有利誤認表示とは?期間限定等の違反事例紹介[景品表示法]

景品表示法は、商品・サービスの取引に関連する不当表示による顧客の誘引を禁止して、一般消費者の利益を保護しています。

具体的には、景品表示法において禁止されている不当表示は、①優良誤認表示②有利誤認表示③その他の不当表示の3類型になります。

今回は、このうち「有利誤認表示」について、その要件、具体例、優良誤認表示との違い、過去にあった有利誤認表示に対する処分事例などを解説します。

目次

景品表示法の有利誤認表示の意味とは?

有利誤認表示とは、商品・サービスの取引において、価格その他の取引条件に関する以下のいずれかに該当する表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるものをいいます。

①実際のものより取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示

②同種または類似の商品・サービスを供給している競業事業者に係るものより取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示

簡単にいえば、有利誤認表示とは、事実に反して「安い」「お得だ」と思わせて、消費者を不当に取引へ誘い込む表示のことです。

なお、意図的ではなく、不注意により有利誤認表示をしてしまった場合でも、景品表示法の規制対象になるので注意しましょう。

有利誤認表示と優良誤認表示との違い

景品表示法では、有利誤認表示とは別に優良誤認表示を禁止しています。

有利誤認表示と優良誤認表示との大きな違いは表示の内容です。

有利誤認表示は商品・サービスの「取引条件(=価格など)」についての不当表示であるのに対して、優良誤認表示は商品・サービスの「内容(=品質・規格など)」についての不当表示になります。

たとえば、パソコンの販売に際して、パソコンの実際メモリは4GBであるのに「8GB」と表示することは、製品の性能(品質)に関する不当表示であるため優良誤認表示に当たります。

他方、そのパソコンの販売価格について、実際には過去に10万円での販売実績はないのに「通常10万円のところ半額5万円!」と表示(これを二重価格表示といいます。)することは、取引条件(価格)に関する不当表示であるため有利誤認表示に当たります。

有利誤認表示のパターン①|数量限定表示の具体例

ここからは、有利誤認表示としてよく見られる4つのパターンについて、具体例を示しながら解説します。

1つ目のパターンは「数量限定表示」です。数量限定表示とは「先着〇名様限定!」など、限られた人しか商品やサービスを購入できないことを示す表示をいいます。

数量限定表示は、事実に反して「今買わなければ損」という印象を与えるものである場合は有利誤認表示に当たる可能性が高いです。

たとえば、「先着50個に限り500円」との表示をしながら、実際には数量の限定はなく通常500円として販売しているような場合には、価格に関する有利誤認表示に当たります。

また、「100個限定A社オリジナル商品」と表示しながら、実際には当該オリジナル商品の販売数に限定のないような場合には、商品の希少性について誤認を生じさせる有利誤認表示に当たります。

有利誤認表示のパターン②|期間限定表示の具体例

2つ目のパターンは「期間限定表示」です。期間限定表示とは「安売りセール中。〇月〇日まで」や「絶賛値引きキャンペーン中。〇月〇日まで」など、提示された価格などの取引条件が期間限定であることを示す表示をいいます。

期間限定表示についても、数量限定表示と同様に、事実に反して「今買わなければ損」という印象を与えるものである場合は有利誤認表示に当たる可能性が高いと考えられます。

たとえば、「今ならキャンペーン期間中(〇月〇日まで)のため1500円」との表示をしながら、実際にはキャンペーン期間外でも1500円での販売を行っている場合には有利誤認表示になります。

有利誤認表示のパターン③|二重価格表示の具体例

3つ目のパターンは「二重価格表示」です。二重価格表示とは「通常価格2万円のところ半額の1万円」など、実際の販売価格とその比較対象となる価格を併記する表示です。

二重価格表示は、事実に即して適正に表示されていれば問題ありませんが、事実に反して「安い」「お得だ」といった印象を与えるものである場合は有利誤認表示に当たる可能性が高いと考えられます。

たとえば、実際には2万円での販売実績がないのに、「通常価格2万円のところ半額の1万円」などと割引をしたかのような二重価格表示をすることは有利誤認表示に当たります。

なお二重価格表示は、数量限定表示や期間限定表示と併用されることもあります。

たとえば、「通常1000円のところ先着20名様に限り500円での販売!」との表示は二重価格表示かつ数量限定表示、「通常1万円のところ、〇月〇日まではキャンペーン価格5000円!」との表示は二重価格表示かつ期間限定表示に当たります。

これらの表示も、事実に反して「安い」「お得だ」「今買わなければ損」などの印象を与える場合は有利誤認表示に当たると考えられます。

有利誤認表示のパターン④|ガチャに関する表示の具体例

4つ目のパターンとして、近年問題になりがちなオンラインゲームにおける「ガチャ」に関する不当表示を紹介します。

多くのオンラインゲームでは、ゲームを有利にするために使用できるアイテムやキャラクターについて、有償の抽選(くじ)により取得できるサービスを提供しています。これは一般に「ガチャ」と呼ばれているものです。

オンラインゲームのユーザーがガチャに課金するかどうかを判断する際には、当選するアイテムやキャラクターが魅力的であるかどうかに加えて、そのアイテムやキャラクターがどの程度の確率で当選するかも考慮するのが一般的です。

したがって、ガチャの当選確率を事実に反して高く表示したり、正確な確率が分かりにくいような表示をしたりすると、有利誤認表示に当たる可能性があります。

たとえば、実際には出現率0.05%のアイテムについて「出現率5%」と表示することは有利誤認表示に当たります。

また、実際にはキャンペーン期間後でも出現するキャラクターについて「〇〇(キャラクター名)が出現するのは〇月〇日までのキャンペーン中の期間限定。それ以降は一切出現しません。」などと表示すれば、有利誤認表示に当たります。事実に反して「今ガチャを回さなければ損」という印象を与え得るためです。

有利誤認表示が認められた場合に起こること

有利誤認表示の疑いがある事業者に対して、消費者庁は関連資料の提出を求めたり、事情聴取をしたりするなどの調査を実施することがあります。

調査の結果、有利誤認表示が行われたと認められた場合、消費者庁は違反事業者に対して、当該有利誤認表示の差し止めや再発防止策の実施などの措置を命じます(措置命令)。さらに、違反事業者は原則として課徴金の納付を命じられます

消費者庁による調査において誠実に協力しない(=報告・物件提出の拒否、虚偽報告・虚偽の物件提出、検査の拒否・妨害・忌避、質問に対する答弁の拒否・虚偽答弁)事業者は1年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せられます。

また、消費者庁による措置命令に違反した事業者は2年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せられます。

有利誤認表示の景品表示法違反・課徴金事例5つ

①専門学校の受講料の二重価格表示の事例

<平成30年3月28日発表>
株式会社日本クリエイトは自社のウェブサイトにおいて「通常受講料120,000円▼最大受講料半額以上もお得!59,500円~」などの二重価格表示をしていたところ、実際には通常受講料と称する価格サービスが提供された実績は、最近の相当期間にわたって認められませんでした。

上記の二重価格表示は有利誤認表示であるとして、同社は4936万円の課徴金の納付を命じられました。

②インターネット接続提供サービスの限定のキャンペーン価格の表示の事例

<平成30年3月23日発表>
株式会社エネルギア・コミュニケーションズは、自社ウェブサイトにおいて、提供するインターネット接続サービスの月額料金に関して「キャンペーン期間:2016年2月1日(月)~5月20日(金) 月々最大800円割引」と期間限定表示をしていたところ、実際には2016年2月1日から2017年9月30日までの期間において毎月最大800円の割引を実施していました。

上記の期間限定表示は有利誤認表示であるとして、同社は530万円の課徴金の納付を命じられました。

③健康飲料水の数量限定販売表示の事例

<平成30年10月31日発表>
株式会社シエルは販売する健康飲料水の定期購入に関して「毎月先着300名様限定」と数量限定表示をしていたところ、実際には毎月の新規定期購入者は300名を著しく超過していました。

同社は上記の数量限定表示および商品の内容に関する優良誤認表示を理由に、1億886万円の課徴金の納付を命じられました。

④下着類の販売価格に関する二重価格表示の事例

<平成30年10月5日発表>
株式会社ギミックパターンは、販売するストッキング等の下着類の価格につき自社のウェブサイトにおいて「5着セット+1着プレゼント+送料無料 通常価格99,000円→特別価格19,800円(税別)」などと二重価格表示をしていたところ、実際には通常価格と称される価格での販売実績はありませんでした。

同社は上記の有利誤認表示および商品の内容に関する優良誤認表示を理由に、総額8480万円の課徴金の納付を命じられました。

まとめ

有利誤認表示とは、商品・サービスの取引条件について実際のものまたは競合事業者のものよりも著しく有利であると誤認させて不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示をいいます。

有利誤認表示は取引条件に関する不当表示であり、商品・サービスの内容に関する不当表示である優良誤認表示とは異なります。しかし、両者ともに違反すれば措置命令・課徴金納付命令の対象になる点では共通しています。

有利誤認表示の典型例は、事実に反して数量限定・期間限定と称して消費者に購入を急がせる数量限定表示・期間限定表示や、過去の販売実績のない「通常価格」とそれより安い実際の販売価格を併記する二重価格表示などです。

過去には有利誤認表示を理由に、1億円を超える課徴金の納付を命じられた事例があります。不注意であっても、有利誤認表示をしたために甚大な損失を被るリスクがありますから、商品・サービスの取引条件に関する表示は慎重に行うようにしましょう。

広告表現などが有利誤認表示に当たるかどうか分からなくて困った場合には、弁護士に相談することをおすすめします。

<監修者>阿部 由羅(あべ ゆら)

ゆら総合法律事務所代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。企業法務・ベンチャー支援・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。

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