育毛剤広告表現と薬機法!ビフォーアフター・発毛剤との違い

現代において、薄毛に悩む方はとても多いです。そのため薄毛対策の用剤が多種多数開発販売されていますが、このような薄毛対策の用剤には、育毛剤や発毛剤、養毛剤などさまざまな種類があります。

これらは似た呼称を持ちますが、実はその内容はかなり異なるものです。たとえば医薬品なのか医薬部外品なのか、それとも単なる化粧品に分類されるのかという薬機法(旧薬事法)上の問題もありますし、その分類に従って、広告規制や可能な広告表現の内容もそれぞれ異なります。

育毛剤の販売にかかわっている方は、このような薬機法の知識を知らないまま、間違った広告表現をしてしまうと、薬機法違反という法律違反になってしまうおそれもあります。

育毛剤を買う人は、誤解して効果のないものを買い続けてしまうおそれがあります。

そこで、これらの薬機法(旧薬事法)上の知識は、薄毛対策用剤を取り扱う企業・卸業者・小売店・アフィリエイトメディアなどだけでなく、消費者の方々も、是非とも押さえておきたいところです。

今回は、正しい知識をつけてもらうために育毛剤と発毛剤、養毛剤の違いと、それぞれの薬機法(旧薬事法)上の分類、さらにそれぞれにおいて許される広告表現の範囲について解説します。

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目次

育毛剤・発毛剤・養毛剤の違い

育毛剤や発毛剤の薬機法上の正しい広告規制を検討する前提として、育毛剤と発毛剤、養毛剤のそれぞれの違いを見てみましょう。

発毛剤について

まず、一番強力な効果があるのが発毛剤です。これは、毛が抜けてしまった場合に、再度新しく毛を生えさせる作用のあるものです。

育毛剤や養毛剤は、すでに生えている毛を維持したり健康を促進したりするものであるのに対し、発毛剤は「毛のないところ」に「毛を生やす」作用があるところが根本的に異なります。毛母細胞に働きかけることによって直接発毛を促進する効果があります。

育毛剤について

次に育毛剤です。育毛剤は、すでにある毛の成長を促進することを目的とする製品です。

これは、頭皮の環境を整えて、毛髪の成長を促し、数ヶ月の間に次第に太い毛が生えてくるという効果を目指します。もちろん、すでにある毛の保護や脱毛予防も目的としています。養毛剤よりも効果が強く、有効成分が多く配合されている特徴があります。

養毛剤について

最後に養毛剤です。これは一番効用の弱い種類の製品で、頭皮の状態を健康な状態にととのえて脱毛を予防したり毛髪を保護したりすることを目的としています。

3者の違い

このように、3者の違いは、
発毛剤は「毛のないところに毛を生やす」、
育毛剤は「毛を成長させて保護し、脱毛予防する(強い効果)」、
養毛剤は「毛髪を保護して脱毛予防する(弱い効果)」
というものになります。

育毛剤・発毛剤は医薬品?医薬部外品?

では、このように各々特徴を持つ発毛剤や育毛剤、養毛剤ですが、それぞれ薬機法(旧薬事法)上はどのような分類になるのでしょうか。

薬機法上の分類である、医薬品・医薬部外品・化粧品の違いを説明した後にそれぞれがどれに該当するのか説明します。

医薬品・医薬部外品・化粧品の違い

医薬品は病気の治療や予防を目的とする効果を持つもので、厚生労働省により認定を受けたものに限られます。医薬品の中には医師しか処方できない医療用医薬品と、薬局でも販売できる一般用医薬品があり、一般用医薬品の中にも第一類医薬品、第二類医薬品、第三類医薬品があります。

第一類医薬品は一番リスクの高い商品で、薬剤師が販売する必要があります。
第二類医薬品は比較的リスクのある商品で、薬剤師でも登録販売者でも販売できます。
第三類医薬品はもっともリスクの少ない医薬品で、薬剤師でも登録販売者でも販売できます。

次に医薬部外品という分類もあります。
医薬部外品は、厚生労働省が許可した効用のある成分が配合されてはいるものの、病気の予防のみを目的とした商品です。医薬品と違って病気の治療効果は認められません。

化粧品は、「人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物」(薬機法第二条第三項)とされており、毛髪ケアを目的とした商品が当てはまります。
※薬機法上は、化粧水・ファンデーションなどだけでなく、シャンプー・毛髪ケア商品なども「化粧品」に分類されます。

このように薬機法上の分類がわかったところで、発毛剤、育毛剤等がそれぞれどの分類に属するのか見てみましょう。

発毛剤・育毛剤・養毛剤の薬機法分類

まず、発毛剤は「毛のないところに毛を生やす」という強い効果があります。これは医薬品に分類されるものが多く、その成分内容によって第一類医薬品、第二類医薬品、第三類医薬品があります。

次に育毛剤は「脱毛予防と毛の保護、成長促進」が目的です。医薬部外品に分類されることが多いです。中には有効成分が少なく、医薬部外品として認定されないものも含まれますので注意しましょう。

最後に養毛剤は、化粧品に分類される商品が多いです。有効成分が含まれていないため、医薬品や医薬部外品にはなりません。そして、効き目が育毛剤よりもおだやかです。

以上、発毛剤、育毛剤、養毛剤には薬機法上の医薬品、医薬部外品、化粧品という分類上も明確な違いがあります。

薬用育毛剤とは

それでは、「薬用育毛剤」とは一体何を指すのでしょうか。

「薬用育毛剤」とは、医薬部外品の育毛剤のことです。育毛剤は医薬部外品に分類されるものが多いのですが、中には有効成分が少ないため医薬部外品とならずに単なる化粧品にしかならないものがあります。

このようなものと区別するため、医薬部外品に認定された育毛剤を、特に「薬用育毛剤」と呼んでいるのです。当然、医薬部外品として認定されていない育毛剤は、「薬用育毛剤」と表示することは認められないことになり、養毛剤と同様の表示しかできないことになります。注意しましょう。

薬機法(旧薬事法)で可能な広告表現の効能効果

では、発毛剤、育毛剤、養毛剤それぞれの効能効果について、薬機法上どのような広告表現が可能なのでしょうか。

発毛剤ができる広告表現

まず、発毛剤については医薬品として発毛効果が認定されているものです。
よって、広告表現としては「発毛」「毛を生やす」とはっきり記載することが認められます。

発毛剤の具体例として大正製薬のリアップは、発毛剤の第一類医薬品です。
大正製薬のリアップ5新聞広告
引用先:大正製薬のリアップ5商品販売ページ

育毛剤ができる広告表現

次に育毛剤は、「発毛効果」は認められません。
よって、「発毛」や「毛を生やす」といった表現はNGです。
広告表現としては、育毛、薄毛予防、脱毛予防、発毛促進、毛生促進、養毛などが認められます。ここで、最近トレンドとなっている「白髪予防」は認められませんので注意しましょう。
※アフィリエイトサイトなどに「発毛」と書かれてあっても、販売企業は全くそのような表現を書いていない場合があります。企業の商品販売ページをしっかり確認してから購入しましょう。
※医薬部外品の育毛剤で「発毛」にかんする表現をした場合は、薬機法違反です。

養毛剤ができる広告表現

最後に養毛剤は、医薬部外品としての作用すら認められていないものです。
よって、育毛、薄毛予防、脱毛予防、毛生促進、発毛促進などの表記は認められません。
許されるのは、単に「頭皮や頭髪に潤いを与える」「頭皮を健やかに保つ」いう程度の表現にとどまります。違反のないように、注意しましょう。

育毛剤のビフォーアフター広告は?

育毛剤のビフォーアフター広告と薬機法

育毛剤のビフォーアフター広告自体は違法ではありませんが、「髪が生える」効果があるという印象を消費者に与えるものは、承認された効果を逸脱しているため、NGです。

明らかにビフォーアフター写真で髪が生えたように見せる広告はほとんど見かけませんが、イラストや動画の前後などでそう思わせているような広告は取り締まりを受ける可能性があります。

育毛剤広告の言い換え表現は?

「髪が生える」という表現は使えないため、「髪が映える」といった言い換え表現を使っている広告があります。この場合は、違反しているとは言えないと思われます。

育毛剤の薬機法違反事例

では、ここで具体的な育毛剤の薬機法(旧薬事法)違反事例を見てみましょう。

まず、医薬品に分類される育毛剤(発毛剤)の広告表現違反です。
ラジオにおいて「○○(製品名)があるじゃないか」という広告がなされた事例です。これは、その場面設定が坊主頭になった人に使用しているようなものでしたが、これが健康な人にも使用を促しているかのように見えるとの理由で違反と認定されました。

次に医薬部外品に分類される育毛剤の違反事例です。
① 育毛剤のダイレクトメールや店頭広告で、「白髪を防ぐエキス発見。黒髪が白髪になるのを予防します。白髪を予防・改善するサンショウ抽出エキスを○○(会社名)が発見。」などと広告表現していました。しかし育毛剤では白髪予防の効果は、承認効能外であることから違反になりました。

② テレビで「はえる」という表現がなされた事例で、本品が育毛剤であり、承認された効能効果は「毛生促進」「発毛促進」に限られているにかかわらず、「発毛」など毛が生えると言い切ってしまう表現が違反と認定されました。

③ ラジオにて、「皮脂腺を正常な状態にしてくれる効果抜群。悩みから解放される」と表現した事例で、育毛剤では、皮脂腺そのものを正常化するという効能が認められていないことから違反と認定されました。

④ テレビにて「抜け方が違うということは、育毛剤も違うんです。○○型脱毛に効く!」と表現した事例で、単に「育毛、脱毛の予防」という効果が承認されただけの育毛剤において、特定の脱毛型式に効果があるかのような表示はできないということで違反となりました。

⑤ テレビにて「うぶ毛を太毛にする。」と表現した事例で、育毛剤においては太さ又は長さのいずれか一方のみを強調して表現することは認められないとして違反となりました。

⑥ インターネットにおいて「発毛機構を解明」と表現した事例で、単に「育毛、発毛促進」等の効果が承認されているにすぎない育毛剤にあっては、医薬品的標榜である「発毛」に関する表現をすることはできないとして違反と認定されました。

このように、さまざまな違反事例が見受けられます。特に医薬部外品に分類される育毛剤においては表現が微妙であり、違反事例が多いので、注意しましょう。

育毛剤の措置命令事例

育毛剤の景品表示法にもとづく措置命令事例を紹介します。

株式会社T.Sコーポレーション

2021年3月3日、消費者庁は、株式会社T.Sコーポレーションが販売する「BUBKA ZERO」という育毛剤の表示について、優良誤認表示とし、措置命令を行いました。この事案では、アフィリエイトサイトの表示に対し、広告主側の責任を認め、措置命令へと至りました。※措置命令の内容

表示していた文言としては以下など。
「『有名大学がマウス実験で実証』 医療関係者も勧める『90%がフサフサになった育毛剤』がヤバイ!」
「たった2ヶ月で髪がフサフサ」
「世界的な科学誌が推奨の毛髪再生法 有名医科大のマウス実験で実証済」
「長年ハゲとバカにされてきた私がたったの1か月で」

株式会社RAVIPA

2019年8月20日、埼玉県は、株式会社RAVIPAが販売する育毛剤「薬用Hairmoreスカルプエッセンス」の表示について、優良誤認表示及び有利誤認表示が認められたとし、措置命令を行いました。※措置命令の内容

問題になった表示内容としては、以下。
・「顧客満足度91.3%」と表示して、顧客満足度が非常に高いものであるかのように示していたが、無作為抽出法などの統計的に客観性が十分に確保されている調査方法ではなく、商品モニターに対して行われたものでした。

・氏名等が表示された女性の顔写真を表示し、本件商品に含まれる成分の作用により、実年齢よりも年齢が若く見えるかのように表示していました。また、その女性の年齢は、50代表記でしたが、実際は40代でした。

・「髪は加齢と共に細く・薄くなり、放っておくと取り返しのつかない事態に。」「49歳同じ年齢でもこの差…お手入れなしお手入れあり」等と表示して、頭皮のお手入れをするだけで、本件商品に含まれる成分の作用により、髪の量が増えるかのように表示していました。

・「いつでも好きな時に1ステップで解約できます」等と表示して、簡単に解約できるかのように表示していたが、実際には、解約手段は電話に限られ、平日午前10時から午後5時までの時間帯のみ受け付けが行われ、その電話もつながりにくいものでした。

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まとめ

以上、発毛剤、育毛剤、養毛剤の違いとその薬機法(旧薬事法)上の分類、さらに薬事法上の広告表現規制について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。

主に医薬品に分類される発毛剤、医薬部外品に認定される育毛剤(薬用育毛剤)、薬機法上の分類に入らない養毛剤、この3者は似ているようですが全く異なります。その分類方法によって薬機法上受ける広告の規制内容もそれぞれ違います。

間違って薬機法違反の広告表現をすることのないよう、この記事を参考にしながら適切に商品をアピールしましょう。

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