歯医者が知っておくべき歯科医師法の重要ポイント[義務・違反・罰則内容]

医師の業務範囲や義務内容について定めた医師法は有名ですが、歯科医師にも定められた業務範囲や義務内容があります。

それら歯科医師の業務範囲や義務内容について定めた法律が、歯科医師法です。

歯科医師法には、歯科医師の業務の具体的内容として、無診療治療の禁止や処方箋交付義務などについての規定がありますし、歯科医師には診療録(カルテ)についても保管義務等の定めがあります。これらの歯科医師法の定める規定に反すると、罰則もあります。

さらに、歯科衛生士や歯科助手の業務範囲にも注意する必要があります。
今回は、歯科医院を経営する際に必須の知識となる歯科医師法の義務、違反行為や罰則内容について解説します。

歯科医師の義務行為


歯科医師法には、歯科医師の義務行為が定められています。
まず、歯科医師法は、その第1条において歯科医師の任務を定めています。

歯科医師は、歯科医療と保健指導により、公衆衛生の向上・増進に寄与し、国民の健康な生活を確保するというものです。

これを前提に、歯科医師には、
・患者に対する療養指導義務(歯科医師法22条)、
・患者に診療を求められた場合に断らず診療しないといけないという応召義務(歯科医師法19条1項)、
・診断書の交付を求められた場合の診断書交付義務(歯科医師法19条2項)、
・診療せずに治療する無診療治療の禁止(歯科医師法20条)、
・必要な薬についての処方箋の交付義務(歯科医師法21条)、
・歯科医師の現状届(歯科医師法6条)、
・診療録の記載及び保存義務(歯科医師法23条)
などの義務があります。

これらの他、刑法上守秘義務が課されます(刑法134条1項)。

歯科医師の守秘義務

秘密
歯科医師には守秘義務が課せられます。
歯科医師の守秘義務は、歯科医師法に直接の規定はありませんが、刑法上に守秘義務規定が定められています(刑法134条1項)。

刑法134条第1項には、「医師、歯科医師などの者が、正当な理由なくして、業務上知り得た人の秘密を漏らした場合には、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する」ことが定められています。

守秘義務は、公務員や医師、弁護士など、その職務上秘密の保持が重要となる職業について定められているものです。

歯科医師は、診療によって知り得た患者の情報などの秘密を正当な理由なく外部に漏らすことは許されず、これに違反した場合には処罰されます。

例外規定

守秘義務の例外

歯科医師には原則的に守秘義務がありますが、これにも例外があります。
代表的なものは、法令に基づく場合です。例えば、第三者の利益を保護するために必要な場合に、開示の必要性が開示による不利益より質的にも量的にも相当大きい場合や、本人の承諾がある場合などです。

たとえば犯罪等の捜査に必要な情報を捜査機関にもたらす場合、守秘義務違反の例外と見なされることがあります。

患者本人からの診療録(カルテ)開示請求や診療報酬明細書等の開示請求があった場合の診療情報開示も、患者本人からの請求なので、守秘義務違反の問題は生じません。

これ以外にも、患者の遺族によるカルテ開示請求があった場合や、他の医療機関などの第三者に対してカルテ開示をすることが認められるケースもあります。

無診療治療の例外

歯科医師法には、無診療治療の原則禁止が定められています(歯科医師法20条)。
これは、歯科医師は必ず自ら診察をすることによって治療行為を行わなければならないという義務です。

歯科医師は診察することなしに治療したり、診断書や処方箋を交付してはいけません。

ただし、これにも例外があります。すなわち、最終の受診後24時間以内に患者が死亡した場合や、治療中に患者が疾患によって死亡したケース、他に異常がないなどの条件をみたす場合には、死体検案書ではなく死亡診断書を交付出来ます。

処方箋交付の例外

歯科医師には、処方箋を交付する義務があります。
歯科医師法第21条において、歯科医師は患者に対し、治療上の必要に応じて処方箋を交付しなければならないと定められています。

ただし、患者などが処方箋の交付について不要と申告した場合や、処方箋交付によってかえって患者に不安を与える場合や治療方法が決定していない場合など、一定の場合には処方箋を交付しなくても良いことになっています。

また、歯科医師は、処方箋を交付する際、その処方箋に患者の氏名や年齢、薬名、分量、用法用量、発行年月日、使用期間や病院名称、所在地など記載して、記名押印又は署名しなければなりません。

診療録

医者説明・診断書
歯科医師には、診療録を作成してこれを適切に保管すべき義務もあります(歯科医師法23条)。
診療録の適切な保管は、上記の守秘義務規定との関係でも大変重要です。

診療録記載事項

歯科医師の診療録については、歯科医師法上に記載事項が定められています。
具体的には、歯科医師法23条において、「歯科医師は、診療後遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載する必要がある」旨定められています。

この「遅滞なく」に程度について、厚生労働省ではだいたい24時間を目安にしていると考えられています。

また、歯科医師法施行規則第22条において、診療録の記載事項が定められています。
具体的には、①診療を受けた者の住所、氏名、性別及び年齢②病名及び主要症状③治療方法(処法及び処置)④診療の年月日の記載が必要になります。

診療録・カルテ保存期間

歯科医師の診療録には、必要な保存期間があります。
歯科医師は、診療後5年間、その患者のカルテを保管しなければなりません(第23条)。
保管義務者は病院又は診療所の管理者です。

このカルテの保存期間の始期は、一般的には診察の完了日と考えられています。

開示を求められるとき

診療録については、開示を求められることがあります。いわゆるカルテ開示請求の問題です。

カルテ開示については、厚生労働省の通達に詳しく定められています。

診療録は患者の個人情報ですから、患者がカルテ開示請求をした場合には、原則として歯科医師はこれに適切に応じないといけません。

カルテを開示する方法は、患者等の求めに応じて、診療記録を見せたり写しを交付することによって行います。

患者などが診療録の開示の際に補足的な説明を求めたときは、これに対してもできる限り速やかにこれに応じるべきとされています。

診療録の開示を求めることができる人は、原則として患者本人ですが、患者に法定代理人(未成年者の親など)がいる場合の法定代理人や患者の任意後見人などの人は、患者本人以外であっても患者の代理人として開示を求めることができます。

診療録管理者は、診療記録の開示手続を定める必要もあります。
さらに診療録開示の可否については、医院内に検討委員会等を設置して決定することが望ましいともされています。

診療録を開示する際は、それに必要な費用を徴収することも可能です。
さらに、診療情報を提供することで、第三者の利益を害するおそれがある場合や、患者本人の心身の状況を診療録開示によって著しく損なうおそれがある場合などには、診療録の開示を拒絶することが可能です。

診療録開示を拒む場合には、文書によってその理由を示す必要があります。
患者が死亡した際には、速やかに遺族に対して、死亡に至るまでの診療経過や死亡原因等の診療情報を提供する必要があります。

患者の診療のために必要な場合、患者の同意を得た上で、その患者を診療したり現に診療している他の医療機関に対して診療情報の提供を求めることも可能です。

他の医療機関から診療情報の要求があった場合には、歯科医師は患者の同意を確認して、その保有する診療情報を提供することとされています。

歯科医師法違反逮捕事例

逮捕
歯科医師法には罰則規定もありますので、歯科医師法に違反すると、逮捕起訴されて刑事罰を受けることがあります。
たとえば、以下のような事例がありました。

2010年11月18日の事件で、無資格診療をした医療法人が不正請求をした件で再逮捕されたという事案です。

2010年11月18日、医療法人「海原会」(東京都板橋区)が、2008年5~8月の間に、中学1年の生徒ら4人に抜歯や入れ歯などの歯科治療行為を行ったかのように見せかける虚偽内容のレセプトを作成して、計約42万円をだまし取ったことで、同医院の理事長及び元院長が再逮捕されました。

両名は、親族や知人から保険証の番号を聞いてレセプトの架空請求をしたり、患者の診療報酬を水増し請求する行為を続けており、計1600万円もの診療報酬をだまし取ったと考えられています。

この2人は、歯科医師免許のない歯科助手や歯科技工士らに、抜歯などの歯科治療行為をさせていたことによって、すでに歯科医師法違反容疑で逮捕、起訴されていましたので、今回は再逮捕となりました。

歯科助手の仕事・職務範囲と違法行為

医院受付
歯科医院を経営する際には、歯科助手の業務範囲にも注意する必要があります。
歯科医師法上、治療業務は歯科医師にしか認められないので、これを歯科助手にさせることは違法行為です。
歯科助手には、特別な資格はありません。
その業務内容は、受付や診療台への案内、治療のサポート、会計や電話応対などの雑務になります。

歯科医師や歯科衛生士は国家資格ですので、治療行為や歯の健康を守るための予防処置などが可能で、患者口の中に手を触れる行為が認められていますが、歯科助手がこれをすること認められません。

もちろん、歯科助手は放射線技師でもありませんので、レントゲン撮影行為を行うことも出来ません。かつて、歯科助手が治療行為類似の行為をするなど違法行為が横行していた時代があり、違法行為が見つかっても歯科医師への保健所などの指導や注意があるだけで済んでいたこともありましたが、今ではそうはいきません。

現在では違法行為が発見されると、歯科医師だけではなく、歯科助手本人も刑事罰を科されることがありますので、絶対に行ってはいけません。

歯科助手の業務範囲外の行為として違法になるのは、わかりやすく言うと「患者の口内に自分の手を入れる行為や口に触れる行為」と「レントゲン撮影行為」です。
レントゲン撮影については、診療放射線技師法がありますので、医師や歯科医師、診療放射線技師のみにしか認められません。

具体例を挙げると、歯科助手は以下のような行為をすることが禁止されます。
①歯垢や歯石を取り除くスケーリング
②レントゲン撮影のセッティング、レントゲン撮影のボタンを押す
③麻酔注射をする
④詰め物やかぶせ物をする
⑤歯を削る
⑥歯型を取る
⑦噛み合わせを取る
⑧フッ素を塗布する
⑨歯ブラシの指導をする
なども禁止されます。

ただし、唾液を取るためのバキューム、パノラマやデンタルの現像などは歯科助手の業務行為として行っていいでしょう。

歯科衛生士の仕事・職務範囲と違法行為

歯科衛生士
歯科衛生士は国家資格です。厚生労働省管掌の歯科衛生士名簿に登録されます。
歯科衛生士の業務範囲には、一部の歯科医療業務が含まれます。

歯科衛生士の業務範囲については、歯科衛生士法第2条において、
①歯科診療補助業務、
②歯科予防処置業務、
③歯科保健指導業務
をすることが認められています。

口内の付着物や沈着物を機械的操作によって除去したり、歯や口腔にフッ素などの薬物を塗布することなどが可能です。

また、歯科衛生士法第13条の2には、「歯科衛生士は、歯科医師の指示があつた場合を除いて、診療機械を使用したり、医薬品を授与したり、医薬品について指示することなどができない」旨定められています。

このことからすると、歯科衛生士は、一定の場合であれば主治の歯科医師の指示があるなら、診療機械を使用したり、医薬品授与をしたり、医薬品について指示することなどが出来るということにもなります。

このようなことは歯科助手には決して認められないので歯科衛生士に限った業務範囲と言えます。

さらに、歯科衛生士はホワイトニングに携わることもできます。
厚生労働省の通達によると、歯石取りやホワイトニングなどについては、歯科衛生士は主治の歯科医師の指導の下で行うことが出来るという趣旨が読み取れます。

よって、歯科衛生士は、主治の歯科医師の指導の下という条件を満たす限り、ホワイトニング行為をすることも出来るのです。

この点も、歯科助手とは大きく異なる点です。

歯科医師法違反の罰則・罰金内容


歯科医師法には罰則や罰金もあります。
まず、歯科医師でない者が歯科医業をした場合や、虚偽・不正に基づいて歯科医師免許を取得した者については2年以下の懲役又は2万円以下の罰金刑が科されます(歯科医師法29条1項)。

これらの者が歯科医師やそれに類似した名称を用いた場合は、3年以下の懲役又は3万円以下の罰金刑が科されます(歯科医師法29条2項)。

厚生大臣から業務停止命令を受けた場合にそれに従わなかったり、歯科医師試験委員などの試験事務において不正を行った者は1年以下の懲役又は1万円以下の罰金刑に科せられます(歯科医師法30条)。

歯科医師の現状届を適切に行わなかった者や歯科医師以外の者が歯科医師らしい名称を用いた場合、歯科医師が無診察治療を行った場合や処方箋交付義務に違反した場合、診療録記載や保存義務に違反した場合は5千円以下の罰金刑に科されます(歯科医師法31条)。

まとめ

以上のように、歯科医院の経営に際しては、歯科医師法の各規定に定められた歯科医師の義務内容や違反行為などに充分注意する必要があります。

歯科医師自身にも処方箋交付義務、診療録記載・保存義務など各種の義務がありますし、刑法上定められた守秘義務もあります。患者に対するカルテ開示手続きに際しても、細心の注意を払う必要があります。

また、歯科医院経営に必須の歯科助手や歯科衛生士の業務範囲にも注意しないと、違法行為となってしまいます。

歯科医師法には罰則規定がありますので、違反すると逮捕起訴されて、刑事罰を受ける可能性もあります。

今回の記事を参考にして、法律違反とならないよう安全な歯科医院経営を目指しましょう。

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