2017年医療法改正の内容7ポイントを解説!美容クリニック広告に大影響!?

あなたは医療法という法律を知っていますか。
医療法は、昭和23年7月30日に公布された法律で、その目的は、「医療を受ける者による医療に関する適切な選択を支援するために必要な事項、医療の安全を確保するために必要な事項、病院、診療所及び助産所の開設及び管理に関し必要な事項並びにこれらの施設の整備並びに医療提供施設相互間の機能の分担及び業務の連携を推進するために必要な事項を定めること等により、医療を受ける者の利益の保護及び良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を図り、もつて国民の健康の保持に寄与すること」(同法1条)であり、日本の医療提供体制の根幹をなすものです。

医療法は、病院、診療所、助産所の定義や、開設や管理に必要事項、施設の整備推進のための必要事項、国や地方自治体の責任、医療者の責任などを定めています。

この医療法は、時代の変化に応じて改正を重ねているのですが、平成29年6月7日、参議院本会議で改正医療法が全会一致で可決、成立しました。これを第8次医療法改正と呼びます。

今回は、第8次医療法改正について学んでいきましょう。

目次

2017年医療法改正の概要

第8次医療法改正は、社会保障審議会医療部会(部会長:永井良三・自治医科大学学長)が、平成29年1月18日の会議で、病院長の権限の明確化や強化をはじめ、特定機能病院のガバナンス改革などを盛り込んだ第8次医療法改正等案を了承し、厚生労働省は常国会に改正法案を提出するという流れで成立しました。

改正の目的は、安全で適切な医療提供の確保を推進するため、検体検査の精度の確保、特定機能病院の管理及び運営に関する体制の強化、医療に関する広告規制の見直し、持分の定めのない医療法人への移行計画認定制度の延長等の措置を講ずることです。

そして、前述のように、平成29年6月7日に成立し、順次施行されています。

2017年医療法改正の内容7つのポイント

2017年の第8次医療法改正のポイントは、
①遺伝子関連検査等の品質・精度の確保
②特定機能病院のガバナンス改革
③持分なし医療法人への移行促進策の延長
④医療機関を開設する者に対する監督規定の整備
⑤妊産婦の異状の対応等に関する説明の義務化
⑥看護師に対する行政処分に関する調査規定の創設
⑦医療機関のウェブサイト等の取扱い
です。

この7つのポイントを個別に見ていきましょう。

①遺伝子関連検査等の品質・精度の確保

遺伝子関連検査等の品質・精度の確保」については、平成29年1月18日の会議までは医療部会の議論で合意が得られていなかったところを、厚労省が対応策を改めて示したことで、了承を得たものです。

これまで、医療機関における検体検査には、品質・精度管理の基準について法律上の規定がないなどの問題があり、さらに、遺伝子関連検査の精度管理については、ゲノム医療タスクフォースにおいても指摘を受けているという実情があり、この点の整備が求められていました。一方、医療部会の議論では、「ゲノム医療で日本が諸外国と同水準の体制整備するための対応であるのに、なぜ検体検査すべてに規制を設けるのか」との反対があったのです。

この反対に対し、厚労省は、法改正で規定を設けるものの、具体的な基準の設定において配慮する方針を示し、厚労科学研究の研究班の成果を踏まえ、医療機関の現状を踏まえ、医療機関の特性、実施されている検査の内容等に応じた基準とすることとし、今回の改正にこぎ着けたのです。

このような経過で、改正法は病院、診療所又は助産所(以下「病院等」という。)の管理者は、当該病院等において、臨床検査技師等に関する法律(昭和33年法律第76号)第2条に規定する検体検査(以下「検体検査」という。)の業務を行う場合は、検体検査の業務を行う施設の構造設備、管理組織、検体検査の精度の確保の方法その他の事項を検体検査の業務の適正な実施に必要なものとして厚生労働省令で定める基準に適合させなければならないものとすること(第15条の2)等規定されました。

②特定機能病院のガバナンス改革

東京女子医科大学病院及び群馬大学医学部附属病院において医療安全に関する重大事案(死亡事案)が発生したことを受け、特定機能病院のカバナンス改革が改正案として検討され、特定機能病院の医療安全管理体制の確保を図ることが検討されました。

しかし、平成29年1月18日の会議までは、すべての医療機関について、「管理者が管理運営権限を保有する」ことを医療法で明確化するという案が出されたことにより、特定機能病院に対する見直しの検討であったのに、すべての医療機関に対する規定が提案されたとして反対意見が出ていました。

これについては、特定機能病院に限って、「管理者が管理運営業務を遂行するために必要な権限を明確化する」とし、今回の改正の内容となりました。

具体的には、特定機能病院と称することについての厚生労働大臣の承認を受ける要件に、医療の高度の安全を確保する能力を有することを追加したり(第4条の2第1項)、 特定機能病院の開設者に、当該開設者と厚生労働省令で定める特別の関係がある者以外の者を構成員に含む管理者となる者を選考するための合議体を設置し、その審査の結果を踏まえて、特定機能病院の管理及び運営に関する業務の遂行に関し必要な能力及び経験を有する者を当該特定機能病院の管理者として選任する義務を課しました(第10条の2関係)。また、この特定機能病院の管理者が行わなければならない事項には、医療の高度の安全を確保することが追加されています。

そのほかにも、組織について厳しい規制が追加されています。

③持分なし医療法人への移行促進策の延長

財産を持分割合に応じて出資者へ分配できる医療法人を、「持分あり医療法人」といいます。持分あり医療法人には、出資者が亡くなり、相続の話になったときに、相続税支払いのために法人に対して払戻請求が行われることがあり、法人の経営が不安定になるなどの問題があります。

そこで、2006年の医療法改正以降、持分あり医療法人は、新設を認めないこととし、「持分なし医療法人」への移行を促進してきました。

具体的には、「持分あり医療法人」から「持分なし医療法人」への移行計画を国が認定する制度を設け、相続税猶予等の税制措置を実施したのです。

しかし、現状でも医療法人のうち、約8割は「持ち分あり」であり、相続税猶予等の税制措置を3年間延長するほか、移行促進策の対象要件を緩和しました。この認定期間が、2017年9月までとなっていること延長が必要であり、今回の改正法で延長がされました。

④医療機関を開設する者に対する監督規定の整備

病院等(病院、診療所又は助産所)を開設する主体には色々なケースがあります。
開設主体が医療法人である場合には、医療法が開設者への立入検査等を規定していますので、これを通じて法人の運営に対する監督を行うことができます。

一方で、医療法人以外の病院等を開設する法人(特に一般社団法人・一般財団法人等)は登記のみで設立できるうえ、これらの法人を監督する行政庁がなく、運営について、医療法による規制が及ばないため、開設者に対する指導が十分できていないという課題がありました。

そこで、都道府県知事等に、これらの法人についても監督し、必要な措置をとる権限を与えました。

具体的には、都道府県知事、保健所設置市長又は特別区長(以下「都道府県知事等」という。)は、病院等の業務が法令若しくは法令に基づく処分に違反している疑いがあり、又はその運営が著しく適正を欠く疑いがあると認めるときは、医療法の施行に必要な限度において、当該職員に、当該病院等の開設者の事務所その他当該病院等の運営に関係のある場所に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させることができるものとし(第25条第2項)、病院等の業務が法令若しくは法令に基づく処分に違反し、又はその運営が著しく適正を欠くと認めるときは、医療法の施行に必要な限度において、当該病院等の開設者に対し、期限を定めて、必要な措置をとるべきことを命ずることができる(第24条の2第1項)ものとしました。

そして、病院等の開設者が上記措置命令に従わないときは、都道府県知事等は、当該開設者に対し、期間を定めて、その開設する病院等の業務の全部又は一部の停止を命ずることができるものとしました。(第24条の2第2項)

⑤妊産婦の異状の対応等に関する説明の義務化

これまでは、妊婦の分べんにおける急変時に、助産所から医師・医療機関への連絡が不十分であったことにより、母児が死亡するケースが発生していました。

また、妊婦に対して妊娠中に起こり得る異常・合併症、医療機関との連携(転院、搬送の可能性)などの出産リスクに関する説明文書の作成が十分に行われていない現状がありました。

そこで、妊産婦の安全を確保するため、助産所の管理者に対して、「当該妊婦等の助産及び保健指導に関する方針、当該妊婦等の異常に対応する病院又は診療所の名称、住所及び連絡先等」について、担当助産師から妊産婦へ書面で説明することを義務付けるなどしました。

⑥看護師に対する行政処分に関する調査規定の創設

現在、看護師等を行政処分する場合に必要な事実関係の調査については、刑事罰が科せられた場合には、刑事判決を入手して調査しますが、事実関係を把握するための調査権限がないため、刑事判決がない場合には、任意協力を得たり、都道府県からの報告を受けたりする方法で、これを確認するにとどまっており、任意の協力が得られなかった場合には、調査を行うことが困難な状況となっています。

医師・歯科医師については、過去に同様の問題点が指摘されたことにより、厚生労働大臣の調査権限規定が設けられた経緯があります。

今回の改正では、看護師等についても、行政処分をすべきか否かを調査する必要がある時に、厚生労働大臣が、関係者から当該事案についての報告を求めたり、病院等に立ち入り検査ができる調査権限規定を創設しました。

⑦医療機関のウェブサイト等の取扱い

医療法上、「広告」(同法6条の5以下)については、広告可能事項の限定されることになっています。

「広告」について、医療機関のホームページは、検索して閲覧するものであることから、バナー広告とリンクする場合等を除き、原則として広告とは扱われないと解釈されていました。

しかしこのことが、特に、美容医療等で行き過ぎた表示を横行させ、美容医療サービスに関する消費者トラブルの相談件数が増加しているという現状がありました。

そこで、今回の改正ではこの点をどのように取り扱うかが問題となりました。
行き過ぎた表示が問題となる一方で、ウェブサイト表示が医療法上の広告に該当するとなると、診療内容等の患者にとって参考となる情報が得られなくなる懸念があることから、今回の改正では、ウェブサイトの表示は、従来通り医療法上の広告規制の適用対象とはしないとの解釈は維持しつつも、医療機関ホームページなどに虚偽内容などがある場合に、広告と同様の是正命令(医療法6条の8第2項)や罰則(六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金(同法73条第3項))を課せるようにするもので是正命令を行えるようにしました。

具体的な規定は以下のとおりです。

・何人も、医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関して、文書その他いかなる方法によるを問わず、広告その他の医療を受ける者を誘引するための手段としての表示(以下単に「広告」という。)をする場合には、虚偽の広告をしてはならない。(第6条の5第1項)

・広告をする場合には、医療を受ける者による医療に関する適切な選択を阻害することがないよう、広告の内容及び方法が、次に掲げる基準その他厚生労働省令で定める基準に適合するものでなければならない。(第6条の5第2項)
① 他の病院又は診療所と比較して優良である旨の広告をしないこと。
② 誇大な広告をしないこと。
③ 公の秩序又は善良の風俗に反する内容の広告をしないこと。

・広告をする場合において、医師又は歯科医師である旨、診療科名等の第6条の5第3項各号に掲げる事項以外の広告がされても医療を受ける者による医療に関する適切な選択が阻害されるおそれが少ない場合として厚生労働省令で定める場合を除いては、同項各号に掲げる事項以外の広告をしてはならないものとする。(第6条の5第3項)

まとめ

今回の改正について、ポイントは理解していただけましたか。法人経営をしている方にとっては興味深い改正ですが、そのほかにも、助産師の方にとっても仕事の変化はあるでしょうし、看護師の方も、きちんと理解しておくべきところでしょう。また、医院のホームページがある方も関係があるところですので、ぜひ理解しておいてください。

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この記事を書いた人

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コメント

コメント一覧 (2件)

  • 妊産婦の不安を少しでも軽くしてあげてほしいです。私は5人の出産を経験しましたが、その度に不安でした。出産は命がけの大仕事なんです。周りのサポートが絶対に必要です。

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