比較広告とは?マーケティング効果と違反事例5個

他社の商品などと料金や機能について比べる比較広告。他の商品やサービスより良いことを分かりやすく説明するためにも使いたいところですが、どんな場合にも使っていいのでしょうか。

この記事では「比較広告」のリスク、使っていい条件、違反事例などについて紹介します。自社で使う時は十分に注意して利用しましょう。

目次

比較広告とは?違法?

比較広告とは、自社と競合他社の商品やサービスを比較し、自社のものの優位性をアピールする広告手法のことです。

つまり、商品の価格や性能等について、競合他社と比較した表示を行い、自社のものを選択した方が消費者にとって優位であることを訴えるものです。自社商品の優れているところをより具体的にアピールできる手法だと言えます。

そして、比較広告を利用すること自体は、違法ではありません。ただし、ルールに沿わない表現をすると不当表示と判断される可能性があるので、正しい知識を知っておくことが重要です。

比較広告のマーケティング効果


比較広告は、自社商品の価値を訴求するのに有利な広告手法であり、マーケティング効果が高いと言えます。

他社商品と比較してどこが優れているのか、どこで差別化を図っているのか等のアピールポイントを消費者に明確に伝えることができるからです。ルールの範囲内で利用すれば、これが含まれていない広告よりも効果的であることが多いでしょう。

比較広告のリスク

冒頭で述べたように、比較広告には普通の広告にはない独自のルールがあります。それに反すると不当表示と判断される恐れがあるので注意が必要です。

また、比較広告は「他社との違い」を表示して差別化を図ることができますが、表現が行き過ぎると、消費者への情報提供ではなく他社商品を誹謗中傷する表現と判断される恐れがあります。

こういった表現は不当表示となる恐れがありますし、他社とのトラブルの原因になるので、十分に注意が必要です。

比較広告の要件3つ

①比較広告で主張する内容が客観的に実証されていること

比較広告をするにあたり、その内容が客観的な調査方法で実証され、きちんと根拠を有している必要があります。

例えば、「A商品よりもB商品の性能が優れている」という比較広告をする場合、A商品とB商品の性能に関する調査や試験が行われていること、A商品に比べてB商品が優れていると言える相当な調査結果があることが必要となります。

※「客観的」について
比較広告する事業者と無関係の第三者(利害関係のない調査機関等)が調査した場合、客観的な調査がなされたと言えます。

ただ、第三者の調査でなくても、その調査が関連する学術界や産業界において一般的に認められた方法、または関連分野の専門家多数が認める方法による場合、または社会通念上および経験則上妥当と認められる方法で調査した場合であれば、客観的な調査なされたものと言えます。

※「調査方法」について
比較する商品の特性によって決まった調査方法がある場合は、その方法で調査し、決まった調査方法が無い場合は、社会通念上妥当と考えられる方法で調査する必要があります。そして、比較広告で訴求しようとする内容が事実だと認識できる結果が出るまで調査を行う必要があります。

②実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること

調査結果を比較広告に引用する場合は、実証された事実の範囲内で表示する必要があります。

例えば、実際は限られた条件下で行った試験結果であるにも関わらず、そのことは引用せずに、全ての条件下で効果があるような広告はNGです。

具体例として、エンジンオイルの性能に関する比較広告で、温暖地という限られた条件下での比較実験の結果であるにも関わらず、そのことは表示せず、自社商品が全ての地域において優良であるかのように表示する場合などが挙げられます。

また、調査結果の一部を引用する場合は、その調査結果の趣旨に沿った引用をする必要があります。

例えば、ある商品について、いくつかの項目にわたって比較試験を行い、その結果の一部を引用するとします。この場合、恣意的に項目を取り上げ、平均値を求める等の方法で、調査結果の本来の趣旨と異なる形で引用し、自社製品の優秀性を訴求することは不当表示となる可能性があります。

また、必須ではありませんが、調査結果を引用して比較広告をする場合は、消費者が調査結果を正確に認識できるよう、調査機関、調査時点、調査場所等の調査方法に関するデータを広告に表示することが適当であると定められています。

③比較の方法が公正であること

「比較の方法が公正である」と言うには、以下の事項を考慮する必要があります。

◯比較事項
基本的に、商品のどの事項について比較しても問題ありません。ただし、特定の事項について比較し、それが商品全体の機能・効用等にあまり影響がないのに、あたかも全体の機能・効用等が優れているかのように広告すると、不当表示となる恐れがあります。

例えば、そこまで重要ではない細かな改良を加えた商品なのに、他社商品と比べて画期的な新製品であるかのような比較広告をする場合が挙げられます。

◯比較対象
比較対象の商品についても、基本的にどの商品を選択しても問題ありません。ただし、一般的に同等とは認識されないものと比較しているのに、あたかも同等のものとの比較であるかのように広告すると、不当表示となる恐れがあります。

また、製造・販売が中止された商品と比較しているのに、あたかも現在販売中のものと比較していると認識させるような広告も不当表示となる恐れがあります。

◯短所の表示
表示を義務付けられている事項や、通常表示されている事項で、訴求する長所と不離一体の関係にある短所について、消費者に誤認を与えないよう明瞭に表示する必要があります。

比較広告の自社調べはOK?

比較広告の中には、訴求内容の付近に「※当社調べ」と表示し、自社で調査したデータを表示したものがあります。調査機関等の第三者による調査ではなくとも、表示する自社データが、「客観的な調査」によるものであれば問題ありません。

先ほど述べたように、一般的に認められたものや専門家が認めた方法によるものであれば「客観的な調査」であると言うことができます。

あまり一般的でない調査方法だと、客観的に実証されていないと判断される恐れがあるので注意が必要です。

比較広告で他社名を出してOK?

比較広告で他社名を挙げて、価格や性能等を比較すること自体は問題ありません。

ただし、他社や他社商品の欠点をことさらに指摘する等、誹謗中傷と見えるような表現を行い、さらにその内容が事実と反し、消費者に誤認を与える場合は、不当表示となる恐れがあります。

また、内容が事実だとしても、あたかも比較対象の商品が実際のものよりも著しく劣っているかのように表現することで、消費者を誤認させる場合も不当表示となる恐れがあります。

比較広告は、あくまで消費者が商品を選択するのに、商品の価格・性能等を適切に比較するための具体的な情報を提供するものであり、決して自社の製品を他社のものより良く見せるものではないのです。

比較広告の違反事例5個

①モバイルデータ通信サービスの比較広告の違反事例

通信会社が、他社サービス比較表の、他社の「メール」欄に「×」と記載し、あたかも他社が提供するサービスに電子メールサービスが付属していないかのような表示を行ったが、実際は他社も無料オプションとして、電子メールサービスを提供していた。

→事実と異なる内容を表示し、あたかも自社の方が優良であると消費者に誤認させるものであり、不当表示と言えます。

②化粧品の比較広告の違反事例

A成分を含む化粧水の比較広告で、「販売実績No.1」と、あたかもその化粧水が最も売れているかのような表示を行ったが、実際は、「A成分を含む化粧水」としての販売実績が最も多いという調査結果だった。

→No.1を謳うため、恣意的にランキング対象を絞り込んだものであり、不当表示であると言えます。

③予備校の比較広告の違反事例

予備校の比較広告で、「大学合格実績No.1」と表示したが、実際は他校と異なる方法で数値化したため、最も実績があるという結果になった。

→「比較の方法が公正」という比較広告の要件を満たしておらず、不当表示と判断される可能性があります。

④パソコンメーカーの比較広告の違反事例

パソコンメーカーの比較広告で、「この技術は日本で当社だけ」と表示したが、実際は他社でも同じ技術を用いたマシンを販売していた。

→事実と異なる内容を表示し、あたかも自社の方が優良であると消費者に誤認させるものであり、不当表示と言えます。

⑤酒類量販店の比較広告

酒類量販店の新聞折り込みチラシで、「この辺で一番安い店」と表示したが、実際は周辺の酒類店の各調査を行っていなかった。

→比較広告の要件である「実証」がされておらず、全く根拠のない不当表示と言えます。

まとめ

比較広告は訴求力が高く効果的な手法ですが、その分普通の広告よりも規制が多く、特に注意が必要です。

景品表示法では、事業者の故意・過失は関係ありません。つまり、「そんな規制知らなかった」では済まされず、不当表示と判断されれば責任追及されます。

そうならないためにも、必ず正しい知識を身に付け、不安があれば専門家へ相談すべきだと考えます。比較広告を行うにあたり、この記事が少しでもお役に立てば幸いです。

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この記事を書いた人

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