医療広告ガイドラインわかりやすく解説!限定解除・違反事例

医療広告ガイドラインわかりやすく解説!限定解除・違反事例

医療機関が広告を行うときは必ず確認しておきたいのが「医療広告ガイドライン」です。

医療広告ガイドラインの内容について詳しくわかりやすく解説します。

目次

医療広告ガイドラインとは?

医療広告ガイドラインとは、医療機関やクリニックが広告を行うときに守るべきルールを定めた指針で、厚生労働省が策定しています。

広告規制の趣旨として、医療広告ガイドラインの基本的な考え方は以下です。

①医療は人の生命・身体に関わるサービスであり、不当な広告により受け手側が誘引され、不適当なサービスを受けた場合の被害は、他の分野に比べ著しいこと。

②医療は極めて専門性の高いサービスであり、広告の受け手はその文言から提供される実際のサービスの質について事前に判断することが非常に困難であること。

医療広告とは?定義は?

医療広告は、患者の権利を守り、医療の質の維持向上を図るという目的で医療法の改正が行われ、規制が強化されました。

背景には、美容医療のトラブルが増加していることや、不正確な情報により患者が適切に判断することが難しいことなどの事情がありました。

医療広告の定義ですが、次の2つの要件を満たす場合に規制対象となります。

①患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性)

②医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院若しくは診療所の名称が特定可能であること(特定性)

※要件の3つ目にあった「③一般人が認知できる状態にあること(認知性)」は2017年の医療法改正で除外されました。

医療広告の対象になるもの

様々な媒体が対象になります。

・Webサイト
・Web広告
・テレビ
・動画(Youtubeなど)
・SNS
・メールマガジン
・チラシ、パンフレット
・新聞、雑誌、その他出版物
・ポスター、看板
・不特定多数への説明会、相談会、キャッチセールス
など

※誘引性・特定性を満たす場合です。

医療広告の対象にならないもの

・学術論文、学術発表
・新聞や雑誌等での記事(※記事風広告は対象になる)
・患者が自ら掲載する体験談、手記
・院内の掲示やパンフレット
・職員募集、求人の広告

ホームページも規制対象?

ホームページは以前は規制対象外でしたが、2018年6月の医療法改正により、広告規制の対象になりました。

インターネットの発達を考えると、当然と言えるでしょう。

医療広告の対象者

法律で「何人も」と書かれてあり、医師・歯科医師・病院等の医療機関だけではなく、マスコミ、広告代理店、アフィリエイター、患者などのすべての人が、医療広告の対象者です。

医療法第6条の5第1項
何人も、医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関して、文書その他いかなる方法によるを問わず、広告その他の医療を受ける者を誘引するための手段としての表示をする場合には、虚偽の広告をしてはならない。

広告可能事項

広告可能事項は、医療法6条の5第3項に書かれてあります。

(1)医師又は歯科医師である旨

(2)診療科名
‐政令に定められた診療科名と厚生労働大臣の許可を得た診療科名が可能

(3)病院又は診療所の名称、電話番号及び所在の場所を表示する事項並びに病院又は診療所の管理者の氏名

(4)診療日若しくは診療時間又は予約による診療の実施の有無

(5)法令の規定に基づき一定の医療を担うものとして指定を受けた病院若しくは診療所又は医師若しくは歯科医師である場合には、その旨

(6)第5条の2第1項の認定を受けた医師(医師少数区域経験認定医師)である場合には、その旨

(7)地域医療連携推進法人の参加病院等である場合には、その旨

(8)入院設備の有無、第7条第2項に規定する病床の種別ごとの数、医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の従業者の員数その他の当該病院又は診療所における施設、設備又は従業者に関する事項

(9)当該病院又は診療所において診療に従事する医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療従事者の氏名、年齢、性別、役職、略歴その他のこれらの者に関する事項であつて医療を受ける者による医療に関する適切な選択に資するものとして厚生労働大臣が定めるもの

(10)患者又はその家族からの医療に関する相談に応ずるための措置、医療の安全を確保するための措置、個人情報の適正な取扱いを確保するための措置その他の当該病院又は診療所の管理又は運営に関する事項

(11)紹介をすることができる他の病院若しくは診療所又はその他の保健医療サービス若しくは福祉サービスを提供する者の名称、これらの者と当該病院又は診療所との間における施設、設備又は器具の共同利用の状況その他の当該病院又は診療所と保健医療サービス又は福祉サービスを提供する者との連携に関する事項

(12)診療録その他の診療に関する諸記録に係る情報の提供、第6条の4第3項に規定する書面の交付その他の当該病院又は診療所における医療に関する情報の提供に関する事項

(13)当該病院又は診療所において提供される医療の内容に関する事項
‐「検査、手術その他の治療の方法」と「提供される医療の内容」が可能

(14)当該病院又は診療所における患者の平均的な入院日数、平均的な外来患者又は入院患者の数その他の医療の提供の結果に関する事項であつて医療を受ける者による医療に関する適切な選択に資するものとして厚生労働大臣が定めるもの

(15)その他前各号に掲げる事項に準ずるものとして厚生労働大臣が定める事項

広告禁止事項

禁止の対象となる広告の内容について説明します。違反内容となる具体例についても紹介しています。

(1)虚偽広告

虚偽の内容には以下のように様々なものが考えられます。

表現例説明
絶対安全な手術です医学上ありえない。安全性の保証はNG。
どんなに難しい症例でも必ず成功します効果の保証はNG。
厚生労働省の認可した◯◯専門医専門医の資格認定は、学会が実施するもので、厚生労働省が認可した資格ではない。
加工・修正した術前術後の写真あたかも効果があるかのように見せるため加工・修正している場合は虚偽広告に該当。
一日で全ての治療が終了します治療後の定期的な処置等が必要な場合はNG。
◯%の満足度データの根拠(具体的な調査の方法等)を明確に提示していない場合はNG。

(2)比較優良広告

他の病院または診療所と比較して優良であることを示す広告は禁止されています。

例えば、「日本一」「No.1」「最高」等の最上級の表現その他優秀性について、著しく誤認を与える表現は、客観的な事実であったとしても、禁止される表現に該当します

また、著名人との関連性の強調は、患者等を不当に誘引するおそれがあることから、比較優良広告として取り扱われます。

<NG表現の具体例>
・「肝臓がんの治療では、日本有数の実績を有する病院です。」
・「当院は県内一の医師数を誇ります。」
・「本グループは全国に展開し、最高の医療を広く国民に提供しております。」
・「芸能プロダクションと提携しています」
・「著名人も◯◯医師を推薦しています」
・「著名人も当院で治療を受けています。」

(3)誇大広告

誇大広告は、必ずしも虚偽ではないが、事実を不当に誇張して表現したり、人を誤認させたりする広告を意味します。

表現例説明
知事の許可を取得した病院です!病院が都道府県知事の許可を得て開設することは、法における義務であり当然。あたかも特別な許可を得た病院であるかのような誤認を与えるのはNG。
医師数◯名(◯年◯月現在)その後の状況の変化で、医師数が大きく減少した場合は実態に即した人数に随時更新すべき。
顔面の◯◯術1カ所◯◯円(美容外科治療)大きく表示された値段は5カ所以上同時に実施したときの費用で、1カ所のみの場合は、倍近い費用がかかる場合、小さな文字で注釈が付されていたとしても、注釈を見落とすだろうと常識的判断から認識できる場合はNG理由。
◯◯学会認定医活動実態のない団体による認定はNG。
比較的安全な手術です何と比較して安全であるか不明
「◯◯の症状のある二人に一人が◯◯のリスクがあります」
「こんな症状が出ていれば命に関わりますので、今すぐ受診ください。」
科学的な根拠が乏しい情報であるにもかかわらず、リスクと強調し、受診へ誘導するのはNG。

(4)公序良俗に反する内容の広告

わいせつもしくは残虐な図画や映像または差別を助長する表現等を使用した広告は、医療広告として認められません。

(5)広告可能事項以外の広告

患者の治療選択等に資する情報として、広告が可能とされた事項を除いては、原則、広告が禁じられています。

表現例説明
専門外来広告が可能な診療科名と誤認を与える事項なのでNG。
死亡率、術後生存率等対象となった患者の状態等による影響も大きく、適切な選択に資する情報であるとの評価がなされる段階にはない。
未承認医薬品(海外の医薬品やいわゆる健康食品等)による治療の内容治療方法は、保険診療で可能なものや、薬機法で承認された医薬品による治療等に限定されている。

(6)患者等の主観に基づく治療内容や体験談

体験談は、個々の患者の状態等によって感想は異なり、誤認を与えるおそれがあるため、認められません。

また患者の体験談の記述内容が、広告が可能な範囲であっても認められません。

(7)治療前後の写真(ビフォーアフター)

治療前後の写真は、個々の患者の状態等によって結果は異なるものであることを踏まえ、誤認させるおそれがあるため、認められません

ただし、以下の項目について詳細な説明を付した場合は使用できます

・通常必要とされる治療内容、費用
・治療等の主なリスク、副作用

とはいえ、これらをリンク先に掲載したり、極端に小さな文字で表示したりした場合は認められません。

(8)その他

<品位を損ねる内容>

客観的で正確な情報の伝達に努める必要があり、品位を損ねる広告は認められません。

内容具体例
費用を強調した広告「今なら◯円でキャンペーン実施中!」
「期間限定で◯◯療法を50%オフ」
「◯◯治療し放題プラン」
医療の内容とは直接関係ないことによる誘引「無料相談をされた方全員に◯◯をプレゼント」
ふざけたもの、ドタバタ的な表現

<他の法令やガイドラインで禁止される内容>

他の法令に抵触するものやガイドラインに違反するものは、認められません。他の法令としては以下があります。

・薬機法(医薬品医療機器等法)
・健康増進法
・景品表示法
・不正競争防止法

口コミや体験談は掲載可能?

Google口コミのサクラや自作自演は違法?見分け方
医療機関に便益を与えるような口コミ・感想等を取捨選択して掲載することは虚偽誇大広告に当たります。

また、口コミ等に基づき、医療機関にランキングを付すなど特定の医療機関を強調している場合は、比較優良広告に該当する可能性があります。

体験談は上記で説明したとおりです。

また、医療機関のWebサイトでなくても、医療機関が指示や依頼をしてWebサイトに掲載している場合は誘引性が生じ、治療内容や効果に関する体験談は掲載できません。

医療広告ガイドラインのチェックリスト

簡単なチェックリストを紹介します。

チェックリスト補足
基本誘引性があるか患者の受診等を誘引する意図があること
特定性があるか医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院若しくは診療所の名称が特定可能であること
禁止
事項
虚偽広告ではないか
比較優良広告ではないか他の病院または診療所と比較して優良であることを示す広告
誇大広告ではないか
公序良俗に反する内容の広告ではないか
広告可能事項以外の広告ではないか
患者等の主観に基づく治療内容や体験談ではないか
治療前後の写真(ビフォーアフター)ではないか※ただし限定解除あり
品位を損ねる内容ではないか
他の法令やガイドラインで禁止される内容ではないか

医療広告ガイドラインの限定解除

患者等が自ら求めて入手する情報については、適切な情報提供が円滑に行われる必要があるとの考え方から、要件を満たした場合には広告可能事項以外の広告も可能であるとされています。

その限定解除要件は以下のとおりです。

<限定解除要件>
①医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること

②表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること

③自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること

④自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること

①については、ウェブサイト、メルマガ、患者等の求めに応じて送付するパンフレット等が該当します。リスティング広告やバナー広告はこれを満たしません。

②については、電話番号、Eメールアドレス等を記載するなど、容易に照会できる状態であればOKです。

③と④は自由診療に関わるものです。次の段落で詳しく解説します。

自由診療の広告規制は?

医療法では、医師等に対して患者への説明と理解(インフォームド・コンセント)を求めており、患者が安全性や有効性について理解した上で受診することが重要と考えています。

そのため、上の段落の③・④に書かれてあるように、以下を十分に記載する必要があります。

通常必要とされる治療内容

治療期間及び回数
‐医薬品なら一般的名称、用法用量、服用期間目安

治療に必要な標準的な費用
‐幅がある場合は最低金額から最高金額を記載
‐別途発生する可能性のある処置があれば、一通り内容と金額を記載

治療の主な副作用・リスク
‐文字を小さくしない

また未承認医薬品等を用いた自由診療の場合は、以下について適切に情報提供するとともに、必ず施術前に患者に対して丁寧に説明する必要があります。

①未承認医薬品等であること
②入手経路等
③国内の承認医薬品等の有無
④諸外国における安全性等に係る情報
⑤未承認医薬品等は医薬品副作用被害救済制度等の救済の対象にはならないこと

医療広告ガイドラインの違反事例

厚生労働省のサイトにネットパトロールで見つかった違反広告の数と内容が掲載されています。

資料では、1サイト平均で約5.8カ所の違反(1,098サイトにおいて合計6,328カ所の違反)が確認され、特に「広告が可能とされていない事項の広告」が最多と報告されています。

また、医療機関のうち、美容・歯科の違反広告が多く、美容・歯科で違反広告の多い治療内容別の資料も掲載されています。


引用元:厚生労働省

医療広告規制に違反したときの罰則

罰則についてですが、違反していたらすぐに行政処分などが行われるわけではなく、次のようなことが行われます。

(1)調査及び行政指導

通常はまず、任意の調査として広告に記載された医師や医療機関に対して、説明を求める等により必要な調査を行い、指導を行います。

(2)報告命令または立入検査

任意の調査に応じない場合や、説明・提出書類に疑義がある場合は、報告命令または立入検査を行います。

(3)中止命令または是正命令

行政指導に従わない場合や、違反を繰り返すなどの悪質な場合には、中止命令または是正命令を行います。

(4)告発

以下の場合には、司法警察員に対して書面により告発を行う可能性があります。

①直接罰の適用される虚偽広告(法第6条の5第1項違反)を行った者が中止もしくは内容の是正の行政指導に応じない場合

②法第6条の8第1項による報告命令に対して、報告を怠り、若しくは虚偽の報告をした場合

③同項による立入検査を拒み、妨げ、もしくは忌避した場合

④同条第2項による中止命令もしくは是正命令に従わず、違反広告が是正されない場合

罰則については以下が適用されます。

違反内容罰則・罰金
①の虚偽広告、法第6条の6第4項に違反する場合(麻酔科の診療科名を広告するときに、許可を受けた医師の氏名を併せて広告しなかった場合)

④の中止命令もしくは是正命令に従わなかった場合

6月以下の懲役または30万円以下の罰金(法第87条第1号)
②の報告命令または③の立入検査に対する違反の場合20万円以下の罰金(法第89条第2号)

(5)行政処分

医療機関が悪質な違反広告を行った場合には、告発のほか、行政処分として管理者変更命令、病院または診療所の開設許可の取り消し、開設者に対してその閉鎖を命ずることが可能です。

医療広告ガイドラインに基づく標準的な期限も含めた指導・措置等の実施手順書のひな型」に具体的なステップと所要期間が書かれています。

まとめ

医療機関は他の業種と異なり、医療広告規制に配慮して広告を行う必要があります。

詳細を確認し、ルールに沿った広告を行うように注意してください。

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