あはき法とは?対象・広告規制・罰則・違反事例

あはき法は、整骨院・接骨院・鍼灸院・整体院・マッサージ店などに関係してきます。あはき法を正しく知って、法律違反をしないように注意していきましょう。

目次

あはき法とは?正式名称は?

あはき法は「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律」の略称です。

なお、あはき法は当初「柔道整復師」を規制対象にしていましたが、現在、柔道整復師は「柔道整復師法」という別の法律により個別に規制されています。

あはき法は、戦後、日本がアメリカの占領下にあった時代、あん摩や鍼灸は非科学的であるとして禁止されそうになったことから、それに対する反対運動の結果として誕生した非常に歴史の古い法律になります。

あはき法の規制対象

あはき法は医業類似行為を規制している

あはき法は、医業類似行為を規制しています。

具体的には、①あん摩マッサージ指圧、②はり、③きゅう、④①~③以外の医業類似行為(柔道整復は除く。)です。その他、柔道整復は柔道整復師法により規制されている医業類似行為になります。

あはき法の規制対象について注意すべき2つのポイント

①法的資格制度のない医業類似行為でも処罰対象にならないものがある

あはき法は原則医業類似行為をあん摩マッサージ指圧、はり・きゅうに限定して、各行為について免許制度について定めています。また、柔道整復師法は医業類似行為である柔道整復について同様に免許制度制度について定めています。

他方、法的資格制度のない医業類似行為なるものがあります。たとえば、カイロプラクティック、整体・骨盤矯正、気功、温熱・電気・光線などです。

このような法的資格制度のない医業類似行為は、法的資格制度のある医業類似行為を「施術」と呼ぶのに対して、「療術」と呼ばれています。

あはき法や柔道整復師法は、あん摩マッサージ指圧、はり・きゅう、柔道整復以外の医業類似行為を禁止しています。そうなると、法的資格制度のない医業類似行為を適法に行うことは無理のように思えますが、実はそうではありません。

なぜなら、判例上、無資格の医業類似行為として処罰の対象になるのは、医学的観点から人体に害を及ぼすおそれのある医業類似行為に限定されるからです(最高裁昭和35年1月27日大法廷判決)。

つまり、医学的観点から人体に害を及ぼすおそれのない医業類似行為は無資格でも処罰の対象にはならないのです。

②医業に該当する行為は医師以外は禁止されている

また、そもそも医業に該当する行為は医師法に基づき医師以外は禁止されています。医業は、人の傷病の治療・診断または予防のために医学に基づき医師の専門的知識・技能を必要とする行為をいいます。

医業と医業類似行為は治療・保健を目的とする点では同じである反面、医業類似行為は医師の専門的知識・技能を必要としない点において医業と区別されます。

近時、タトゥー(入れ墨)施術行為は、医療との関連性はなく、また、医師でなければ保健衛生上の危害の防止について対処できないものでもないことから医業には該当しないと判断した裁判例があります(大阪高等裁判所平成30年11月14日判決)。

◯医業・医業類似行為の規制のまとめ

行為法律無資格・無許可の罰則
医業医師法3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金
医業類似行為法的資格制度ありあはき法・柔道整復師法50万円以下の罰金(法的資格制度なしの医業類似行為については医学的観点から人体に危害を及ぼすおそれのある行為に限定)
法的資格制度なし
医業・医業類似行為に該当しない行為特になし特になし

あはき法の広告規制

あはき法は、医業に関する医療法と同じように、あん摩マッサージ指圧業、はり・きゅう業に関する広告について規制しています。

具体的には、あはき法はあん摩マッサージ指圧業、はり・きゅう業に関する広告に記載することのできる事項は下記の表に記載した事項に限るとしています。

◯あはき法における広告可能事項

広告可能事項備考
①施術者である旨並びに施術者の氏名及び住所但し、施術者の技能、施術方法又は経歴に関する事項にわたってはならない。
②業務の種類
③施術所の名称、電話番号及び所在の場所を表示する事項
④施術日又は施術時間
⑤その他厚生労働大臣の指定する事項ⅰ)もみりようじ、ⅱ)やいと、えつ、ⅲ)小児鍼(はり)、ⅳ)施術所の開設・再開の届出のあること、ⅴ)医療保険療養費支給申請のできる旨、ⅵ)予約に基づく施術の実施、ⅶ)休日又は夜間における施術の実施、ⅷ)出張による施術の実施、ⅸ)駐車設備に関する事項

上記のとおり、あはき法の許容する広告可能事項は非常に限られています。そのため、現実には、あはき法違反の広告は社会に氾濫している状況にあり、現在、国は広告規制については見直しの議論をしています。

あはき法の罰則

無資格・無届の医業類似行為に対する罰則

無資格・無届の医業類似行為については50万円以下の罰金に処せられます。但し、実務上、カイロプラクティックのような法的資格制度のない医業類似行為については、医学的観点から人体に害を及ぼすおそれのある行為に限り処罰の対象になります。

広告規制違反に対する罰則

あはき法上の広告規制に違反した場合は30万円以下の罰金に処せられます。

その他の罰則

その他の罰則については下記の「あはき法における主な罰則規定」を参照してください。

対象行為罰則備考
無資格・無届の医業類似行為50万円以下の罰金法的資格制度のない医業類似行為については医学的観点から人体に害を及ぼすおそれのある行為に限定
広告規制違反30万円以下の罰金
守秘義務違反50万円以下の罰金被害者の告訴のある場合に限る(親告罪)。
業務禁止命令違反50万円以下の罰金

あはき法と開業の関係

あん摩マッサージ指圧業、はり・きゅう業を開業しようとする場合、具体的にどのような手順を踏む必要があるのでしょうか。

あはき法のあん摩マッサージ指圧業、はり・きゅう業の開業に関する規制に言及しながら解説します。

免許の取得

あん摩マッサージ指圧業、はり・きゅう業を行うには、あはき法に基づく免許を取得しなければなりません。各免許の取得は①各業種の国家試験の合格、②各業種の名簿登録により完了します。

また、国家試験を受験するためには、3年以上、国の指定する養成施設においてあん摩マッサージ指圧師、はり・きゅう師となるのに必要な知識及び技能を習得している必要があります。

さらに、あはき法は、①心身の障害により業務を適正に行うことができない者、②麻薬、大麻又はあへんの中毒者、③罰金以上の刑に処せられた者、④医業類似行為に関する犯罪又は不正行為を行った者については、免許を与えないことができると定めています。

施術所の開設

無事にあん摩マッサージ師、はり・きゅう師の免許を取得すれば、次に施術所を開設する手続に移ります。

あはき法は、施術所を開設した者は、開設後10日以内に、開設の場所、業務に従事する施術者の氏名等に関する事項を施術所の所在地の都道府県知事に届出することを求めています。

また、開設する施術所は、あはき法の定める以下の条件を満たしていなければなりません。

①6.6㎡以上の専用の施術室を有すること
②3.3㎡以上の待合室を有すること
③施術室は室面積の7分の1以上に相当する部分を外気に開放し得ること(これに代わるべき適当な換気装置があるときは除く)
④施術に用いる器具、手指等の消毒設備を有すること

そして、開設した施術所においては、常に清潔を保つこと、採光、照明及び換気を充分にすることを求められます。

もし開業を認められなかったら?

もし、あん摩マッサージ師等の免許を認められず開業することができない事態に陥った場合には免許を与えられなかった理由を確認した上、その判断に不服のある場合には行政法上の不服申立の手続をとることができます。

免許を認められなかったために開業できず困った場合には、一度、弁護士に相談するとよいでしょう。

あはき法の違反事例

過去のあはき法違反の事例としては、たとえば無資格のマッサージ師を全国の健康ランド・宿泊施設に派遣していたため、あはき法違反として摘発された事例があります。

スーパー銭湯やホテルにマッサージ室を設けてマッサージ師の待機している様子は日常生活でも頻繁に目にする光景です。

このような派遣マッサージを行うには有資格者であることはもちろん、出張施術のための届出を要します。

あはき法違反は意外と身近に潜んでいますから注意しましょう。

また、あはき法の広告規制の違反事例については数自体非常に多く行政の指導の追いつかない状況にあるようです。たとえば、あはき法では、料金広告、適応症・効果・効能等の広告は禁止されているところ、「〇分〇円、1回〇円」「肩こり・腰痛に効く!」などの広告看板は普通に目にします。

まとめ

医業に関する行為は、①医業、②資格制度のある医業類似行為、③資格制度のない医業類似行為、④医業・医業類似行為に該当しない行為に分類できます。このうち、あはき法は②③の医業類似行為を規制対象としています。

あはき法は、原則として、適法に行うことのできる医業類似行為は、法的制度に基づく資格者による、あん摩マッサージ指圧業、はり・きゅう業に限定しています。また、同様に柔道整復師法は適法に行うことのできる医業類似行為を柔道整復に限定しています。

そして、あはき法は、医業類似行為に関する免許、開業、広告等についての規制を定め違反者に対する罰則規定を設けています。

資格制度のない医業類似行為は本来あはき法により禁止されているはずのところ、判例上、処罰対象になる医業類似行為は医学的観点から人体に害を及ぼすおそれのあることを要すると理解されているため、人体に害を及ぼすおそれはないとされている限り、あはき法違反として処罰することは難しいのです。

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