いまや経営者にとって欠かせないツールのひとつにメルマガ(メールマガジン)があります。メルマガはコストをかけることなく即時に情報を配信することができ、顧客や支援者との接点を維持したり、宣伝をするのにとても有用な手段であるといえます。
しかし、このメルマガ配信が実は法に触れる可能性があるのをご存知ですか。
あなたのメルマガ配信は「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」(通称:特定電子メール法)という法律で規制されている可能性があります。
特定電子メール法を理解することはメルマガを配信するにあたって非常に重要なことです。今回は特定電子メール法について詳しくみていきましょう。
特定電子メール法とは
特定電子メール法は、正式な名称を「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」といいます。
この法律の目的は、「一時に多数の者に対してされる特定電子メールの送信等による電子メールの送受信上の支障を防止する必要性が生じていることにかんがみ、特定電子メールの送信の適正化のための措置等を定めることにより、電子メールの利用についての良好な環境の整備を図り、もって高度情報通信社会の健全な発展に寄与すること」と第1条に明記されています。
特定電子メール法及び同法律施行規則は、携帯電話の普及・そして携帯電話でインターネットに接続できる環境が広がったことによる「迷惑メール」問題に対処するために、2002年7月1日に施行されたのです。
この法律が規制する「特定電子メール」とは、「営利を目的とする団体及び営業を営む場合における個人」である送信者が「自己又は他人の営業につき広告又は宣伝を行うための手段として送信する電子メール」をいいます。 (2条参照)
広告宣伝メールは原則として特定電子メール法の規制対象となると言ってよいでしょう。
同法は、より実効性のある規制をするために2005年、2008年に改正がされています。
特定電子メール法のガイドライン
特定電子メール法に関しては総務省が、特定電子メールの送信の適正化等を図ることを目的として、「特定電子メールの送信等に関するガイドライン」を2008年11月に策定し、運用しています。
総務省のホームページでは、広告・宣伝メールの送信を考える場合には、特定電子メール法に反しないようにガイドラインを一度確認することを推奨しています。
ガイドラインは43ページにわたるもので、
(1)適用範囲等
(2)オプトイン規制における同意
(3)オプトイン規制の例外
(4)オプトアウト
(5)表示義務
(6)措置命令
についての基本的な考え方や解釈について詳しく記載されています。
2008年特定電子メール法改正時のポイント
2008年に特定電子メール法が改正された際の主要な改正点としては(1)オプトイン方式の導入(2)罰則の強化(3)国際連携の推進が挙げられます。
(1)オプトイン方式導入
広告宣伝メールの送信にあたって、メール受信側の同意を取得することを必要とするのがオプトイン方式です。
そして、このオプトイン方式を実効的なものにするためにさまざまな義務が送信者に課せられることになりました。この点に関しては後述します。
(2)罰則の強化
法人に対する罰則がこれまでの100万円以下の罰金から、一部3000万円以下の罰金へと引き上げられました。
また、広告宣伝メールの送信を委託した者や、電子メール広告業務を拡大した者が行政命令の対象になるなど、規制対象も広がりました。
(3)国際連携の推進
海外から発信される迷惑メールに対応するために、外国の執行当局に対して情報提供が可能となりました。
オプトインにかんする規制
オプトイン方式を実効的なものにするための規制としては以下のようなものがあります。
(1)同意を証する記録の保存の義務化
広告宣伝メールの送信する際には、受信者の送信することについての同意が必要ですが、この同意を取得した状況を示す記録を保存しなくてはなりません。
保存の期間はその保存した同意を得た広告宣伝メールを最後に送信した日から1か月となります。
(2)表示義務
広告宣伝メールには必ず記載しなければならない義務的な表示事項があります。
送信者名(特定商取引上の販売者と異なる場合販売業者名)、送信者の住所、苦情、問い合わせ先、配信停止の通知が出来る通知先の記載などがこれにあたります。
(3)受信拒否があった場合の配信停止
広告宣伝メール送信についての同意があっても、受信拒否の通知(配信停止への要請)があった場合は、それ以降広告宣伝メールを送ることは許されません。
受信拒否の方法には配信メールに記載されている連絡先に受信を拒否する旨を連絡する方法や、URLで誘導された受信拒否のためのサイトに必要事項を入力する方法があります。
特定電子メール法の例外
もっとも、以上で述べたオプトイン方式には例外があり、受信者の同意が不要な場合があります。以下にその例外を挙げたいと思います。
(1)取引関係にある者への送信の場合
取引関係にある者に対しては、特定電子メールの送信にあたって同意は不要とされています。
これは、取引関係にあれば、受信者は特定電子メールの送信をある程度許容していると考えることができ、大きな弊害がないことに基づく例外といえます。
このような観点から考えると一度売買契約があっただけでは取引関係とは言えず、継続的な関係が必要であると考えられますが、今後の契約等の取引が予定されている場合には取引関係にあると判断されることもあるでしょう。
(2)名刺などの書面にメールアドレスが記載されている場合
メールアドレスが記載されている名刺を相手から受け取った場合などには、同意を求めずに特定電子メールを送信できます。
この場合も、名刺などを交付した相手は、そこに記載しメールアドレスに何らかの電子メールが送られてくることを許容していると考えられるから例外とされたのです。
(3)メールアドレスを公表している団体・営業を営む個人に送信する場合
会社や、営業を営む個人が、ホームページなどで電子メールアドレスを公表している場合、特定電子メールを送ることができます。
メールアドレスを公開している事業者に対し、営業活動の一環として事業者が電子メールを送信することは、事業者同士のやりとりとして商慣習上として許容されるものと考えられるからです。
ただし、メールアドレスの公表とあわせて、特定電子メールの送信は拒否する旨が表示されていれば、原則通り、同意なくして電子メールを送信することはできません。
違反するとどうなる?罰則・罰金
法の目的を達成するために特定電子メール法では罰則が定められています。以下に主要なものを挙げます。
まず、送信者情報を偽って特定電子メールを送信した場合には1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。(34条1項)法人の場合は行為者の他、法人に対して3000万円以下の罰金が課せられます。(37条1項)
また、架空電子メールあての送信で、電子メールの送受信上の支障を防止するために必要があると総務大臣が認めるときには総務大臣による命令が発せられます。そしてこれに従わないときには1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。
受信拒否者への送信、表示義務違反、同意のない者への送信には総務大臣および内閣総理大臣による命令が発せられますが、これに従わないときには1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。(7条、34条2項)
法人の場合は行為者の他、法人に対して3000万円以下の罰金が課せられます。(37条1項)
同意の記録義務違反については、総務大臣および内閣総理大臣の命令が発せられ、これに従わない場合は100万円以下の罰金に処せられることになります。(7条、35条1項)
この他にも法律規定する届出の義務に違反した場合や、報告義務に違反した場合にも罰則が設けられています。
まとめ
特定電子メール法の規制や罰則が意外と厳しくて驚かれた方もいるでしょう。
迷惑メールには郵便のダイレクトメールと違った危険性や弊害があることは周知の事実です。このような問題に対処するために特定電子メール法が、厳しく規制をしているのです。
今日のビジネスに欠かせないメルマガだからこそ、これが原因で取り締まられることのないようにしっかり特定電子メール法の規制を理解して、適正なメルマガ配信をすることが必要なのです。
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