる方に適しています。」です。商品に含まれている食物繊維の働きにより、食後の血中中性脂肪や血糖値の上昇を緩やかにするという効果があるのですね。
このような効果があることや、安全性についても資料として届出の際に消費者庁に提出されています。
もっとも、多量に摂取することにより、疾病が治癒するものではありません。また、飲みすぎ、あるいは体質・体調により、おなかがゆるくなることがある旨もパッケージに記載されていますので注意が必要です。
アサヒの「スタイルバランス」詳細
CM動画です。
発売日
2015年6月23日
表示成分
<原材料名>
難消化性デキストリン(食物繊維)、大豆ペプチド、ホップ/炭酸、香料、安定剤(大豆多糖類)、酸味料、カラメル色素、酸化防止剤(ビタミンC)、甘味料(アセスルファムK)
<栄養成分表示>
1本 350ml当たり
エネルギー0kcal
たんぱく質0g
脂質0g
炭水化物5.6g
糖質0g
糖類0g
食物繊維5.6g
食塩相当量0.01~0.10g
機能性関与成分:難消化性デキストリン(食物繊維として)5g
プリン体0~5.0mg
味
甘い風味が鼻に抜ける
女性でも飲みやすい
すっきりとしてさわやかな味わい
食事に合う
効果
この商品の許可表示は、「本品には難消化性デキストリン(食物繊維)が含まれるので、食事の脂肪の吸収を抑える機能があります。また、難消化性デキストリン(食物繊維)には食事の糖分の吸収を抑える機能があることが報告されています。」となっています。
食物繊維の働きで、食後の脂肪や糖分の吸収を抑えることは、キリンのパーフェクトフリーと同じです。難消化性デキストリンを使用した食品は、ノンアルコールビールに限らず、特に食事と一緒に飲む飲料に増えてきています。
※同じ効果をもつノンアルコールビールとしてトクホを使ったビールも発売されています。トクホビールとして発売中の「サッポロプラス」などについて詳しく知りたい方はこちらのページを見てください。
これから拡大?!機能性表示食品の市場規模
先ほども述べたように、日本の機能性表示食品については、企業は販売の60日前までに製品情報を消費者庁に届けることで、販売することができます。そしてこの際に提出する安全性や機能性に関する資料については、企業自ら臨床試験をする必要はなく、機能性の成分に関する研究文献を提出するだけでもかまいません。
安全性や機能性を研究、検証するために多くの時間や予算を費やさなくてもよいことから、企業の負担はトクホの場合より少なく、多くの企業が機能性表示食品市場に参入しています。
機能性表示食品は、1994年に制定されたアメリカのダイエタリーサプリメント健康教育法(Dietary Supplement Health and Education Act=DSHEA)がモデルとなっています。
この制度も、食品や正しいサプリメントの摂取による国民の健康状態の改善、健康食品の安全性、機能性、品質性についての基準の作出、消費者への健康食品の正しい知識の伝達を目的として定められ、届出をもって表示が可能となる点は機能性表示食品と同様です。
アメリカではこの制度の導入により対象となる商品の市場規模は20年ほどで4~5倍にもなりました。日本の機能性表示食品の制度は導入されて間もないですが、アメリカのように市場が急速に拡大することも予想されます。制度がはじまって間もなく、市場が拡大しているノンアルコールビールに機能性表示食品の商品が登場したことはまさに、機能性表示食品をめぐる市場競争の激化を予想させるものといえるでしょう。
もっとも、消費者庁への届出というトクホより緩やかな基準で表示が許される以上、安全性の確保や広告のあり方など、新たな克服すべき課題があることを忘れてはなりません。
まとめ
時代の流れを受けてその市場が拡大し続け、今まさに各社が力を入れているノンアルコールビール市場に、健康を意識した新商品が次々と参入しています。
そして、企業にとって機能がこれまでより緩やかな基準で表示できるようになったことにより、どのように健康によいのかをパッケージに分かりやすく記載された商品が増えることになるでしょう。
今回発売された新商品はどれも、すでにビールメーカーとして一流である企業が開発したもので、その味も十分に満足できるものといえます。
しかし、私たち消費者は味の好みに加えて自分の体調や、健康状態をふまえたうえでノンアルコールビールを選べるようになったのです。この夏はパッケージをじっくり読んで、健康に気を配りながらノンアルコールビールの進化した味わいを楽しめますね。
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