SNSが普及し、日常的に様々な人が発信するようになりました。よく使われるSNSにはInstagram、X(旧Twitter)、Youtube、TikTokなどの複数のプラットフォームがあります。
そのような中で、広告であるにもかかわらず、「PR」や「広告」といった表示をせずに、広告を意図した投稿も頻繁に行われるようになりました。
中には嘘の内容が書かれていることもあり、問題視されることが増え、SNSの各プラットフォームによる対策だけでなく、法規制も行われる結果となっています。
具体的なルールや規制について説明します。
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PR表記ルールやガイドライン
PR案件の場合には「PR」や「広告」など、事業者の表示であることをわかりやすく行うことが必要です。
令和5年10月1日から「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」(いわゆる「ステマ規制」)が施行されることが決まっているため、表示をしていないと違法になります。
違反した場合、事業者は消費者庁から措置命令を受け、公表されるおそれがあります。
案件の投稿を行ったインフルエンサーはステマ規制の対象ではありませんが、明るみになるとフォロワーから信用を失うでしょう。
PR表記の具体例
PR表記としては、ハッシュタグで「#PR」「#広告」と表示したり、「これは広告です」と明言したりする方法が考えられます。
※各SNSのルールや表示例はこの記事の後半で紹介しています。
注意点としては、表記するだけではなく、全体で事業者の表示であることが明瞭であることが求められます。
一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっていると認められるためには、一般消費者にとって、表示内容全体から、事業者の表示であることが分かりやすい表示となっている必要がある。例えば、以下の場合が考えられる。
ア 「広告」、「宣伝」、「プロモーション」、「PR」といった文言による表示を行う場合。
(注) ただし、これらの文言を使用していたとしても、表示内容全体から一般消費者にとって事業者の表示であることが明瞭となっていると認められない場合もある。イ 「A社から商品の提供を受けて投稿している」といったような文章による表示を行う場合。
参照:資料
小さく表示する、短時間だけ表示する、大量のハッシュタグに埋もれさせる、ような形にして不明瞭になっている場合は、ステマ規制に違反するおそれがあります。
PR表記は義務?表記なしはステマ扱い?
PR表記は義務とも言えますが、必要ではない場合もあります。
例えば、次のような場合です。
事業者の表示であることが一般消費者にとって明瞭である又は社会通念上明らかであるものは、告示の対象となるものではない。例えば、以下のような場合が考えられる。
ア 放送におけるCMのように広告と番組が切り離されている表示を行う場合。
イ 事業者の協力を得て制作される番組放送や映画等において当該事業者の名称等をエンドロール等を通じて表示を行う場合。
ウ 新聞紙の広告欄のように「広告」等と記載されている表示を行う場合。
エ 商品又は役務の紹介自体が目的である雑誌その他の出版物における表示を行う場合。
オ 事業者自身のウェブサイト(例えば、特定の商品又は役務を特集するなど、期間限定で一般消費者に表示されるウェブサイトも含む。)における表示を行う場合。
カ 事業者自身のSNSのアカウントを通じた表示を行う場合。
キ 社会的な立場・職業等(例えば、観光大使等)から、一般消費者にとって事業者の依頼を受けて当該事業者の表示を行うことが社会通念上明らかな者を通じて、当該事業者が表示を行う場合。
参照:資料
上記にもあるとおり、形式から広告であることが社会通念上明らかであるものや、事業者が自分のWebサイトやSNSアカウントで宣伝するような場合は、PR表記なしでもステマ扱いとはなりません。
ステルスマーケティングの判断基準
ステルスマーケティングの判断基準としては、以下を参考にしてください。
ステマになる | ステマではない | |
事業者の表示 | 「広告」「PR」など事業者の表示であることを書いていない、または不明瞭 | 広告であることが明瞭または社会通念上明らか |
事業者の関与 | 事業者が第三者の表示内容の決定に関与している | 第三者が自主的に表示している |
金銭の支払いが絡んでいない場合でも、例えば、イベントへの無料招待、商品の無料プレゼントを行い、「こういうハッシュタグをつけて投稿して」と事業者がお願いしているような場合は、ステマになります。
ステルスマーケティングに違反した場合のリスク
ステルスマーケティングは、景品表示法第5条第3号に基づく指定告示として規制され、違反した場合は、景品表示法第7条にある「措置命令」が行われます。
措置命令を受けると公表され、再発防止を求められます。
措置命令が公表されると各メディアからニュースが出て、多くの人に知れ渡る可能性があります。そしてブランドや会社の信頼を失い、長期的に影響が出るおそれがあります。
他にも次のようなリスクがあります。措置命令を受けた企業で実際に見られた事例です。
・会社名で検索したときに違反したニュースが1年以上、上位に出る
・ブランド名の検索時にサジェストで「詐欺」と出るようになる
・何かある度にSNSでその事件を蒸し返される
など。
X(旧Twitter)のPR表記ルール
X(旧Twitter)の有料パートナーシップポリシーでは、次の記載があります。
有料パートナーシップの一環として作成され、オーガニックツイート(有料でない通常のツイート)として投稿されたツイートは、商用コンテンツであることを示唆する情報を、明確かつ分かりやすく開示する必要があります。たとえば「#広告」、「#有料パートナーシップ」、「#スポンサー」といったハッシュタグをコンテンツに含めます。
参照:X(旧Twitter)
<表示例>
埼玉県鴻巣駅近くにあるお店「New Normal Cafe」の、サックサクのパイ生地の中に甘く煮詰めたりんごのコンポートとカスタードをたっぷり入れ、バニラアイスを乗せた「自家製アップルパイ」✨#PR pic.twitter.com/KwTCBaVMvT
— 極上のスイーツ (@sweetroad5) April 3, 2023
リプライで「#pr」と表示する、別の投稿で表示するなどの場合は、不明瞭と判断されるおそれがあります。
Instagram(インスタグラム)のPR表記ルール
InstagramのPRは、タイアップ投稿という機能を用いて行う必要があります。
Instagramの規約では以下のように定められています。
ブランドコンテンツポリシーでは、ブランドコンテンツを投稿する際にタイアップ投稿ラベルを使用することが義務付けられています。FacebookおよびInstagramでは、ブランドコンテンツを、クリエイターやパブリッシャーが対価を受けて直接的、間接的にビジネスパートナーを取り上げたコンテンツであると定義しています。これには、無料で提供された製品やサービスを取り上げるコンテンツが含まれます。ブランドコンテンツ関連のよくある状況について、以下で説明します。
※以下の表も規約に書かれているものです。
シナリオ | タグ付けの必要性 | 理由 |
対価を受け取ってブランドやビジネスまたはその製品を取り上げたり、これらに言及したりするコンテンツを投稿する 例: ある会社の製品を使用している写真を投稿し、その会社から対価を受け取る。 ある会社の製品やブランド・ビジネスについて説明またはレビューするキャプションを含む写真を投稿する。 | あり | コンテンツを投稿したことに対してブランドやビジネスパートナーからの支払いを受けることは対価の引き換えに相当するため、ラベルが必要です。 |
ブランドやビジネスから提供されたギフトや無料の製品・サービスを取り上げたり、これらに言及したりするコンテンツを投稿する 例: ある会社から無料で製品の提供を受け、その製品を着用している写真を投稿する。 ある会社から無料で製品の貸し出しを受け、その製品を着用している写真を投稿する。 | あり | ブランドやビジネスパートナーから無料で提供または貸し出しを受けた製品やギフトを取り上げる投稿は対価の引き換えに相当するため、ラベルが必要です。 |
自社の製品を宣伝するコンテンツを投稿する 例: 自社の化粧品またはバッグの製品ラインに関するコンテンツを投稿する。 | なし | ブランドやビジネスパートナーが参加していないため、ブランドコンテンツとはみなされません。ただし、他のすべてのコンテンツと同様に、情報開示義務を含む法的義務を遵守する必要があります。 |
参照:Instagram
<表示例>
※Instagram上で投稿を見ると、「〜〜とのタイアップ投稿」という文字がアカウント名の下に出ていることがわかります。
YoutubeのPR表記ルール
YoutubeでPR案件を扱う場合は「有料プロモーションの設定」が必要です。
動画には、有料プロダクト プレースメント、有料おすすめ情報、スポンサーシップなど、視聴者への開示が必要なプロモーション コンテンツを配置できます。これらのいずれかの情報を動画に含める場合は、動画の詳細で「有料プロモーション」のチェックボックスをオンにして YouTube に申告する必要があります。
参照:Youtube
<表示例>
TikTokのPR表記ルール
TikTokでは、PRについて「ブランドコンテンツ」という名称で規約があります。
ブランドコンテンツ
TikTok上のブランドコンテンツとは、あなたの投稿と引き換えに、ブランドなどのサードパーティーから価値のあるものを受け取り(または既に受け取っている)、そのブランドの商品やサービスを宣伝するコンテンツ、または現地の法律や規則に従って公開する必要があるコンテンツと定義されます。 ブランドの宣伝、パートナーシップ、または商品やサービスのその他のプロモーションなどがあります。ブランドコンテンツの切り替え
ブランドコンテンツの設定をオンにすることで、あなたと企業の間で商業的関係が存在する場合に、明確なコミュニケーションが可能になります。TikTokにブランドコンテンツを投稿する場合は、ブランドコンテンツの切り替えを有効にする必要があります。 このトグルを有効にすると、あなたの動画の説明文に広告動画であることが開示されます(例:#Ad)。
参照:TikTok
<ブランドコンテンツの設定のやり方>
(1)投稿画面の「その他のオプション」をクリックします。
(2)下の画面の「ブランドコンテンツと広告」をクリックします。
(3)下の画面の「ブランドコンテンツ」の設定をオンにすると設定できます。
アフィリエイトのPR表記ルール
アフィリエイトについては、「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」で触れられています。
アフィリエイトプログラムを利用した広告であることが分かりやすい表示がいいでしょう。
アフィリエイトプログラムを利用した広告を行う事業者の表示であることの明示に関する望ましい表示を行うためには、一般消費者が、当該表示がアフィリエイトプログラムを利用した広告を行う事業者の表示であることを理解できる文言の使用や、当該文言を表示する位置、大きさ及び色等も含めた、アフィリエイトサイトにおける表示内容全体から、一般消費者がアフィリエイトプログラムを利用する事業者の表示であることを容易に理解できるようなものとなっているかについて留意することが望ましい。
参照:資料
<表示例>
引用元:資料
また、ほとんどの大手ASPでは、アフィリエイト広告を掲載する際に、「PR」「広告」などの表記を広告より上部で行うように、規約を変更しています。そのため、基本的にアフィリエイトでもPRなどの表記が必要です。
まとめ
PR表記ルールについて各SNSなども含めて紹介しました。ステルスマーケティングが問題視されることが増えてから、法規制が及ぶことになり、PR案件を扱うインフルエンサーやメディア関係者はよりいっそうの注意が必要になりました。
法律や各SNSのポリシーに違反しないように運用を行ってください。
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