近年、ネットショップでの売上げが右肩上がりです。ネットショップでは自分の欲しいものをピンポイントで探せる上に、住んでいる地域に関係なく欲しいものが手に入ります。
従来は通常の店舗で経営をしていた方でも、インターネットでの販売を開始することで売上げを増やしたり、新たな経営の活路を見出したりすることが可能になり、ますますインターネットを利用した通信販売の利用は増加していくでしょう。
しかし、このインターネットを利用した通信販売には、特定商取引法の規制がかかり、特定商取引法に基づく表示を正しくすることが求められています。
この法律の規制を知らずにインターネット販売をすれば取締りの対象となり、せっかくの販路拡大の計画に水を差されることになりかねません。
今回は特定商取引法に基づく表記について学んでいきましょう。
特定商取引法に基づく表記とは
特定商取引法とは、正式な名称を特定商取引に関する法律(昭和51年6月4日法律第57号)といいます。
この法律の目的は、「特定商取引を公正にし、及び購入者等が受けることのある損害の防止を図ることにより、購入者等の利益を保護し、あわせて商品等の流通及び役務の提供を適正かつ円滑にし、もつて国民経済の健全な発展に寄与すること」と同法1条に書かれています。
特定商取引法は、消費者にとって紛争に発展しやすい商取引といえる訪問販売、通信販売及び電話勧誘販売などについて規制をしている法律なのです。
「特定商取引法に基づく表記」とは、同法の11条によって、通信販売において事業者に課せられている規制です。これを英語で言うとNotation based on the Specified Commercial Transaction Actです。
通信販売は互いに顔の見えない隔地の取引です。
消費者は商品の情報を広告から知るしかありません。
広告の記載が不十分であったり、不明確であったりすると、消費者は商品を購入するにあたって判断を誤ってしまい、後にトラブルを生じる可能性があります。
そこで、特定商取引法は、
(1)販売価格(役務の対価)(送料についても表示が必要)
(2)代金(対価)の支払い時期、方法
(3)商品の引渡時期(権利の移転時期、役務の提供時期)
(4)商品(指定権利)の売買契約の申込みの撤回又は解除に関する事項(返品の特約がある場合はその旨含む。
(5)事業者の氏名(名称、住所、電話番号)
(6)事業者が法人であって、電子情報処理組織を利用する方法により広告をする場合には、当該販売業者等代表者または通信販売に関する業務の責任者の氏名
(7)申込みの有効期限があるときには、その期限
(8)販売価格、送料等以外に購入者等が負担すべき金銭があるときには、その内容およびその額
(9)商品に隠れた瑕疵がある場合に、販売業者の責任についての定めがあるときは、その内容
(10)いわゆるソフトウェアに関する取引である場合には、そのソフトウェアの動作環境
(11)商品の販売数量の制限等、特別な販売条件(役務提供条件)があるときには、その内容
(12)請求によりカタログ等を別途送付する場合、それが有料であるときには、その金額
(13)電子メールによる商業広告を送る場合には、事業者の電子メールアドレス
引用先:特定商取引ガイド
を広告に表示する事項として定めています。
もっとも、当該広告に、請求により、一定の事項を記載した書面を遅滞なく交付し、又はこれらの事項を記録した電磁的記録を遅滞なく提供する旨の表示をする場合には、必要表示事項の一部を省略することができます。(同法11条ただし書)
表記のサンプル例(テンプレート)
特定商取引法に基づく表記のサンプル例は以下のようなものになります。
特定商取引法に基づく表記
販売業者名 | ○○株式会社 |
代表責任者名 | 甲野太郎 |
所在地 | 〒○○○―○○○○ 東京都○○区○○ ○丁目○番○号 |
電話番号 | 03-○○○○―○○○○ |
電話受付時間 | 9:00~18:00 |
メールアドレス | ******@*****.co.jp |
ホームページURL | http://www.*******.co.jp |
販売価格 | 各商品ページをご参照ください。 |
商品代金以外の必要料金 | 消費税 送料(全国一律630円。商品5,000円以上の購入で送料無料。) 振込の場合、振込手数料、コンビニ決済の場合、コンビニ決済手数料 |
お届け時期 | 入金確認後、直ちに商品を発送いたします。 |
お支払方法 | 銀行振込、クレジットカード、コンビニ決済 |
お申込みの有効期限 | 7日以内にお願いいたします。 7日間入金がない場合は、キャンセルとさせていただきます。 |
返品・交換・キャンセル等 | 商品発送後の返品・返却等はお受けいたしかねます。 商品が不良の場合のみ交換いたします。キャンセルは注文後24時間以内に限り受付いたします。 コンビニ決済を利用された場合、コンビニ店頭での返金はいたしません。 |
返品期限 | 商品出荷より7日以内にご連絡下さい。 |
返品送料 | 不良品の場合は弊社が負担いたします。 それ以外はお客様のご負担となります。 |
個人で通販を行う場合の表記
個人が通信販売を行う場合に、特定商取引法に基づく表記として個人の住所を載せることになる場合が多いでしょう。
しかし、そこが生活の拠点である自宅住所の場合は個人情報を公開することになるとして抵抗がある方も少なくありません。
そのような場合に、仮の住所、いわゆるバーチャルオフィスの住所を記載することができるのでしょうか。
この点について、バーチャルオフィスの賃貸業を営む会社からのバーチャルオフィスの適法性についての質問に対する回答として消費者庁があくまで個別的な事案に対するものとしながら回答を出しています。
これによれば、販売業者等が現に活動している住所以外の住所及び販売業者のものではない電話番号を記載している場合には、記載されている氏名、住所等が販売業者のものではない旨並びに、消費者からの請求により販売業者等の氏名又は名称、販売業者等の電話番号を記載した書面を遅滞なく交付し、またはこれらを記録した電磁的記録を遅滞なく提供する旨を表示する必要があるとしています。
さらに、実際に請求があった場合に「遅滞なく」書面または電磁的記録により省略された全ての事項を提供できるような措置を講じなくてはなりませんが、この措置を講じていた場合はバーチャルオフィスの住所の記載も違法とはならないものとしています。
Amazonで通販を行う場合の表記
Amazonに出品する場合に特定商取引法の規制はかかるのでしょうか。
Amazonの特定商取引法に基づく表示の説明ページでは以下のように説明されています。
「大口出品者には、購入者の信頼を確保するために、「特定商取引法に基づく表記」を義務付けております。また、小口出品者には、特定商取引法に基づく宣言が義務付けられます。販売業者に該当する場合(「営利の意思を持ち、反復・継続的に販売を行う場合」)は、特定商取引法の対象となり、追加項目の入力が必要になります。」 。
そして、この説明に引き続き、表示すべき各項目について詳細な説明を加えています。
1. 販売業者(正式名称)
・法人の場合は、登記されている名称
・個人の出品者の場合は、商号・屋号(但し、氏名とは別に商号等がある場合に限る)
2. 店舗責任者名(代表者、または当該表示に責任を有する担当者の氏名)
・氏名はフルネームで表示してください。
3. 店舗名
4. 住所(番地およびビル名等も明記してください)
・現に活動していない私書箱等の住所のみを表示することも認められません。
5. お問い合わせ先電話番号
6. 許認可情報(古物営業許可証など、該当する場合のみ)
・出品者の業務地住所が日本国内である場合は、必ず日本語で明記すること。
Amazonは誰でも気軽に出品者として参加することができますが、特定商取引法の規制が及ぶことについて注意を促し、法に則った取引ができるように配慮されているのです。
まとめ
これまで見てきたように特定商取引法に基づく表記については意外と細かい規制となっています。
漫然と表記していたのでは、特定商取引法に違反する可能性があります。
消費者が安心して取引できるような体制が整っていることこそがインターネットでの通信販売をますます拡大させていくことにもなります。
ネットショップを経営する方は、特定商取引法についてしっかり学んでいきましょう。
コメント