むくみがかかわる表現の薬機法規制について説明します。
「むくみ改善」「むくみ解消」などの表現は問題なく使えるのでしょうか。NGとなる場合の言い換え表現にはどのようなものがあるのでしょうか。
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むくみとは?
むくみとは、体内の余分な水分が皮下組織にたまり、手足や顔などが腫れたように膨らむ状態を意味します。
長時間の立ち仕事や塩分の摂りすぎ、血行不良などが原因で起こります。
薬機法とは?
薬機法は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器、再生医療等製品の製造・販売・広告などを規制する法律です。効果効能の表現可能範囲を厳しく定めており、消費者の安全を守ることを目的としています。
薬機法は略称で正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」です。
むくみと化粧品広告
化粧品の広告では、「むくみ解消」「むくみ改善」などのむくみに関する広告表現はNGです。
化粧品が表現できる効能効果の範囲は56個に定められており、むくみに関する表現はその範囲を逸脱しています。
ただ、ボディクリームなどで消費者自身のマッサージにより、むくみケアをうたうことは可能です。
例えば、「ボディクリームを使ったセルフマッサージで、むくみケア」など。
化粧品の効能効果56個は以下のとおりです。
頭皮や毛髪
(1)頭皮、毛髪を清浄にする。
(2)香りにより毛髪、頭皮の不快臭を抑える。
(3)頭皮、毛髪をすこやかに保つ。
(4)毛髪にはり、こしを与える。
(5)頭皮、毛髪にうるおいを与える。
(6)頭皮、毛髪のうるおいを保つ。
(7)毛髪をしなやかにする。
(8)クシどおりをよくする。
(9)毛髪のつやを保つ。
(10)毛髪につやを与える。
(11)フケ、カユミがとれる。
(12)フケ、カユミを抑える。
(13)毛髪の水分、油分を補い保つ。
(14)裂毛、切毛、枝毛を防ぐ。
(15)髪型を整え、保持する。
(16)毛髪の帯電を防止する。
皮膚や肌
(17)(汚れをおとすことにより)皮膚を清浄にする。
(18)(洗浄により)ニキビ、アセモを防ぐ(洗顔料)。
(19)肌を整える。
(20)肌のキメを整える。
(21)皮膚をすこやかに保つ。
(22)肌荒れを防ぐ。
(23)肌をひきしめる。
(24)皮膚にうるおいを与える。
(25)皮膚の水分、油分を補い保つ。
(26)皮膚の柔軟性を保つ。
(27)皮膚を保護する。
(28)皮膚の乾燥を防ぐ。
(29)肌を柔らげる。
(30)肌にはりを与える。
(31)肌にツヤを与える。
(32)肌を滑らかにする。
(33)ひげを剃りやすくする。
(34)ひげそり後の肌を整える。
(35)あせもを防ぐ(打粉)。
(36)日やけを防ぐ。
(37)日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ。
芳香
(38)芳香を与える。
爪
(39)爪を保護する。
(40)爪をすこやかに保つ。
(41)爪にうるおいを与える。
口唇
(42)口唇の荒れを防ぐ。
(43)口唇のキメを整える。
(44)口唇にうるおいを与える。
(45)口唇をすこやかにする。
(46)口唇を保護する。口唇の乾燥を防ぐ。
(47)口唇の乾燥によるカサツキを防ぐ。
(48)口唇を滑らかにする。
(49)ムシ歯を防ぐ(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
歯・口の中
(50)歯を白くする(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
(51)歯垢を除去する(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
(52)口中を浄化する(歯みがき類)。
(53)口臭を防ぐ(歯みがき類)。
(54)歯のやにを取る(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
(55)歯石の沈着を防ぐ(使用時にブラッシングを行う歯みがき類)。
皮膚
(56)乾燥による小ジワを目立たなくする。
注1)例えば、「補い保つ」は「補う」あるいは「保つ」との効能でも可とする。
注2)「皮膚」と「肌」の使い分けは可とする。
注3)( )内は、効能には含めないが、使用形態から考慮して、限定するものである。
むくみと健康食品・サプリ広告
健康食品やサプリメントの広告では、「むくみ解消」「むくみ改善」などのむくみに関する効果を表現することはNGです。
健康食品やサプリメントは薬機法の規制対象外ですが、「むくみ解消」などの表現は医薬品的効能効果となり、それらの表現を行うと、薬機法の規制が及びます。
むくみと機能性表示食品
機能性表示食品の届出が行われている健康食品やサプリメントであれば、むくみに関する表現が可能です。
これまでに届出が行われている商品の表現としては以下のようなものがあります。
「脚のむくみが気になる健常な女性の夕方の脚のむくみ(病的ではない一過性のむくみ)を軽減する」
「一時的に自覚する顔のむくみ感や、脚(ふくらはぎ)のむくみを軽減する」
むくみの薬機法OK/NG表現・言い換え表現
むくみに関する薬機法のNG表現と言い換え後のOK表現を例示します。
NG表現 | OK表現 | 解説 |
むくみを改善する | スッキリとした印象へ導く | 「改善」は医薬品的効能効果になり、NG |
むくみを取る | ハリのある肌印象に | 「取る」も同様にNG |
むくみを解消 | めぐりをサポート | 曖昧で抽象的な表現に置き換える |
むくみを予防する | 美しいラインをキープ | 予防も医薬品的効能効果となるためNG |
水分を排出する | 水分バランスに配慮 | 「排出」は身体の組織機能の一般的増強増進になり、NG |
老廃物を流す | 健やかなめぐりに着目 | 老廃物の排出やデトックスはNG |
むくみ体質を改善 | スッキリを目指す毎日のケアに | 「体質改善」はNG |
下半身のむくみを抑える | 美脚を目指すサポートケア | 「むくみを抑える」も医薬品的効能効果になり、NG |
立ち仕事でパンパンになった足に | 立ち仕事後のリフレッシュタイムに | 「パンパン」はむくみと捉えられるためNG |
朝の顔のむくみに効く | 朝の肌をすっきりと整えるスキンケア | 「効く」は明確な効能効果表現でNG |
むくみをなくす | すっきりとした印象を与える | 「なくす」も医薬品的効能効果となり、NG |
血行を促進してむくみを流す | うるおいとハリに着目したアプローチ | 血行促進は医薬品的効能効果となり、NG |
薬機法違反した場合の罰則
薬機法第66条の「誇大広告等」や薬機法第68条の「承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止」に違反した場合の罰則は、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、またはこれを併科です。
そして、措置命令や課徴金納付命令のおそれもあります。
また、法的責任だけでなく、SNSで炎上したり、ニュースになって会社の信頼性が長期に渡って損なわれたりするおそれがあります。
措置命令
措置命令は、薬機法第72条の5、に定められており、違反広告の中止や再発防止などを求められます。
<対象>
・第66条第1項
・第68条
<具体例>
・違反したことを関係者及び消費者に周知徹底すること
・再発防止策を講ずること
・その違反行為を将来繰り返さないこと
など
課徴金納付命令
課徴金納付命令は、薬機法第75条の5の2、に定められており、課徴金の納付が求められます。
<対象>
・第66条第1項
<課徴金の金額>
・課徴金対象期間の商品売上の4.5%(最長3年間)
・225万円未満の場合は課徴金なし
<減額>
・同一事案に対し、景品表示法の課徴金納付命令がある場合
⇒3%を減額して1.5%・自ら報告した場合は、50%相当額を減額
薬機法違反しないための対策4つ
①効能効果を直接言わない
「むくみを改善」「むくみを解消する」などの表現は、身体の機能に作用する医薬品的な効能効果の表現とみなされ、薬機法違反となります。
そのため、「スッキリとした印象へ」などの効能効果を直接言わない表現を使って、印象の変化を訴求しましょう。医薬品的な言い回しは避けるよう注意してください。
②薬機法分類に応じた表現にする
むくみに関する表現は、商品が医薬品か、化粧品か、食品かなどでも可能な範囲が異なります。
たとえば医薬品なら「むくみを改善する」と表現できますが、化粧品や食品ではNGです。
まず商品の薬機法分類を確認し、その分類に応じて認められる範囲内で表現を行うことが重要です。
機能性表示食品など、食品の中でもむくみ表現が可能なものもあるため、詳細な分類を確認することが大切です。
③体験談や口コミにも注意する
広告文章内の体験談や、PRでインフルエンサーなどに依頼した投稿に「むくみがなくなった」などとむくみに関する効能効果の表現があれば、薬機法の規制対象になります。
また、自社ECサイトの口コミなどで表現されている場合でも規制が入るため、注意が必要です。
どこまでが規制対象になるのか確認し、必ず自社スタッフがチェックを行うようにしましょう。
④専門家にチェックを依頼する
薬機法は文言のニュアンスや文脈によって違反になるかどうかが変わる繊細な法律です。自己判断だけでは危険な場合もあります。
外部の専門家による薬事チェックサービスを利用して事前確認する体制も検討しましょう。
特に商品の広告・チラシ・SNS投稿など、日々のマーケティング活動で行う販売促進活動では違反リスクが高いため、専門家の指導を受けつつ、違反広告を未然に防ぐことが大切です。
まとめ
むくみに関する広告表現は、薬機法の規制がかかわります。どんな商品ならどこまで表現してよいのか正確に確認し、違反広告を行わないように体制を整えましょう。
現場担当者の判断だけに任せていると違反行為が起こる可能性が高くなります。チェック体制や教育体制を整え、防ぐようにしましょう。
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