先日、とある医科大学の元講師(医師)が、国に必要な届け出をせず脂肪幹細胞を投与する再生医療を行ったとして、再生医療安全性確保法違反の疑いで家宅捜索を受けるとともに、同法違反容疑での刑事告発も検討されていると報道されました。
再生医療の自由診療でなぜ逮捕される可能性があるのでしょうか。報道されている内容についてさらに詳しく説明します。
再生医療安全性確保法とは?
今回問題となっている法律は、「再生医療安全性確保法」という法律です。
この法律は、薬事法改正法の施行と同じ日(2014年11月25日)に施行された比較的新しい法律です。
再生医療を国民が迅速かつ安全に受けられるようにするための枠組みが作られ、「再生医療安全性確保法」と「薬事法改正法」にそれぞれ役割が割り当てられました。
◯再生医療安全性確保法
対象:自由診療、臨床研究
目的:安全な再生医療を迅速かつ円滑に
◯薬事法改正法
対象:製造販売
目的:多くの製品を、より早く
再生医療安全性確保法の対象
再生医療安全性確保法の対象となる「再生医療等技術」の要件は、第二条2項に以下のとおり定められています。
二 人の疾病の治療又は予防
今回の「脂肪幹細胞を投与する再生医療」は、この要件を満たす行為と言えます。
問題となっている「必要な届け出」
再生医療安全性確保法では、国民の安全性を確保するために届け出を必要とすることを定めています。それは第四条に書かれています。
※分かりやすくするために一部省略しています。
一 当該病院又は診療所の名称及び住所並びに当該管理者の氏名
二 提供しようとする再生医療等及びその内容
三 前号に掲げる再生医療等について当該病院又は診療所の有する人員及び構造設備その他の施設
四 第二号に掲げる再生医療等に用いる細胞の入手の方法並びに当該再生医療等に用いる特定細胞加工物の製造及び品質管理の方法
五 前二号に掲げるもののほか、第二号に掲げる再生医療等に用いる再生医療等技術の安全性の確保等に関する措置
六 第二号に掲げる再生医療等に用いる細胞を提供する者及び当該再生医療等を受ける者に対する健康被害の補償の方法
七 第二号に掲げる再生医療等について第二十六条第一項各号に掲げる業務を行う認定再生医療等委員会の名称及び委員の構成
八 その他厚生労働省令で定める事項
この第四条に書かれてある届け出をせずに、診療を行ったため、報道された医師は警察からの捜査を受けることになりました。
再生医療安全性確保法違反の罰則
今回のような届け出をしなかった場合の罰則は、どのようなものがあるのか見ていきます。
届け出に関する罰則は、第六十条に書かれてあります。
一 第四条第一項の規定に違反して、第一種再生医療等提供計画を提出せず、又はこれに記載すべき事項を記載せず、若しくは虚偽の記載をしてこれを提出して、第一種再生医療等を提供した者
「一年以下の懲役又は百万円以下の罰金」なので、そこまで重い罰則ではありません。ただ、逮捕となった場合は、医師免許を失う可能性も出てきますし、職場や患者からの信頼を失うことになるので、大きな損失を被ることになります。
まとめ
まだまだ新しい法律なので、医師や患者への認知度が低い可能性があります。ただ、医師だけでなく患者にとっても安全な医療を受けるためのルールなので、これから再生医療を行う医師や、再生医療を受ける方は、知っておきましょう。
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