近年、色々な種類の日焼け止め商品が販売されていて、クリーム、ファンデーション、化粧下地、化粧水などの化粧品で、日焼け止めやUVケアの効果が謳われています。
また最近では、錠剤やドリンクなどの「飲む日焼け止め」がSNSなどで取り上げられ、注目を集めています。
この記事では、薬機法上、日焼け止め商品について、どのような効能効果を謳えるのか、広告する際は、どのような規制に注意すべきなのか分かりやすく解説します。
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日焼け止めの薬機法分類は化粧品?医薬部外品?
日焼け止めには、薬機法上の分類として「化粧品」と「医薬部外品」のどちらもあります。
ファンデーション、化粧下地、化粧水、美容液、乳液、クリームなどの化粧品や医薬部外品(薬用化粧品)で、日焼け止め効果やUVケアの効果が謳われています。
化粧品の場合の効能効果
薬機法上、化粧品で認められる効能効果は、「日やけを防ぐ」と「日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ」です。
化粧品の日焼け止め商品を広告で表現する際は、これらの効能効果を逸脱しない範囲で標ぼうする必要があります。
また、効能効果を標ぼうする際は、「日やけを防ぐ」効果があることが事実であることが前提なので、その日焼け止め商品に、紫外線の遮断や、紫外線吸収剤や紫外線散乱剤などUV防止を目的とした成分が含まれている必要があります。
例え、保湿を目的とした成分にUV防止作用があったとしても、「日やけを防ぐ」という効果を標ぼうすることはできないので要注意です。
また、「日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ」については、単に「シミ、ソバカスを防ぐ」と表示することは禁止されていて、必ず「日やけによる」ことを明瞭に表記する必要があります。
なお、この「日やけによる」は、「しばり表現」と言い、「シミ・ソバカスを防ぐ」と効能効果を表示した際に、必ず明瞭に付記しなければならない文言です。
医薬部外品の場合の効能効果
薬機法上、薬用化粧品については、厚生労働省から承認された効能効果までの表現が可能ですが、「メラニンの生成を抑え、シミ、ソバカスを防ぐ」ことを目的とした薬用化粧品が主流となります。
この場合も、「メラニンの生成を抑え」がしばり表現となります。そのため、「シミ、ソバカスを防ぐ」には、必ず「メラニンの生成を抑え」と付記する必要があります。
化粧品の場合と同様で、単に「シミ、ソバカスを防ぐ」と表示することは薬機法違反となるので注意が必要です。
また、薬用化粧品としての効果は、あくまでメラニンの生成を抑え、シミ、ソバカスを「防ぐ」ものです。
例えば、日焼けによってできてしまったシミやソバカスが「消える」、「薄くなる」など、あたかも既にできてしまったシミやソバカスに対して、日焼け止め商品が作用するかのような標ぼうをすることはできないので注意が必要です。
飲む日焼け止めの効能効果
最近は、錠剤やドリンクなどの「飲む日焼け止め」と呼ばれる商品が販売されています。
ただし、こういった飲むタイプの商品の効能効果で、日焼け止め効果を表示することは薬機法違反となります。
なぜなら、これらの飲むタイプの商品は、薬機法上の食品に該当し、日焼け止め効果を表現することが認められないからです。
例えば、日焼け止めを目的とした錠剤やドリンクの商品説明欄に「日焼け止め」と記載したり、広告で「飲むだけで日焼けを防ぐ」などと表現することはNGです。
近年、「飲む日焼け止め」は注目を集めていますが、販売者や広告主は十分に注意する必要があります。
日焼け止め広告の禁止表現
化粧品や薬用化粧品については、薬機法上認められた効能効果を逸脱した表現や、医薬品的な効果があるかのような表現が禁止されます。
例えば、化粧品で「日焼けを防ぐ」はOKですが、「焼けてしまった肌を白くする」、「ホワイトニング効果」など、既に日焼けした肌に効果的であるかのような表現は、認められた効能効果の範囲を逸脱し、さらに人体の構造・機能を変化させるかのような医薬品的な表現なのでNGです。
また、薬用化粧品についても、「日焼けでできたシミ、ソバカスに効果的」などの表現は薬機法違反となります。
また先述しましたが、錠剤やドリンクなどについて、日焼け止め効果を謳うことは禁止です。
日焼け止め広告の最強は表現してOK?
日焼け止め広告で、「最強」という表現を使用することはNGです。
化粧品広告で、合理的な根拠なく、最強などの最大級表現を使用すると、あたかも商品の効能効果を保証するかのように捉えられる可能性があるためです。
例えば、紫外線防御効果の指標として用いられる「SPF」や「PA」の値が最大であることを根拠に、「最強の日焼け止め」と謳っている日焼け止め商品がありますが、これらの数値が最大であることだけを根拠に「最強」と謳うことは不適切であると判断される可能性があります。
成分による表示基準
日焼け止めについては、薬機法分類による表示規制以外に、成分による表示基準が設けられていますので、そちらにも注意しましょう。
化粧品公正取引協会の公正取引規約に『「紫外線吸収剤・散乱剤」及び「ビタミンC」を配合した商品の表示基準』があります。
「紫外線吸収剤・散乱剤」を配合した商品の表示基準は以下のとおりです。
「紫外線吸収剤・散乱剤」配合の表示基準
「紫外線吸収剤・散乱剤」を紫外線カット剤として配合した化粧品(注1) | 「紫外線吸収剤・散乱剤」を製品の安定剤(退色防止剤等)として配合した化粧品 | 「紫外線吸収剤・散乱剤」を紫外線カット剤として配合した薬用化粧品 | 「紫外線吸収剤・散乱剤」を製品の安定剤(退色防止剤等)として配合した薬用化粧品 | |
「紫外線吸収剤配合」「紫外線散乱剤配合」「紫外線カット剤配合」等の表示 | ○表示できる。 | ●表示しない。(注2) | ○表示できる。 | ●表示しない。(注2) |
「紫外線をカットする」「紫外線から肌を守る」等、肌への紫外線カット 効果と認識される表示(注3) | ○表示できる。 | ●表示できない。(注4) | ○表示できる。 | ●表示できない。 |
(注1)
「紫外線カット剤として配合」とは、肌への紫外線カット効果が、以下のいずれかにより客観的に裏付けられていることをいう。(以下同じ)
①日本化粧品工業連合会の基準に従ってSPF値を測定し紫外線カット効果を証明できる場合。
②①以外の公表された測定方法により、紫外線カット効果を証明できるデータがある場合。
③内容物組成が既に紫外線カット効果が証明されている商品と類似のものであり、そのデータを活用することができる場合。
(注2)
この場合は、「成分名(製品の退色防止剤)」(例えば、「パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル(製品の退色防止剤)」)と表示することは差し支えない。
(注3)
「肌への紫外線カット効果と認識される表示」には、紫外線カット効果を連想させる絵画、図解を含む。
(注4)
「表示できない」とは景品表示法又は医薬品医療機器等法に違反する表示をいう。(以下同じ)
「UV」の特記の表示基準(注5)
「紫外線吸収剤・散乱剤」を紫外線カット剤として配合した化粧品 | 「紫外線吸収剤・散乱剤」を製品の安定剤として配合した化粧品(注6) | |
「UVカット」等の紫外線のカットと認識される表示 | ○表示できる。 | ●表示できない。 |
「UVケア」等の日やけ後のケアと認識される表示 | ●表示できない。 | ●表示できない。 |
その他「UV」「UV対応」「UV対策」等の表示(注8) | ○表示できる。 | ●表示できない。 但し、洗顔料等商品上、紫外線カット、ケア(美白)効果がないことが明らかな化粧品を「UV」を付したシリーズに組入れた場合には、当該シリーズ名を表示することができる。この場合、紫外線カット、ケア(美白)商品でない旨を明瞭に表示すること。 (例) 「本品はUV対応製品ではありません」 「本品は洗顔料で紫外線対応商品ではありません」 「紫外線やシミ、ソバカスを防ぐ商品ではありません」等(注9) |
日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ」の効能表示 ※承認された効能・効果の文言を言い換えないで表示すること。 | ○表示できる。 | ●表示できない。(注10) |
「紫外線吸収剤・ 散乱剤」を紫外線カット剤として配合した薬用化粧品 | 「紫外線吸収剤・散乱剤」を製品の安定剤として配合した薬用化粧品 | ||
日やけ後のケア(美白)を目的とした薬用化粧品(注7) | それ以外の薬用化粧品 | ||
「UVカット」等の紫外線のカットと認識される表示 | ○表示できる。 | ●表示できない。 | ●表示できない。 |
「UVケア」等の日やけ後のケアと認識される表示 | ●表示できない。 | ○表示できる。 | ●表示できない。 |
その他「UV」「UV対応」「UV対策」等の表示(注8) | ○表示できる。 | ○表示できる。 但し、表示するときは、日やけ後のケア(美白)商品である旨を明瞭に表示するとともに、「日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ」の効能表示も合せて表示すること。 (例) 「メラニン色素の生成を抑える薬用化粧水」 「日やけ後のシミ、ソバカスを防ぐ薬用化粧品」等 | ●表示できない。 但し、洗顔料等商品上、紫外線カット、ケア(美白)効果がないことが明らかな化粧品を「UV」を付したシリーズに組入れた場合には、当該シリーズ名を表示することができる。この場合、紫外線カット、ケア(美白)商品でない旨を明瞭に表示すること。 (例) 「本品はUV対応製品ではありません」 「本品は洗顔料で紫外線対応商品ではありません」 「紫外線やシミ、ソバカスを防ぐ商品ではありません」等 |
日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ」の効能表示 ※承認された効能・効果の文言を言い換えないで表示すること。 | ○表示できる。 | ○表示できる。 但し、表示するときは、「日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ」の効能表示とともに、日やけ後のケア(美白)商品である旨を明瞭にすること。 (例) 「メラニン色素の生成を抑える薬用化粧水」 「日やけ後のシミ、ソバカスを防ぐ薬用化粧品」等(注11) | ●表示できない。(注10) |
(注5)
「UV」の特記表示とは、「UV」を単独あるいは「UVカット」等「UV」を用いた単語を目立つように表示することをいい、UVに同意語の「紫外線」の文言を含む。
(注6)
「紫外線吸収剤・散乱剤」を配合していない化粧品(又は薬用化粧品)における「UV」の特記表示は、「安定剤として配合」の表示基準に準じて表示すること。
(注7)
日やけ後のケアとは、美白を意味する。
(注8)
「「UV」の特記表示」には、シリーズ名、販売名の「UV」も含まれる。
(注9)
但し書は、UVの特記表示のある外箱、容器それぞれの正面又は裏面に表示する。表示箇所、字の大きさ等を特に定めないが、但し書の趣旨を踏まえて明瞭に表示する。また、「(例)」は例示であり、この文言に拘らずに但し書の趣旨を生かした表示をすること。(以下同じ)
(注10)
「UV」表示がなくても安定剤として配合した場合は表示できない。
(注11)
「UV」を表示していない薬用化粧品は但し書を省略することができる。
紫外線吸収剤・紫外線散乱剤の成分名
紫外線吸収剤・紫外線散乱剤といっても化粧品等の成分表示に書かれてある名前は異なります。具体的にどんな成分名のことなのかを説明します。
◯紫外線吸収剤の成分名
・メトキシケイヒ酸エチルヘキシル
・メトキシケイヒ酸オクチル
・ジメチルPABAオクチル
・パラアミノ安息香酸
・t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン
・オクチルトリアゾン
・オクトクリレン
など
◯紫外線散乱剤の成分名
・酸化チタン
・酸化亜鉛
など
まとめ
日焼け止め商品を広告する際は、「しばり表現」に注意し、薬機法で定められた効果の範囲で表現する必要があります。また、最近話題の飲むタイプの日焼け止めについては、日焼け止めやUV防止効果を標ぼうすると薬機法違反となります。
薬機法に抵触しないためにも、少しでも表現に不安がある場合は、詳しい専門家などに相談しましょう。
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