ペットフードやペット用サプリメントなど、ペット用品を販売する場合はどんな法律が関わるのでしょうか。
薬機法との関係やその他にも注意すべき法律について解説します。
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薬機法(旧薬事法)とは?
薬機法は、正式名称を「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」と言います。
薬機法の対象は、医薬品や医療機器等ですが、動物用医薬品等(第83条〜)も含まれます。
ペットフード・ペット用品と薬機法
ペットフードやペット用品、ペット用サプリメントは薬機法の対象ではありませんが、動物用医薬品等と判断された場合は、薬機法の規制が及びます。
そのため、ペットフードなどの販売や広告を行うときには注意が必要です。
動物用医薬品等の範囲
どんな場合に動物用医薬品等と判断されるのかについてですが、農林水産省の資料で次のように書かれています。
専ら動物に経口的に給与する物及び専ら動物の被毛、皮膚、爪、口腔等に外用的に使用する物が、
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和 35 年法律第145 号)第2条第1項第2号若しくは第3号に規定する医薬品又は同条第2項に規定する医薬部外品であって専ら動物のために使用されることが目的とされるものであるか否かについては、
その物の成分、形状及びその物に表示された使用目的・効能効果・用法用量、販売方法、その際の演述・宣伝などを総合して、その物が通常人の理解において同条第1項第2号若しくは第3号又は同条第2項に掲げる目的を有していると認められる物かどうかによって判断すべきものである。
引用元:動物用医薬品等の範囲に関する基準について
上記のとおり、判断基準は以下の4つです。
①物の成分が医薬品的成分に当たるか否か
②その物の形状が医薬品的な形状に当たるか否か
③その物の表示が医薬品的な効能効果を標ぼうしているか否か
④その物の表示された用法用量が医薬品的な用法用量に当たるか否か
成分、形状、効能効果、用法用量について医薬品的なものに該当しないようにしなければいけません。
医薬品的な表示になるNG広告表現6個
医薬品的な表現と判断される場合について解説します。医薬品的な表示と判断される場合についても農林水産省から資料が出ています。
NG広告表現は次の6個です。
1. 動物の疾病の治療に使用されることが目的と判断される表示
<具体例>
・◯◯病の治療に。◯◯病の改善に。◯◯病に。
・症状に応じて、使用してください。
・関節疾患に苦しむ動物のために◯◯
2. 動物の疾病の予防に使用されることが目的と判断される表示
<具体例>
・◯◯病の予防。◯◯病対策に。
・病気・老化予防に
・歯周病疾患を軽減防止する◯◯
・成分◯◯は、ガンの予防を助けます。
3. 動物の身体の構造に影響を及ぼすことが目的と判断される表示
<具体例>
・◯◯◯の成分は、関節を保護強化するために最も効果を発揮します。
・その著しい効果は、動物の関節強化、保護に十分に発揮されます。
4. 動物の身体の機能に影響を及ぼすことが目的と判断される表示
<具体例>
・歯・歯周の消臭に効果のあるサプリメントです。
・感染に関連するものや免疫力の促進に使用します。
・血液をさらさらにし、視力を向上させます。
・動物の胃腸の調子を改善します。
・免疫強化・抗アレルギー。
・余分な脂肪分を体外に排出させます。
5. 医薬品であることを暗示させる表示
<具体例>
・◯◯の漢方薬剤をベースに開発されました。
・東洋医学で認められた健康生薬が配合されています。
・動物医療用
6. メディア記事等を用いて医薬品であることを暗示させる表示
新聞、雑誌等の記事、獣医師、学者等の談話、学説、経験談等を引用または掲載することにより医薬品であることを暗示させる表示は、NGです。
<具体例>
・飼育者の経験談「◯◯を与えたところ、体調も良くなり今も元気です 」
医薬品的な表示と判断されるその他の注意点8個
医薬品的な効能効果を判断した具体例について、農林水産省の資料に書いてありますので、その具体例を紹介します。
1. 栄養補給の表現
被毛、目、皮膚等の特定部位への栄養補給ができる旨を標ぼうし、当該部位の改善、増強等ができる旨を暗示する表現は、NGです。
ただし、特定部位への栄養補給を標ぼうするだけでは、医薬品的な効能効果とは判断されません。
<NG表現の具体例>
・健康な皮膚と輝く毛並みを約束します。
・◯◯(成分名)を多く含み、皮膚・毛並みを健康にしてくれます。
・ビタミン○○は、生殖腺の機能維持を助けます。
2. 食事療法等に関する表現
特定の疾病等に対していわゆる「食事療法」として使用されることを意図して作られたものについては、栄養成分の量や比率などがどのように調節されているのかを具体的に明示した上で、疾病名や動物の身体の構造または機能について表示することは、直ちに医薬品的な効能効果とは判断されません。
ただし、当該製品が一般にペットの餌として認識されるものであることが明確な場合に限られます。
ペット用サプリメントと呼ばれるもののように、通常の餌に添加して使用するものや錠剤のような形態のもの等、その製品自体が餌として認識されがたい形態、使用方法のものについては、認められません。
<直ちに医薬品的な効能効果とは判断されない具体例>
・食事療法が必要な◯◯◯(疾病名)の動物に給与することを目的として◯◯(成分名)の含有量を調整した犬用のフードです。
<NG表現の具体例>
・リン含有量を制限することで◯◯疾患の進行の遅延をサポートします。
・マグネシウム含有量を制限することにより◯◯結石症の症状を軽減します。
3. 糞や尿の臭いに関する表現
口臭または体臭の防止や、殺菌作用を持つ成分を含有するもので消臭効果をうたった場合、医薬品的な効能効果と判断されます。
糞臭の防止については、着香や臭いの吸着等の餌や腸内容物への作用によるものであって、含有されている成分の整腸作用等の薬理作用によるものではない場合には、医薬品的な効能効果とは判断されません。
※尿についても同様
<直ちに医薬品的な効能効果とは判断されない具体例>
・配合されている◯◯(成分名)が糞の臭いを軽減します。
・◯◯(成分名)が、腸管内の水分や腸内容物の臭いを吸着することにより尿臭が軽減されます。
<NG表現の具体例>
・このペットフードを食べれば体臭が和らぎます。
4. 免疫等の表現
全体的な健康維持の範囲内で本来備わっている「免疫抵抗力」または「体力を維持する」、範囲の表現については、直ちに医薬品的な効能効果とは判断されません。
<NG表現の具体例>
・抵抗力をつける。
・免疫力を高める。
5. 毛玉に関する表現
「毛玉の除去」については、医薬部外品として承認されている製品があるため、医薬品的な効能効果に該当すると判断されます。
ただし、食物繊維が豊富に含まれることにより、物理的に毛玉の形成を抑えたり除去することについて明示している場合には、直ちに医薬品的な効能効果とは判断されません。
<直ちに医薬品的な効能効果とは判断されない具体例>
・本製品は食物繊維が豊富なため、毛玉の形成を抑えます。
<NG表現の具体例>
・お腹にたまった毛玉を便と一緒に排出します。
6. 歯垢・歯石に関する表現
製品の物理的特性として、①口腔内で消化されやすい旨や、②噛むことが促されることを明記した上で、歯垢もしくは歯石の沈着を抑える、または歯垢が付きにくくなるということを表現することは可能です。
<直ちに医薬品的な効能効果とは判断されない具体例>
・製品の独特な形状により歯垢・歯石を抑えてくれます。
<NG表現の具体例>
・歯周病の予防のために独特な形状をしています。
7. アレルギーに関する表現
アレルゲンとなる物質を含まないことを明記した上で、「アレルギーに配慮」「アレルギーに悩む動物のために」のような表現を行うことは直ちに医薬品的な表現とは判断されません。
<直ちに医薬品的な効能効果とは判断されない具体例>
・牛肉アレルギーに悩む愛犬に配慮して、◯◯(商品名)は、牛肉を使用しておりません。
<NG表現の具体例>
・◯◯を食べれば、アレルギー反応を抑えることができます。
8. サポートという表現
疾病名や身体の機能を直接的にサポートするという表現は、動物の身体又は機能の改善又は増強を暗示していると解釈されるため、医薬品的な効能効果と判断されます。
<直ちに医薬品的な効能効果とは判断されない具体例>
・関節の健康をサポート
・健康な皮膚をサポート
<NG表現の具体例>
・心臓病をサポート
・下痢をサポート
ペットフードを規制する法律
ペットフードを規制する法律としては、ペットフード安全法(愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律)があります。
また、ペットフードは食品ではないため、管轄は厚生労働省ではなく、農林水産省になります。
ペットフード安全法の目的は以下のとおりです。
愛がん動物用飼料の安全性の確保を図り、もって愛がん動物の健康を保護し、動物の愛護に寄与すること
例えば、ペットフードの表示基準として以下5項目の表示義務があります。
(1)販売用ペットフードの名称(犬用又は猫用)
(2)原材料名(原則的に添加物を含む全ての原材料を表示)
(3)賞味期限
(4)事業者の氏名又は名称及び住所
(5)原産国名(最終加工工程を完了した国)
ペット用シャンプーと薬機法
人間だとシャンプーは薬機法上の「化粧品」になりますが、ペット用シャンプーは「雑貨」となります。
また、ペット用シャンプーで、医薬品的な表現を使う場合には薬機法の規制が及びます。
医薬部外品のペット用シャンプーであれば、ノミを防ぐなどの薬理効果をうたうことができます。
ペット用シャンプーの薬事にかんする表現は、一般社団法人日本ペット用品工業会の「ペット用シャンプー等の薬事に関する適切な表記のガイドライン」で詳しく解説されています。
ペットフードのOEM
ペット関連の市場規模は増加傾向です。
ペットフードのOEMをしたい人は、こちらのOEM会社一覧を参考にしてください。
ペットフードの薬機法違反事例
免疫機能正常化のペットフード販売で逮捕
2023年9月27日、「免疫機能を正常化」などの広告でペットフードを販売していた福岡市の会社役員男性が逮捕されました。
薬機法違反(承認前の広告の禁止等)の疑いです。
がんに効くペットサプリ販売で逮捕
犬や猫向けのサプリメント販売会社グッドライフデザインの社長が2019年10月29日に逮捕されました。
動物向けのサプリメントを「犬や猫のがんに効く」「がんの予防に効果」などと医薬品的効果効能の表現を使って宣伝していたためです。
動物向けであっても、動物用サプリメントを動物用医薬品のように宣伝することは認められていません。
まとめ
ペットフードは人間の食品とは異なるルールがあります。ペットフードを販売する時は、パッケージの表示や広告表現に注意して販売してください。
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