健康食品では誇大広告が後を絶ちません。誇大広告の内容によっては逮捕されてしまうこともあり、度々ニュースになっています。
健康食品の誇大広告について、かかわる法規制や取り締まりが行われた事例などを紹介します。
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健康食品の誇大広告とは?
誇大広告とは、実際の商品の内容よりも優れた効果があると思わせたり、有利な価格で購入できると思わせたりする広告のことです。
健康食品の誇大広告には、例えば、「これを飲めば高血圧が治る」「これを飲むだけで体重がスルスルと落ちる」などがあります。
健康食品の分類
健康食品には法律上の定義はなく、一般に健康に良いと言われる食品全般のことを指します。
また、健康食品の中には機能性の表示ができる保健機能食品として、「特定保健用食品」「栄養機能食品」「機能性表示食品」があります。
引用元:消費者庁
<3つの保健機能食品の違い>
特定保健用食品 | 栄養機能食品 | 機能性表示食品 | |
届出 | ◯ | ✗ | ◯ |
審査 | ◯ | ✗ | ✗ |
費用目安 | 数千万円〜 | 数万円〜 | 数百万円〜 |
期間目安 | 研究も含めると数年以上 | 早ければ数週間 | 半年以上 |
表現の幅 | 中 | 狭 | 広 |
健康食品がかかわる主な法規制
健康食品がかかわる主な法規制は「健康増進法」「景品表示法」「薬機法」の3つです。それぞれ誇大広告を取り締まっています。
健康増進法
健康増進法では、第65条第1項で誇大広告を禁止しています。
何人も、食品として販売に供する物に関して広告その他の表示をするときは、健康の保持増進の効果その他内閣府令で定める事項(次条第三項において「健康保持増進効果等」という。)について、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならない。
景品表示法
景品表示法では、第5条で優良誤認表示や有利誤認表示を禁止しています。
事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
三 前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの
薬機法
薬機法は、第66条で虚偽誇大広告を規制していますが、健康食品は第68条の承認前医薬品の広告の禁止がかかわります。
医薬品的な効能効果を広告で表現した場合には、第68条の規制が及びます。
何人も、第十四条第一項、第二十三条の二の五第一項若しくは第二十三条の二の二十三第一項に規定する医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であつて、まだ第十四条第一項、第十九条の二第一項、第二十三条の二の五第一項、第二十三条の二の十七第一項、第二十三条の二十五第一項若しくは第二十三条の三十七第一項の承認又は第二十三条の二の二十三第一項の認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。
健康食品の誇大広告事例まとめ
健康食品で誇大広告と判断された事例についてですが、東京都の資料で次のような表示や広告が不適切だったと紹介されています。(※東京都資料)
健康増進法事例
◯著しく事実に相違する又は人を誤認させるおそれのある表示
製品同封のチラシに「体内(特に腸内)に残っている不純物を排出しやすくします。また、アンチエイジングを促すハーブエキスを配合しており、体の中から細胞を活性化することが期待できます。」と当該製品を飲用することで、健康保持増進効果が期待できる表現をしていた。
景品表示法事例
◯優良誤認に該当するおそれのある表示
「飲むだけで日々の紫外線対策プラス美白」「オーガニック100% 安心・安全」等の表示内容を裏付ける合理的根拠がない場合や「95.9%がリピート」等と客観的な実証のない場合など、その商品が他社の商品よりも優れているかのように消費者の誤認を招くおそれのある表示をしていた。
薬機法事例
医薬品として承認を得たものではないにもかかわらず、以下のような医薬品的効能効果を標ぼうしていた。
◯疾病の治療又は予防を目的とする効能効果
「抗腫瘍作用(がんの予防)」「大腸炎」「便秘にお困りの方」「アレルギー花粉症」「アトピー性皮膚炎」「AGA 治療」「抗認知症」「抗炎症」「脳出血」「新型コロナウイルスによる肺炎の重症化を防ぐ」「水虫予防」
◯身体の組織機能の一般的増強・増進を主たる目的とする効能効果
「免疫強化」「肝機能の亢進」「血液サラサラ」「発毛促進」「育毛」「新陳代謝を高める」「若返り」「胃酸の分泌を抑える」「飲む日焼け止め」「筋肉量の増大や筋肉の分解抑制」「関節のクッションとなる細胞再生を促進」
健康食品の薬機法違反逮捕事例
薬機法関連では、逮捕されることも珍しくありません。
①ステラ漢方事件
2020年7月20日、健康食品通販会社の社員と広告代理店の社長ら、合計6人が逮捕されました。サプリメントの広告で「肝臓疾患の予防に効果がある」などと医薬品的効能効果を示していたためです。
②健康食品でガンが治る
2023年11月21日、「がん細胞が99%消えた」などの効能効果をうたい、健康食品を販売していた販売会社の取締役2名が逮捕されました。
ホームページで「がん細胞が99%消えた」「商品を飲んだらがんが治った」などの効果を表現していたためです。
③健康食品で認知症予防
2023年8月31日、「認知症予防になる」などの効果をうたって健康食品を販売していたとして福岡市の男女5人が逮捕されました。
電話勧誘で「認知症の治療や予防に効果がある」と伝え、販売していました。薬機法違反(無許可販売)及び特商法違反(不実の告知など)の疑いでの逮捕です。
誇大広告を行ったときの罰則やリスク
各法律ごとに罰則等は異なります。
健康増進法違反
上記で記載した第65条第1項に「何人も」とあるとおり、メーカーだけでなく広告代理店なども対象となります。
第65条第1項に違反する表示を行っていた場合、第66条第1項により、勧告を行うことができます。
さらに、勧告に対して措置が行われなかった場合には、第66条第2項により、勧告にかかわる措置をとるように命令することができます。
そして、それに従わなかった場合には、6月以下の懲役又は100万円以下の罰金となります。
景品表示法違反
景品表示法の規制対象は、事業者です。そのため、広告代理店などは対象外ですが、一体として考えられる場合や勝手に表示を行っていた場合などは規制対象になる可能性があります。
景品表示法違反で優良誤認表示や有利誤認表示を行っていた場合は、措置命令が行われます。
そして、その後、課徴金納付命令が行われるおそれもあります。課徴金の金額は対象商品の売上×3%(最大3年間)です。
10億円以上の課徴金事例も出てきていて、対象商品の売上が多い場合にはかなりの課徴金金額になります。
薬機法違反
薬機法も健康増進法と同様に条文に「何人も」と書かれてあり、メーカーだけでなく広告代理店なども規制対象です。
上記で紹介した逮捕事例でも、広告代理店の人が実際に逮捕されています。
罰則は、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、または併科となります。
逮捕になると、ニュースにもなることが多く、多くの方に知れ渡る可能性が高いです。
まとめ
健康食品は高齢化社会なこともあり、多くの人が日々摂取しています。また市場規模も巨大です。
そのためか、違反広告が後を絶たず、見つけることもよくあります。
リスクのある行為なので、健全な広告になるようにチェックし、お客様に適切に伝えていくようにしましょう。
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