⇒PDF無料プレゼント「薬事法OK・NG表現がわかる!薬事表現の具体例集148」
整体院やカイロプラクティック業を行っている場合、その広告表現の方法には法律上厳重な縛りがあります。ちょっとした不注意で法律違反となってしまっている事例もありますので、法律に違反しないよう関連法には慎重になる必要があります。
また、整体院等においては、健康食品や健康器具・医療器具を取り扱う場合があると考えられますが、これらについての広告表現にも、やはり同じように法律による厳格な規制がありますので、法を熟知しどのような表現内容であれば許されるのかをしっかり押さえておく必要があります。
そこで今回は、整体院やカイロプラクティック業等を行っている方に必須の知識である広告表現に関する法律について解説します。
具体的にはこのような法律が絡んできます。
・医師法
・あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律
・薬機法(旧薬事法)
・景品表示法
整理して説明しますので、順々に見ていきましょう。
整体が提供するサービスとは?
まず、整体院やカイロプラクティックの広告規制を考える前提として、整体院等が提供するサービスとはいったいどのようなものであるかを明らかにしておく必要があります。
医業と医業類似行為の違い
結論から書くと、整体院やカイロプラクティックが行うサービスは、「医業類似行為」であり、「医業」ではありません。
少しややこしいですが、これから詳しく説明します。
整体院等で提供されるサービスは、体調を良くすることを目的とするものであり、医療行為に似たサービスです。
しかし、医師法において「医療行為」は医師にしか出来ないことが厳格に定められているため、整体院等において「医療行為」を提供することはできません。
あんま、はり、きゅう師などについては「医療行為」は認められないけれども「医業類似行為」の提供は認められると「あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律」(あはき法と言います)で定められています。
医業 医業類似行為 医師の行う医療行為
(人の傷病の治療・診断又は予防のために、医学に基づいて行われる行為)疾病の治療又は保健の目的を持って光熱機器・器具その他の物を使用し、応用し、又は四肢若くは精神作用を利用して施術する行為であって、医師の専門的知識、技能を必要としないもの(法の定義)
引用先:医業類似行為について
例えば、腰痛の治療の場合には、手術や投薬などは医業の範疇に属しますが、マッサージやアイシングなどの処置は医業類似行為に分類されることとなり、マッサージ師などによってもサービス提供が可能となります。
法律で認められた医業類似行為と認められていない医業類似行為
医療類似行為には、「法律で認められた医業類似行為」と「認められていない医業類似行為」の2種類があります。
詳しく見てみましょう。
法で認められた医業類似行為 | 法に基づかない医業類似行為 |
---|---|
1.按摩マッサージ指圧師 2.はり師 3.きゅう師 4.柔道整腹師 | 1.カイロプラクティック 2.整体、骨盤矯正 3.気功 4.温熱・電気・光線 5.その他 |
「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師に関する法律」(通称:あはき法)によりマッサージなどを仕事とする人は、養成機関で3年以上学んだ後、国家試験に合格して得る免許が必要としている。 | あはき法により認められたもの(左記)以外をまとめて「療術」といいます。 (電気・指圧・温熱・刺激・手技療法による医業類似行為を業とする職業で鍼灸師、あんま、指圧、マッサージ師、柔道整復師以外のものをいいます。) |
引用先:医業類似行為について
ここで注意しなければならないのは、カイロプラクティックや整体、気功などは医業類似行為としては法律上定められていないということです。
それでは、これらの行為は一切認められないのでしょうか、実際にはどのような根拠でサービス提供することができるのでしょうか。
この点、昭和35年1月27日最高裁判決により、「医業類似行為は、人の健康に害を及ぼす恐れのある業務行為でなければ禁止の対象にならない」と判断されており、法律上規定のない医業類似行為であっても人の健康に害を及ぼす恐れがなければ開業することが可能であると理解されています。
つまり、整体やカイロプラクティックや気功などは、上記判例にもとづく判断により、無免許であるものの、提供が認められているサービスです。
これらの、あはき法により認められてはいないけれど、判例により認められる医業類似行為のことを、まとめて「療術」といいます。
療術とは、具体的に「電気・指圧・温熱・刺激・手技療法による医業類似行為を業とする職業で鍼灸師、あんま、指圧、マッサージ師、柔道整復師以外のもの」を意味します。
なお、これらの療術については「人の健康を害するおそれがない」ことが要件とされていますので、当然「安全施術」が一番の基本となることには常に注意が必要です。
⇒PDF無料プレゼント「薬事法OK・NG表現がわかる!薬事表現の具体例集148」
広告で表現できる事項
整体院やカイロプラクティックにおいては、どのような広告表現が認められるのでしょうか。
まず、整体院などにおいて提供されるサービスにはあはき法にもとづく医業類似行為とあはき法にもとづかない医業類似行為がありますが、あはき法にもとづかない医業類似行為だからと言って、法規制なくどのような広告でも許されると言うことにはもちろんなりません。
法の趣旨からして、法にもとづかない医業類似行為であっても広告表現においては、あはき法の規制に従って行うことが大切です。
そして、あはき法においては、これらの医業類似行為について、広告できる事項が厳格に定められています。
具体的には
①施術者の氏名及び住所、
②業務の種類、
③施術所の名所及び電話番号、
④施術日または営業時間、
⑤予約・休日・出張による施術の実施、
⑥駐車場の案内
は広告できるとされています。
逆にこれ以外のもの、たとえば出身校・経歴、流派、適応症(特にガン)などや誇大広告のおそれのある事項、所属学会や技能及び施術方法などについては広告にて記載してはいけないことになりますので、注意が必要です。
施術所の名称については、法に従って病院や診療所と間違えるような名称をつけることのないよう気をつけましょう。
たとえば、「整体クリニック」などの名称は使ってはいけません。
さらに、整体やカイロプラクティックなど、あはき法にもとづかない民間資格の療術(無届けの医療類似行為)においてはさらなる配慮が必要です。具体的には「治療院」という言葉は控えましょう。
カイロプラクターや整体師などの療術師は、法にもとづく医業類似行為とは異なり「治療」ができないのですから「治療院」という名称を自粛した方が良いという趣旨です。
また、当然のことですが、免許を持たないカイロプラクターなどの者が施術院においてあんま、指圧、マッサージ等の治療行為を行った場合は、あはき法違反となり、刑事罰まで受けることとなってしまいますので注意が必要です。当然そのようなサービス提供をするかのような広告をしてはいけないことは言うまでもありません。
また、上記の施術院の名称ともかかわる問題ではありますが、整体やカイロプラクティックなどの、法に基づかない無免許の医業類似行為の広告においては、「治療」とか「治る」という表現をすることは許されません。
カイロドクターや整体師などの療術師は、法によって認められた免許を取得していないのですから「治療行為」は認められないので、治療とか治るなどといった表現をすることはできないのです。そうではなく、許される範囲の表現としては「癒やす」「施術」「トリートメント」「和らげる」と言った表現が適切です。
整体院で取り扱う健康食品や健康器具・医療器具について
院内で健康食品や健康器具などを販売する場合は、薬機法法(旧薬事法)や景品表示法、特商法などに気をつけて販売する必要があります。
具体的に、どのような広告表現が許されるのでしょうか。
健康食品を販売するときの広告表現
まず、健康食品は医薬品とは異なり、単なる食品に分類されます。
そのため、「◯◯病が治る」などの医薬品的表現は許されません。口頭でもNGです。
健康食品の中には、効果を表現できるものもあるのですが、詳しくはこちらの記事にまとめていますので、こちらを見てください。
⇒健康食品の広告表現で使える薬機法(旧薬事法)OKの効能効果
健康器具や医療器具を販売するときの広告表現
健康器具についても注意が必要です。
まず、単なる健康器具の場合は、当然「治る」とか「治療」といった表現は認められません。これも健康食品の場合と同様の趣旨であり、健康器具は薬機法(旧薬事法)において治療効果が認められたわけではないので、このような表現が許されないのです。
それだけでなく、「人体に影響を及ぼすことにより健康の増進・維持を意図しているもの」とされる健康器具は、医療機器に該当するため、販売自体が違法行為になります。
電動式の健康器具(マッサージ椅子など)は、より危険性が高いため、薬機法にもとづいて正式に登録をし、医療機器として販売する必要があります。
つまり、医療器具に当たるものを販売したければ、薬機法にもとづいて許可を得る必要があります。
一応説明しておくと、医療器具の広告表現は、認められた効用についてのみ可能です。
⇒PDF無料プレゼント「薬事法OK・NG表現がわかる!薬事表現の具体例集148」
薬機法(旧薬事法)、景品表示法などの4つの法律違反事例
最後に、整体院などにおける薬機法(旧薬事法)や景品表示法違反の事例を見てみましょう。
①無許可医薬品の販売
まず、2015年2月、岩手県盛岡市内の整体師が、未承認のED治療薬を無許可で広告し、販売したため逮捕された事例があります(薬機法)。
②「小顔矯正」で景品表示法違反
2013年4月、自社のインターネットサイト上で、提供される役務を受けることによって、直ちに小顔になりその効果が持続するかのような表示をしていたケースで、その表示の裏付けとなる合理的な根拠がなかったため、優良誤認の景品表示法違反となった事例があります。
③「身長伸ばし」「美顔矯正」で景品表示法違反
2012年7月、身長伸ばしセンターが合理的な根拠なく「一人ひとりのお身体の状態に合わせた効果的な身長伸ばしを実現します。」「鑑定資料1~では、下腿骨の長さの相違が確認できる」などと記載したことが優良誤認の景品表示法違反とされました。
④医療行為をしたことによる医師法違反
薬機法(旧薬事法)や景品表示法違反ではありませんが、2008年頃に、整体師を名乗る女性が、電気治療器を用いて治療行為を行った上、患者に低温火傷を負わせて逮捕された事例があります。これについては、無資格で治療行為をしたことが医師法違反と認定されました。
まとめ
以上、整体院・カイロプラクティックが注意すべき薬機法(旧薬事法)・景品表示法について解説してきましたが、いかがでしたか。
整体院等において提供される医業類似行為には、その広告表現においては医師法や薬機法(旧薬事法)、あはき法にもとづく広告規制があることに注意しなければなりません。国家資格のない無免許民間資格の療術院である整体院やカイロプラクティックにおいては「治療」はできないこと、「治療」を標榜することは許されないこともしっかり自覚しなければなりません。
また、院内で販売する健康食品や健康器具類は、広告表現だけでなく販売行為自体が違法となる場合もありますので、薬機法(旧薬事法)や景品表示法への配慮が必要です。もちろん、提供する役務のサービス内容についても、同じく景品表示法等により厳格な広告表現についての規制があります。
このように、整体院やカイロプラクティックの広告表現は、様々な法規制を受けますので、法の趣旨や規制内容を正しく理解し、くれぐれも違法行為を行うことのないよう注意しましょう。
コメント