お茶は私たち日本人にとっては欠かせない飲み物です。ペットボトルのお茶を毎日欠かさずに購入する人も少なくないでしょう。スーパーマーケットやコンビニエンスストアで、トクホマークのついたお茶を見かけたことはありませんか。
トクホマークがついている分少し値段は高いですが、健康にいいのなら買ってみようと手に取ってみたことのある方も多いでしょう。
しかし、その表示をじっくり見て、効能をしっかり理解してトクホマークのついたお茶を購入した人はそれほど多くはないのではないでしょうか。
今回はトクホマークのついたお茶について、そもそもトクホとはどのような制度なのか、また商品それぞれにどのような特徴があるのか等を学んでいきましょう。
トクホとは?
トクホとは、正式名称を「特定保健用食品」といいます。
特定保健用食品は、健康ブームのなか、消費者の混乱を防ぎ、適切な商品選びに資することを目的として平成3年に制度化されたもので、平成14年(2002年)8月2日に廃止された栄養改善法第12条第1項又は同法第15条第1項に規定されていました。
特定保健用食品は、平成13年4月の保健機能食品制度創設に伴い、さらなる安全性や有効性を確保する観点から、食品衛生法施行規則第5条に基づく保健機能食品の一つとしても位置付けられました。
身体の生理学的機能などに影響を与える成分を、保健機能成分といいますが、トクホの商品はこれを含みます。
特定保健用食品は、健康増進法第26条第1項の許可又は同法第29条第1項の承認を受けて、食生活において特定の保健の目的で摂取をする者に対し、その摂取により当該保健の目的が期待できる旨すなわち「特定の保健の用途」に適する旨が表示されているのです。
「特定の保健の用途の表示」に該当するかどうかは、
①身体の生理機能、組織機能の良好な維持に適する又は改善に役立つか、
②容易に測定可能な体調の指標の維持に適する又は改善に役立つか、
③身体の状態を本人が自覚でき、一時的であって継続的、慢性的でない体調の変化の改善に役立つか、
④疾病リスクの低減に資する(医学的、栄養学的に広く確立されているものに限る。)
の条件に合致するかどうかにより判断されます。
もっとも、トクホはあくまで食品ですので、病気の治療に資するといった医薬品としての表示をすることは許されません。
許可を受けるに際しては、事業者が国に科学的根拠を示して、有効性や安全性の審査を受けていますので、その機能があることについて、いわば国のお墨付きがあるといえるでしょう。
なお、特定保健用食品のうち、その許可等に際し要求している科学的根拠のレベル には届かないものの、一定の有効性が確認される食品について、その摂取により特定の保健の目的が期待できる旨について限定的な科学的根拠である旨の表示をすることを条件として許可等を受けたものは、条件付き特定保健用食品といいます。
特定の保健の目的として表示されるものとして「お腹の調子を整える食品」「体脂肪がつきにくい食品」などがあります。特定保健用食品にはトクホマークがついていますので、このような表示とトクホマークに見覚えがある方も多いのではないでしょうか。
それでは実際にトクホのお茶にはどのようなものがあるのか見ていきましょう。
ヘルシア緑茶aの効果と飲み方
引用先:花王ヘルシア緑茶ホームページ
(1)効果
ヘルシア緑茶aは花王株式会社の商品で2016年7月14日にこれまでの「ヘルシア緑茶」を刷新したものです。
これは、茶カテキン研究の新知見の成果から、新しいメカニズムとして脂肪の“分解”と“消費”を促す酵素の活性を高めることを発見したことに基づくもので、トクホでは初めてとなる「本品は、脂肪の分解と消費に働く酵素の活性を高める茶カテキンを豊富に含んでおり、脂肪を代謝する力を高め、エネルギーとして脂肪を消費し、体脂肪を減らすのを助けるので、体脂肪が気になる方に適しています。」との許可表示を取得したのです。
花王株式会社は、被験者を健常成人14名とした茶カテキン飲料(1本当たり茶カテキン570mg含有)または対照飲料(1本当たり茶カテキン0mg含有)を1日1本飲用する臨床試験において、8週間摂取後に呼気を分析した結果、茶カテキン含有の飲料を摂取したグループの脂肪の代謝量が140%となると示しました。
また、被験者を軽度肥満(平均BMI26、平均腹部全脂肪面積320cm2)の健常男女80名とする臨床試験で、茶カテキン飲料(1本当たり茶カテキン588mg含有)または対照飲料(1本当たり茶カテキン126mg含有)を1日1本12週間継続飲用した場合に茶カテキンを摂取したグループは腹部CT画像からの計測で腹部全脂肪面積が低減することを示しました。
(2)飲み方
ヘルシア緑茶aの特長は、普段飲むお茶と同じように、1日の生活の中で自由に飲んでいいことにあります。ヘルシア緑茶aの飲料に含まれる茶カテキンは、継続的な摂取により、脂肪を代謝する力を高め、体脂肪を減らすのを助ける働きがあることが明らかにされているので、1日当たりの摂取目安量(350ml)を毎日続けて飲むことが大切で、食事時や運動の前後といった特定のタイミングで飲まなくてはならないということがないのです。
ヘルシアの継続飲用により、体の脂肪を代謝する力を高めることで、食事の脂肪消費量や、生活行動での脂肪消費量が高まることが確認されていますが、運動をするとより多くのエネルギーを体が消費するので、より効率的に脂肪対策が期待できるといえます。
もっとも、ヘルシア緑茶aは食品ですから、多量に摂取することによって病気が治ったり、より健康が増進するものではないことに注意が必要です。
黒烏龍茶の効果と飲み方
(1)効果
黒烏龍茶はサントリーが発売するトクホのお茶です。
茶葉を半発酵させる過程で、カテキン類が結合した、ウーロン茶特有の成分であるウーロン茶重合ポリフェノー(Oolong Tea Polymerized Polyphenols。略してOTPPとされることもあります。)が含まれているのですが、この成分に脂肪の吸収を抑えるはたらきがあります。
許可表示は、食事から摂取した脂肪の吸収を抑えて排出を増加させるので、食後の血中中性脂肪の上昇を抑えるとともに、体に脂肪がつきにくいのが特徴です。脂肪の多い食事を摂りがちな方、血中中性脂肪が高めの方、体脂肪が気になる方の食生活改善に役立ちます。
食事でとった脂肪は、小腸でリパーゼという酵素によって吸収しやすいように分解されて、体内に吸収されます。それが中性脂肪になり、血液中の中性脂肪が上昇するのですが、黒烏龍茶に含まれるウーロン茶重合ポリフェノールは、リパーゼのはたらきを邪魔することによって、脂肪の吸収が抑えられて、余分な脂肪を体外に排出します。 そして、結果、血液中の中性脂肪の上昇も抑制するのです。
サントリーの中性脂肪値100-250mg/dlの成人男女20名を治験者とする臨床試験では、高脂肪食とともに黒烏龍茶を飲用し、飲用直前および飲用後の血清脂肪濃度の推移を測定したところ、黒烏龍茶を摂取したグループの中性脂肪の上昇が約20%抑えられていることが明らかになりました。
(2)飲み方
脂肪の多い食事を摂りがちな人、血中中性脂肪が高めの人は食事の際に1回350mlを目安に体脂肪が気になる人は、食事の際に1日2回(1回350ml)を目安に摂取します。先ほど説明したようにウーロン茶重合ポリフェノールは、リパーゼのはたらきを邪魔することによって、脂肪の吸収が抑え、余分な脂肪を体外に排出するものなので、食事といっしょに黒烏龍茶を飲む必要があるのです。
食事と一緒に十六茶wの効果と飲み方
引用先:アサヒ飲料十六茶ホームページ
(1)効果
食事と一緒に十六茶Wは、2016年4月15日から全国で新発売されたアサヒ飲料株式会社の商品です。難消化性デキストリンが保健機能成分となっています。難消化性デキストリンとは、トウモロコシのデンプンを培焼し、アミラーゼで加水分解し、その中の難消化性成分を取り出して調製した水溶性の食物繊維のことです。
現代人に不足しがちな食物繊維を補う目的で作られた食品素材です。食事から摂った炭水化物(糖質)は、体内でブドウ糖に分解され、その後、小腸で吸収されますが、難消化性デキストリンは糖の吸収スピードをゆるやかにすることが分かっています。また、難消化性デキストリンは、食事とともに摂取すると、食事に含まれる脂質の吸収を遅延させ、食後中性脂肪の上昇を緩やかにする働きがあることが分かっています。
許可表示は、「食事と一緒に十六茶W(ダブル)は、食物繊維(難消化性デキストリン)のはたらきにより、食後の糖の吸収と食後の血中中性脂肪の上昇をおだやかにするので、食後の血糖値が気になる方や血中中性脂肪が高めで脂肪の多い食事を摂りがちな方におすすめです」となっています。
トクホの商品の中では、トクホ茶史上初のカフェインゼロのトクホのお茶で、苦味・渋味の強い味ではなく、食事と一緒に飲みやすい商品開発とされています。
(2)飲み方
1日の摂取目安量は、1日1回250mlが目安とされています。先ほど述べた働きから、食事と同時に摂取するとされています。なお、摂取する上の注意事項として、「本品を多く摂取することにより、疾病が治癒するものではありません。治療中の方は、医師に相談の上お召し上がりください。飲すぎ、あるいは体質・体調により、 おなかがゆるくなることがあります。」との表示が求められています。
伊右衛門特茶の効果と飲み方
(1)効果
伊右衛門特茶は、サントリーの商品です。保健機能成分はケルセチン配糖体です。ケルセチン配糖体は、ケルセチンは野菜や果物に最も広く存在するポリフェノールであり、野菜や玉ねぎなどに多く含まれます。伊右衛門特茶は、エンジュという花のつぼみ由来のケルセチン配糖体をしようしており、1本(500ml)あたり玉ねぎ約3個分のケルセチン配糖体が含まれています。
ケルセチン配糖体は、脂肪分解酵素の働きを活性化させ、脂肪の分解能力を高める働きがあるので、体脂肪の燃焼効率が向上し、さらに消費しやすくなる機能があります。サントリーのBMIが25kg/ m2 以上30kg/ m2 未満に属する年齢20歳以上65歳以下の172名を対象にした臨床試験では、ケルセチン配糖体110mgを配合した緑茶飲料とケルセチン配糖体を配合しない緑茶飲料をそれぞれ摂取させたところ、ケルセチン配糖体を配合した緑茶飲料を摂取したグループに、8週目以降腹部脂肪面積の低減が認められました。
この商品の許可表示は、「脂肪分解酵素を活性化させるケルセチン配糖体の働きにより、体脂肪を減らすのを助けるので、体脂肪が気になる方に適しています。」になります。
(2)飲み方
摂取目安量は、1日500 mlです。脂肪分解酵素を活性化させる働きをもつものなので、食事と一緒に摂取する必要はなく、摂取するタイミングに制限はありません。利用上の注意事項として、「多量摂取により疾病が治癒したり、より健康が増進するものではありません」と表示することが義務付けられています。
各お茶の違いと比較
これまで、見てきた4商品は、すべて脂肪対策を目的としていますが、身体に機能する保険機能成分がすべて異なることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
そしてその機能は大きく分けると、「食事に含まれる脂肪に働きかけるもの」と、「体の脂肪に働きかけるもの」に分かれることになります。
食事と同時に摂取することが求められている「黒烏龍茶」と「食事と一緒に十六茶W」は前者で、摂取するタイミングを問わない「ヘルシア緑茶a」と「伊右衛門特茶」は後者です。
これらの成分と機能の違いを意識して、自分のライフスタイルにあった商品を選ぶことが消費者に求められているといえるでしょう。
まとめ
トクホの制度と、最近出荷数が増加しているトクホのお茶について理解を深めていただけたでしょうか。同じように痩身効果があるだろうと何となく商品を選んでしまえば、摂取方法などの情報を意識しないまま誤った方法で摂取することで、十分な効果を得られないこともあります。
トクホは国からその商品の機能について保証があるのですから、十分な情報提供がされて販売されています。ぜひ、その情報を意識して、意義のある商品選びをして下さい。
また、望ましい食生活を実現するためには、主食、主菜、副菜を基本に、普段からバランスのとれた食事を摂ることが最も大切です。そこで、トクホのパッケージには「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。」と表示されています。
トクホの商品を、バランスの取れた食事の中で使うことが大切であり、トクホの商品さえ摂取すれば健康が維持されるわけではないことを忘れないようにし、賢くトクホの商品と付き合うことが大切なのです。
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