二重価格表示をわかりやすく解説!8週間ルール・違反事例4個

二重価格表示の法律解説!8週間ルール・違反事例

商品やサービスの広告で、「当店通常価格5,000円が3,000円」などの表示を見かけたことはないでしょうか。このように価格を2つ表記することで安さを訴求する表示を二重価格表示といい、一般消費者の購買意欲を促すのに非常に効果的です。

ただ、価格表示は、一般消費者が商品やサービスを選択するのに重要な情報なので、一定の法律規制があります。

この記事では、二重価格表示の法律規制について分かりやすく説明します。

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目次

二重価格表示とは?

二重価格表示とは、「当店通常価格5,000円が今なら3,000円」のように、販売価格とそれより高い価格を併記することで、販売価格が安いことを強調する表示方法です。

例えば、期間限定でセールを実施する際、チラシにセール価格と通常販売価格を併記して、安さをアピールするのに用いられます。

景品表示法上、二重価格表示は禁止されていませんが、価格表示ガイドラインでは、この二重価格表示の規制などについて詳しく定められています。

商品やサービスの販売価格等の取引条件について、実際よりも著しく有利であると一般消費者を誤認させる表示をすると、景品表示法に抵触します。

比較対照価格4種類

過去の販売価格

商品やサービスを値下げして販売する際、過去の販売価格を比較対照価格として併記することがあります。この際、過去の販売価格を正確に表記しないと、有利誤認表示と判断される可能性があります。

例えば、「通常販売価格10,000円を8,000円」と表示したにもかかわらず、実際には10,000円で販売された事実がなく、セール価格を安く見せるための架空の価格であった場合、有利誤認表示となります。

また、後述しますが、比較対照価格が「最近相当期間にわたり販売された価格でない」場合も有利誤認と判断される可能性があります。

過去の販売価格を比較対照とする場合は、正確かつ販売実績のある価格を表示する必要があるのです。

将来の販売価格

「お試し価格」や「発売特価」と称して販売価格を表示し、「来月以降●●円値上げします」、「●日以降は●●円」など、将来の販売価格を比較対照価格として併記することがあります。

この場合も、将来の販売価格を正確に表記しないと、有利誤認表示と判断される可能性があります。

有利誤認となる場合としては、将来の販売価格で販売する予定がない場合や、ごく短期間しか将来の販売価格で販売する予定がない場合が挙げられます。

例えば、「特別価格3,000円 ※セール期間以降5,000円」と表示したにもかかわらず、本当はセール期間後4,000円で販売する予定であったり、セール期間後ほんの数日間しか5,000円で販売する予定がない場合などは有利誤認表示と判断される可能性があります。

比較対照価格を正確に表示しないで、あたかも現在の販売価格がお得であるかのように認識させることは禁止されています。

希望小売価格

製造業者によってあらかじめ設定され、あらかじめカタログなどで公表された価格であるメーカー希望小売価格を比較対照価格として併記することがあります。

この場合も、比較対照価格が正確でないと有利誤認表示となります。

例えば、「メーカー希望小売価格10,000円から半額の5,000円」と表示したにもかかわらず、10,000円が架空の価格であった場合などが挙げられます。

競争事業者の販売価格

競合他社の販売価格を比較対照価格として併記することがあります。この場合、表示する競合他社の価格が最近のものでない場合や、遠方の競合店の価格を表示する場合、同一でない商品の価格を比較対照価格として表示する場合は有利誤認表示となります。

例えば、「●●製のテレビ A店の販売価格は10万円、B店の販売価格は8万円」と表示する場合、10万円がA店において直近の価格であることを事前に調査し、確認しておく必要があります。

また、広告主のB店は大阪にあるお店なのに、競合店のA店は北海道にある場合、通常一般消費者が価格を比較できず、合理的な選択ができません。競合他社の価格は、同一の商圏のお店での販売価格である必要があります。

また、A店のテレビは新品なのに、B店のテレビは少し傷のある展示品という場合は、同一商品とは言えず、不当表示とみなされる可能性があります。

二重価格表示の8週間ルールとは?

「8週間ルール」とは、セール期間時期から遡る8週間のうち、過半の期間、比較対照価格で販売されていた実績を必要とするルールです。

先述した、過去の販売価格を比較対照とする場合は、この「8週間ルール」を遵守する必要があります。

まとめると、比較対照価格が、「最近相当期間にわたり販売された価格」かどうかは、以下のルールに従って判断されます。

過去8週間のうち、4週間以上の販売実績があること。

②販売開始から8週間未満のときは、販売期間の過半かつ2週間以上の販売実績があること。(つまり、販売期間が2週間未満の場合はNGです)

③上記を満たす場合であっても、実際に販売した最後の日から2週間以上経過していないこと。

例えば、「通常販売価格10,000円をセール価格8,000円」と表示した場合、セール開始時期から8週間遡って、10,000円で販売した期間が3週間しかない場合は、8週間ルールに抵触します。

また、10,000円の販売実績が2週間未満の場合や、セール開始時期から遡って2週間以上経過している場合も「最近相当期間にわたり販売された価格」とは言えず、有利誤認表示とみなされます。

二重価格表示のセール期間で好評につき延長は?

セール期間の定めはありませんが、「好評につき延長」は基本的に認められないと考えてよいでしょう。

セール期間があまりに長い場合は、通常価格の実態に問題があると捉えられ、不当表示に該当するおそれがあります。

また将来の販売価格と比較する場合には、セールの延長は「将来の販売価格で販売できない特段の事情が存在するとは認められない事例」として例示されています。

二重価格表示の罰則とリスク

景品表示法に違反すると、「措置命令」「課徴金納付命令」が課される恐れがあります。

事業者の違反行為が疑われた場合、消費者庁は、関連資料の収集、事情聴取などの調査を実施します。調査の結果、違反行為が認められると、事業者に弁明の機会を与えた上で、違反したことを一般消費者に周知徹底すること、再発防止策を講ずること、当該違反行為を将来繰り返さないことなどの内容の「措置命令」が下されます。

さらに、有利誤認表示と判断された場合、措置命令とともに、「課徴金納付命令」が課されます。課徴金の額は、有利誤認表示に係る商品やサービスの売上額に3%を乗じた額であり、場合によっては高額となります。

例え事業者自身が違反行為であることを知らなかったとしても、厳しく罰せられるので十分に注意が必要です。

二重価格表示の違反事例4個

①Amazon

アマゾンジャパンが自社ウェブサイトで販売するクリアホルダーと、ブレーキフルードと、甘酒について、「参考価格」と称する価格を併記しました。

しかし、この「参考価格」は、実際の販売価格を上回るものであり、あたかも現在の販売価格が安くてお得かのように、一般消費者に認識させる表示であると判断されました。

消費者庁は、当該表示が有利誤認表示であり、景品表示法に違反するものであることを一般消費者に周知徹底すること、再発防止策を講じて、これを従業員に周知徹底すること、今後、同様の表示を行わない旨の命令を下しました。

②ジャパネットたかた

ジャパネットたかたは、自社が販売するエアコンやテレビについて、カタログ・折込チラシ・ダイレクトメール・ウェブサイトにて、「ジャパネット通常価格●●円」と表記した上で、「値引き後価格 会員様特価 ●●円」と表示し、あたかも通常販売されている価格よりもお得であるかのような表示を行いました。

しかし実際は、「ジャパネット通常価格」は、最近相当期間にわたって販売されたものではありませんでした。

消費者庁は、当該表示が有利誤認表示であり、景品表示法に違反するものであることを一般消費者に周知徹底すること、再発防止策を講じて、これを従業員に周知徹底すること、今後、同様の表示を行わない旨の命令を下しました。

③スーパーのチラシや店頭POP

冷凍食品の価格表示について、11都県合同で、スーパーマーケットとドラッグストアのチラシ広告や店頭POPなどの調査が行われました。

結果、「メーカー希望小売価格△△円の品、〇〇円!」、「メーカー希望小売価格から〇割引!」、「冷凍食品●割引」など、実際には存在しないメーカー希望小売価格を比較対照とした二重価格表示が多く見つかりました。

このような価格表示は、一般消費者に販売価格が安いとの誤認を与えるものであり、関係事業者に対しては、要望の事実を周知して、景品表示法違反のおそれがある表示を行うことのないように、指導徹底を図るよう指示されました。

④PC販売会社

2023年6月23日、PC販売会社が景品表示法違反で措置命令を受けました。

自社サイトで「ウェブ価格18万7880円、キャンペーン価格14万8425円」などと、キャンペーン価格が通常販売している価格に比べて安いかのように表示したものの、ウェブ価格で販売した実績が全くなかったため、有利誤認表示(二重価格表示)となりました。

まとめ

二重価格表示は、安さを強調するのに非常に効果的です。ただ、一定の規制に関する知識がないと、気付かないうちに法律に抵触する可能性があります。

また万が一摘発されると、措置命令や課徴金が生じるだけでなく、社会的信用を失うことになります。

値引きセールや期間限定セールなどを広告するにあたって、ルールを十分に理解し、少しでも不安がある場合は、詳しい専門家などに相談しましょう。

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