健康食品や化粧品のように、人体に影響を及ぼす可能性のある商品については、安心して使えるものが良いと考える方が多いでしょう。
その意味で、「医師が推薦」「医師が保証」といった広告は、消費者にとっては安心感を得られるものですが、健康食品などの広告で、このような表現を使用することに問題はないのでしょうか。
今回は、健康食品や化粧品の広告で、医師の推薦を内容とする表現を使ってよいかどうかについて解説します。
健康食品や化粧品に医者が登場する理由
商品を販売する事業者にとって、広告の打ち方は課題の一つでもあります。
健康食品や化粧品は、人が直接口にしたり肌に塗ったりするものなので、消費者に安心感を与える目的で、あたかも医者がお墨付きを与えているかのような広告表現を使いたくなるものです。
なぜなら、そうすることで、商品が優れたものである(権威性)だけでなく、安心して使うことができるものである(信頼性)と消費者に示すことができるからです。
健康食品やダイエットサプリで医師の推薦はOK・NG?
健康食品やダイエットサプリの広告を規制する法律は今のところ存在しません。もっとも、これらの広告が無制限に許されているわけではありません。
たとえば、薬機法は、化粧品などの効能効果について、医師が保証したものであると誤解されるような表現の使用を禁止しています。
このような表現を許してしまうと、消費者は「医師が保証しているのだから、効能効果についても信用できるだろう。」と思ってしまう可能性が高いからです。
このことは、健康食品やダイエットサプリの広告にも同じくあてはまります。これらの商品広告において、医師が保証したものであると誤解されるような表現を使うと、薬機法に抵触する可能性があるのです。
もっとも、医師による推薦が、効能効果に繋がらない内容であれば、特に問題なく使用することができます。
以下では、広告において使用することがOKな表現とNGな表現について見ていきましょう。
<OKな表現>
・〇〇大学教授 ●●医師の推薦
・〇〇は、普段の食生活で不足しがちなタンパク質、ミネラル、ビタミンを多く含み…(〇〇医師談)
前者は、単に「大学教授」という肩書を表示しているだけにすぎないため、商品の「効能効果」を同教授が保証しているとの誤認を生じるおそれはないといえます。
また、後者については、医師による推薦とはいえ、具体的な効能効果には一切触れていません。
<NGな表現>
・〇〇大学教授 ●●医師(癌治療の権威)
・〇〇には、発がん率を低く抑える作用があることが報告されており…(〇〇医師談)
前者は、「大学教授」という肩書にとどまらず、「癌治療の権威」と表示しているため、消費者において「癌治療の権威でもある医師が推薦しているのだから、効能効果に間違いはないだろう。」との誤認を生じるおそれがあります。
また、後者については、具体的な効能効果に触れているため、NGな表現となるのです。
化粧品で医師の推薦はOK・NG?
「化粧品」は、薬機法で規制される対象の一つになっており、同法に関連して医薬品等の広告基準を定める「医薬品等適正広告基準10」は、医薬関係者等の推せんについて以下のように定めています。
【医薬品等適正広告基準10】
医薬関係者、理容師、美容師、病院、診療所その他医薬品等の効能効果等に関し、世人の認識に相当の影響を与える公務所、学校又は団体が指定し、公認し、推せんし、指導し、又は選用している等の広告は行わないものとする。
ここでいう「その他医薬品等」には「化粧品」も含まれており、医薬関係者や病院等が化粧品の効能効果について、推薦したり公認したりすることはできません。
医師は、ここでいう「医薬関係者」にあたるため、化粧品の広告で医師の推薦を打ち出すことは禁止されているということになります。
また、「推薦」に限られず、「医師との共同研究」「医師による監修」といった表現も薬機法に抵触する可能性が高いため、注意が必要です。
ドクターズコスメの薬機法の扱いは?
「ドクターズコスメ」は、医師・医療機関などの専門家が開発するコスメのことです。現在では、化粧水やファンデーションなど、さまざまなドクターズコスメが市場で販売されています。
ドクターズコスメは、薬機法上「化粧品」として扱われるため、前述した化粧品への広告規制と同様の規制を受けることになります。
すなわち、ドクターズコスメにおいても広告で医師の推薦を打ち出したり、「医師との共同研究」「医師による監修」といった表現を使ったりすることは、薬機法に抵触する可能性が出てきます。
ただ、ドクターズコスメ自体は、「開発」になるため、医師の推薦とは異なります。ドクターズコスメ自体が薬機法違反になるかはまだはっきりとした規制内容は示されていません。今後の動向に注目です。
まとめ
健康食品や化粧品は、人体に影響を及ぼす可能性があるため、医師の推薦を表示するなどして、効果的な広告を打ち出したいところです。
ですが、広告の内容によっては、薬機法に抵触するおそれがあり、また、ドクターズコスメなどの「化粧品」については、広告で医師の推薦を打ち出すことはできません。
自社が扱う商品が薬機法の規制対象となるかどうかをきちんと確認して、適切な表現を使用することが大切です。
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