エステサロン広告方法と表現規制!ビフォーアフターOK?

エステサロンの経営にとって広告活動は顧客へのアピールの重要な手段の一つであり、インスタなどのSNSの活用をはじめとして広告媒体や方法も多様化しています。一方でそうした広告への規制もまた多岐にわたります。

景表法、薬機法、医師法、あはき法などのパッチワーク状の法規制の下で、これらのいずれにも抵触しない表現でなければならないのです。さらには行政機関ではなく業界団体による自主規制がなされていることが特色となっています。

目次

エステサロンの広告方法

SNSが発達し、広告方法は様々なものがあります。

ポータルサイト、チラシ、ホームページ、SEO、MEO、リスティング広告、Youtube、Facebook、Instagram、Twitter、TikTokなど。

すべてを行うのは難しいと思われるので、上記のうちのいくつかから効果的なものを極めて集中的に行うのがよいでしょう。

その中でもおすすめなのは次の方法です。

・ポータルサイト(ホットペッパービューティー)
・チラシ(ポスティング)
・ホームページ × SEO、MEO
・Youtube
・Instagram

また写真や動画はかなり大切になります。綺麗な撮り方を覚えて色んな媒体に応用できるようにしておきましょう。

エステサロンの広告表現の法律規制4つ

①景品表示法の規制

景品表示法(以下「景表法」とします)では、優良誤認表示と有利誤認表示が不当表示として禁止されており、これらに該当する場合には消費者庁により措置命令がなされ、さらに課徴金の納付を命じられるおそれがあります。

エステティックが「人の皮膚を美化し、体型を整えるなどの指導又は施術」であるという特性から、客観的な裏付けの有無にはとりわけ注意しなければなりません。

優良誤認表示に当たる例

「一ヶ月で20キロの減量ができる」
「お肌にマイナス10歳の潤いをもたらします」

このようにサービス内容について「著しく優良であると一般消費者に示す表示」は優良誤認表示となるおそれがあります。仮にこのような表記を行う場合には、その根拠となる調査結果や試験条件についても併記しなければなりません。

これに関して日本エステティック振興協議会の「エステティック業統一自主基準」(以下「自主基準」とします)においては、「完璧」「完全」のように全く欠けることがないことを意味する用語や「最高」「一級」のように最上級を意味する用語が、特に禁止の対象とされています。

有利誤認表示に当たる例

「いまだけ50%割引」
「初回限定価格〇〇円」

このようにサービスの取引条件についての表示をする場合には、価格が割引される期間や割引対象商品、二回目以降の価格などについても併記しなければ有利誤認表示とされるおそれがあります。

なお「この施術が受けられるのは〇〇で当店だけ」のような比較表示についても、客観的な根拠が必要です。「自主基準」では他よりも優位に立つことを意味する用語として、「世界一」「日本初」などの表記が禁止されています。

②薬機法の規制

薬機法とは正式名称が「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」であり、医薬品や化粧品などについて規制する法律です。

エステサロンで使用する美容機器や化粧品について、あたかも医薬品であるかのような効能効果を広告してしまうと、薬機法に違反することになります。

医薬品や医療機器を標ぼうする例

「お肌のくすみ、シワやシミが解消します」
「当サロンの施術でアンチエイジング」

このように「治療又は予防に使用されることが目的とされている」医薬品であるかのような効果を謳うことはできません。例えば「皮膚をすこやかに保つ」「エイジングケア」のように美容効果の範囲内で言い換えた表現にしましょう。

厚労省の「化粧品の効能の範囲の改正について」によれば「口唇のキメを整える」「肌にはりを与える」のような効能については、化粧品の広告表記として用いることが可能です。そのため「補い保つ」「補う」あるいは「保つ」のような表現であれば問題はありません。

実証困難な数値を表示する例

「20分で小顔になれる」
「1時間の施術で痩身効果を実感」

ほかにもこのように客観的に立証が困難な数値をことさらに表記することも、薬機法あるいは景表法に抵触するおそれがあります。

なお特に「瘦身エステ」については、消費者庁の見解としては「適切な運動や食事制限をしながら、人が痩せることができるのは、6か月間で4kg から5kg 程度まで」であるとされていますので、あまりに急激な痩身効果を広告することは、客観的に立証が可能でない限り避けたほうがよいでしょう。

厚労省局長通知「化粧品の効能の範囲の改正について」
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tb7518&dataType=1&pageNo=1

③医師法の規制

必ずしもエステティックについて規律する法ではありませんが、医師法は医療行為を医師に限定して認めているため、エステサロンの広告内容が医療行為に当たることがないようにしなければなりません。

違反した場合には行政処分のほか3年以下の懲役または100万円以下の罰金という刑罰が科されます。

医療行為を標ぼうする例

「医学的根拠に基づいた施術が可能」
「生活習慣病の症状を緩和します」

このようにサービスの内容が医療行為であるかのような広告は、医師法違反となるおそれがあります。他にも「治す」「治療する」「診断する」のような表現は、医療行為以外では認められない表現のため、エステサロンの広告では使用できません。「自主基準」においてもこのような広告は禁止の対象としてあげられています。

医療行為に当たる例

「レーザー脱毛による永久脱毛が可能です」
「アートメイクでおしゃれに」

火傷の恐れがあるレーザー脱毛のように、身体に対して危害を加える可能性のある行為は、いわゆる「医行為」として医師以外がすることは禁止されています。そのためこうしたサービスをエステサロンで提供することはできないため注意しましょう。

④あはき法の規制

あはき法とは「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」の略称であり、これらの国家資格者の行為について規制するとともに、こうした資格を有しない者による一定の行為について禁止しています。

エステティックとの関連では「マッサージ」という表現は、あはき法により禁止の対象となっているので広告において使用することができません。これに対して「トリートメント」「リラクゼーション」のような表現であれば使用することができます。

近年こうしたエステサロン等での医療類似行為による健康被害の増加を受けて、総務省が勧告を発し、保健所や医療機関に対して、健康被害の報告を受けた場合の事実確認や行政指導を徹底するように促しています。

そのため今後は消費者庁その他の行政機関による取り締まりが強化されることが予想され、より一層の注意が求められていると言えます。

上記の勧告でも「エステティック」での「まつ毛エクステンション」(美容師免許が必要)や「脱毛エステ」「美顔エステ」「痩身エステ」での健康被害が取り上げられており、これらのエステによりやけどやアレルギーによる炎症を負った事例が、行政指導の対象となるとされています。

エステサロンの広告でビフォーアフターはOK?NG?

エステティックの効果を印象的にアピールするために用いられるビフォーアフターの写真ですが、こうした広告表現は法律上禁止されていません。ただしその掲載には特に注意しなければなりません。

当然ながら、虚偽の写真を用いることや効果を偽るような加工写真を掲載するようなことは認められません。

また景品表示法上、ビフォーアフター写真は個人の体験談を掲載するものとして規制の対象となります。単に「*効果には個人差があります」等の注意書きを入れる程度では、「大体の人が同等の効果を得られる」との判断を消費者にさせるものとして、優良誤認表示となるおそれがあります。

同等の効果を得るために、エステティックのほかに食事制限や適度の運動などが必要な場合には、これらについても付記する必要があります。

消費者庁や公正取引委員会による景表法上の措置命令事案についても、公開されている事案の多くを占めるのはこのような体験談やビフォーアフター写真を掲載しているようなケースです。そのため効果を得るために必要な条件を明記することや、特異な事例の掲載を避けることというような対策を徹底するようにしましょう。

エステサロンのビフォーアフター写真の加工は禁止?

エステサロンのビフォーアフター写真を加工するのは基本的に禁止です。

効果が出ているように見せたい、はっきりと違いが出ているようにしたい、という気持ちから写真を撮ったあとに加工する場合があるかもしれませんが、誤認を招き、法律違反になってしまう可能性があります。

また、お客様の施術前後の写真として、従業員の写真を混ぜたり、恣意的に効果がよく見える写真を選んだりするのもNGです。

実際に以下のように景品表示法違反となっている事例があります。

15名の人物の施術前及び施術後の写真を表示するなど、あたかも、本件役務の提供を受けた顧客の写真であるかのように表示していた。実際には、

(1)写真15名のうち、2名は本件役務の提供を始めた当初の従業員であり、残り13名にはモニターが含まれており、顧客ではない人物が含まれていた。

(2)従業員が恣意的に施術後の顧客写真から選定したものであり、統計的に客観性が十分に確保されているとは言えないものであった。

参考:措置命令

まとめ

美容健康への意識の高まりからエステティックというサービスは、人々に広く認知され利用されるのみならず、「産業分類」に挙げられるなど着実に法的な地歩も気づいてきたと言えます。

一方で医師やあはき師のような国家資格制度と隣り合わせのサービスでもあり、また行政のガイドラインもない中、事業者による自主規制が期待されているとも言えます。

広告規制はその趣旨を守れば対策が可能ですので、こうした状況に委縮することなく正しい表現を心がけてアピールをしていきましょう。

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