健康食品・サプリメントのマーケティングやプロモーション成功事例を紹介します。
市場規模や全体の傾向、成功要因などを説明したあと、具体的な事例を紹介していきます。具体的な事例は、戦略の立て方や考え方の参考にしてください。
さらに、事例紹介のあと、薬機法や景品表示法も解説します。薬機法・景品表示法は大手企業でも度々違反行為が起こっているため、注意が必要です。また、正しく知っておけば、商品や広告の戦略を考えるときにも役立ちます。
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健康食品・サプリメントの市場規模
健康食品・サプリメントの市場は巨大市場です。OEMができることもあって新規参入も多いマーケットです。
市場は緩やかに拡大していて、矢野経済研究所の調査によると、2023年度の市場規模は9000億円を超える見込みです。
引用元:矢野経済研究所
健康食品・サプリメントの傾向
健康食品・サプリメント市場では、2015年4月から始まった機能性表示食品制度により、機能性表示食品の届出を行う企業が増え続け、2024年1月には累計届出数が7800件を超えました。市場も右肩上がりで2023年度の予測は5000億円を超えています。
引用元:矢野経済研究所
増え続けている理由としては、機能性表示食品の届出によって、限られた範囲ではあるものの、効能効果を明確に表現できるからです。
効能効果を表現できるかどうかは広告の内容に大きな影響を与え、顧客獲得単価にも影響します。
今後も、機能性表示食品の届出を行う企業は、増えていくと予想されます。
健康食品・サプリメントで成功する要因
健康食品やサプリメントのビジネスで成功するための要因には、様々なものがあります。
・市場が伸びている
・ブランディングが上手い
・研究開発力が高い
・ポジショニングが上手い
・ビジネスモデルが優れている
・強い販売チャネルがある
・広告宣伝が上手い
など。
成功している商品は、どれかの要因が抜きん出ています。商品別にどの部分が抜きん出ているのか考えながら見てみてください。
健康食品・サプリメントのマーケティング成功事例14選
1. ヤクルト1000
売り切れ続出で話題にもなった「ヤクルト1000」。あまりに人気だったため、スーパーやコンビニで買える商品にもかかわらず、売り切れで転売ヤーまで現れる事態となりました。
まず、ヤクルト1000は機能性表示食品で、ヤクルト独自の「乳酸菌 シロタ株」が機能性関与成分です。そして「ストレス緩和」「睡眠の質向上」「腸内環境改善」が機能性です。
「睡眠」や「ストレス」への機能が特に現代の消費者に刺さりました。また、ヤクルト1000は、宅配用と店頭用があり、ヤクルトレディや店頭での丁寧な説明と、高密度の販促も大ヒットの要因だったようです。
さらに、ブランディングでは、これまでのヤクルトとは異なり、「先進的」「大人向け」のイメージで行われました。
2. iMUSE
キリンのiMUSE(イミューズ)は、免疫にかんする機能性では日本初の機能性表示食品です。プラズマ乳酸菌が機能性関与成分で、キリンの長年の免疫にかんする研究が活かされています。
機能性表示食品の届出が受理されたのは2020年8月。コロナが流行した時期であることもあいまって「免疫」に対する注目度は非常に高くなっていました。
さらに、免疫にかんする機能性表示食品は他社からしばらく出ることがなく、独占状態で販売を続けることができました。
iMUSEを「免疫ブランド」に新しく変えて、テレビCM・WEB広告などの各種広告で認知をとり、店頭も盛り上げ、大ヒットとなりました。
3. BASEFOOD
BASEFOOD(ベースフード)は、完全栄養食のパイオニアです。2016年に「主食をイノベーションし、健康をあたりまえに。」のミッションをもとに創業。2017年にパスタから始まり、パン・クッキー・冷凍食品など商品展開も増えています。
1日に必要な栄養素を手軽に摂取できることから人気となりました。
・定期購入の導入
・無料配布の実施
・ファン化を促すための会員コミュニティやイベントの開催
・コンビニの販路開拓
などにより、会員数・売上を大幅に伸ばしています。
例えば、無料配布では、「『BASEFOOD給食所』として通勤中のビジネスパーソンに2万食を無料配布」というイベントも過去に行われました。
4. ロートV5
ロートV5は、ロート製薬の商品です。ロート製薬はもともと「Vロート」というブランドで点眼薬を販売しており、高いブランド力がありました。
そのような中で、目のサプリメントとしてロートV5を発売し、シリーズ累計1200万個を販売。ロートV5シリーズにはいくつか商品がありますが、機能性表示食品で効能効果をうたえるようになっています。
デジタルデバイスの使用頻度増加によって、眼精疲労を訴える人が増えていることも好調の要因です。
また、店頭では高額目薬と連動した展開で成功しています。
5. VALX
VALX(バルクス)は、株式会社レバレッジが展開するフィットネスブランド。パーソナルトレーナー業界のレジェンドである山本義徳氏が監修しています。
山本義徳氏への信頼性の高さと、Youtubeを使ったマーケティングにより、プロテインやサプリメントが飛ぶように売れ、レバレッジの2023年10月期の売上高は74億円となっています。
また、プロテイン市場がこの数年で大きく伸びたことも後押しとなりました。
6. グミサプリ
グミサプリは、UHA(ユーハ)味覚糖の商品です。UHA味覚糖は主にキャンディやグミを販売するお菓子メーカーで、2015年4月にサプリメント市場に本格参入し、グミサプリを発売しました。
様々な栄養素に特化したグミサプリを展開し、機能性表示食品を取得している商品もあります。
お菓子にも分類されるため、スーパーやコンビニにも置いてあり、手軽に摂取できるのが人気の理由です。また水なしで摂取でき、サプリメントとして続けやすい商品です。
グミは手を汚さず食べられ、口から出す必要もないため、グミ市場は2021年にガム市場を上回り、拡大傾向であることも後押ししています。
7. 日清MCTオイル
MCTオイルとは、ヤシ科の植物に含まれている天然成分の「中鎖脂肪酸」のみで作られているオイルのことです。健康的なオイルとして人気です。
MCTオイル市場は、2017年度の4億7,000万円から、2022年度には24億6,000万円に拡大。
日清MCTオイルは、その市場の中でトップシェアの商品です。
MCTオイルは認知度が低かったため、高付加価値商品としてブランディングを行い、MCTの価値や使用方法などの情報発信を強化しながら、各種キャンペーンを行って売上を伸ばしています。
8. カロリミット
カロリミットは、ファンケルのサプリメントです。「大人のカロリミット」も含めると、2000年5月〜2022年10月末の間に累計販売数8,100万個を突破した人気商品です。
初代カロリミットは、2000年に発売されました。その後、機能性表示食品も取得するなど、リニューアルも行われています。
カロリミットは、ダイエットしたい女性に向けて「食べたいものを無理に我慢しなくていい」という相手の気持ちを肯定したメッセージを打ち出したことが多くの方に支持された要因のようです。
最近では、カロリミットのブランド力を活かし、キリンとコラボした「カロリミット ブレンド茶」、たらみとコラボした「カロリミット 蒟蒻ゼリー」なども発売しています。
9. ザバスミルクプロテイン
ザバスミルクプロテインは、明治のプロテイン飲料です。ザバスは粉末プロテインとして人気のブランドですが、2015年に飲料も発売しました。売上は2015年度の7億円から、2020年度には160億円にまで拡大しています。
水や牛乳で溶かす手間がいらず、気軽に摂取できることから幅広い層に支持され、大ヒットとなりました。運動後でもすっきり飲めるように、酸味が加えられています。
発売当初は上手くいかなかったようですが、ターゲットを運動習慣のない一般層からスポーツ愛好者に変更して、デザインやマーケティングを再構築。
機能価値を伝えるパッケージに変更し、価値を伝えるためのセミナー開催、スポーツをしている人へのサンプリングなどを行って売上は急拡大していきました。
10. FUJIMI
FUJIMI(フジミ)は、パーソナライズビューティケアブランドで、トリコ株式会社が運営。2022年12月期の売上高は24億円で、前期比から約10億円の増収と大きく成長しています。
新しい会社であることもあり、デジタルマーケティングを積極的に活用し、売上を成長させています。
・肌診断データベースを蓄積して、顧客へ最適な商品を提案
・CRM施策で丁寧なコミュニケーション
・広末涼子氏をアンバサダーにする大胆な施策
・辻さんなどのインフルエンサーを起用したPR施策
・開発・デザイン・マーケティングをインハウスで行い、迅速に動ける体制を構築
など、ベンチャーならではの素早い動きが成功の要因と言えそうです。
11. CHILL OUT
CHILL OUT(チルアウト)は、リラクゼーションドリンクブランドで、現在はコカコーラシステムが運営。
元々は2016年11月に株式会社I-ne(アイエヌイー)から誕生したブランドです。
2019年7月に株式会社I-neが設立した合同会社Endian(エンディアン)に日本コカ・コーラが出資。その後、事業が成長し、2023年10月からコカコーラシステムの運営となっています。
メインユーザーは20代や30代の若年層。ストレス指数が高い現代人に、リラックスを促す商品がヒットしました。2020年から2022年にかけて売上は約10倍です。自販機やECサイトでもよく売れているようです。
過去には、2月6日の「お風呂の日」と、3月7日の「サウナの日」に、全国各地の銭湯とコラボするプロモーション施策が行われました。
12. KINS
KINSは、株式会社KINS(キンズ)が運営するブランドで、常在菌をケアするサービスを行っています。商品は、サプリメント、スキンケア商品、ヘアケア商品などがあります。
2021年11月時点では、売上高は前年同期比の5倍で、月次売上高1億6000万円、というニュースが出ています。
マーケティングでは、広告ではなかなか上手くいかず、インスタやオフラインセミナーなどにより、コミュニケーションの密度を上げたことによって、顧客数が伸びたようです。
13. Suppleno(サプリノ)
Suppleno(サプリノ)は、分析型パーソナライズサプリメントを提供する会社です。親会社は、サプリメントOEMの井藤漢方製薬。
2021年9月にサービスを開始して1年で累計顧客数は40倍となっています。
施策としては、例えば以下のようなことが行われていました。
・福利厚生サービスの会員向けに優待価格で提供
・なんばマルイの体験型ストアで実店舗販売
・地元企業とコラボしてキャンペーン
・母の日・父の日用のギフトパッケージを用意
など
14. the kindest
the kindest(カインデスト)は、株式会社MiL(ミル)が運営する子育て家庭向けのオーガニックフードブランドです。
2023年1月のプレスリリースによると、累計190万食を突破し、会員向けデータプラットフォームは、日本の出生数の約10%を会員として毎月獲得しているとのことです。
消費者に選んでもらえるように、商品だけでなく、社会へのメッセージ、キャラクター、デザインなどにもこだわって制作。
出資者であるサッカー元日本代表の長友夫婦の協力で食育企画を行うなど、多くの人に興味を持ってもらえるように様々な施策が行われています。
健康食品でよくある薬機法NG表現
健康食品は、薬機法の規制対象ではありませんが、医薬品的効能効果を述べると、薬機法の規制が及ぶことになります。
次のような表現は使えません。
①疾病の治療又は予防を目的とする効能効果
②身体の組織機能の一般的増強、増進を主たる目的とする効能効果
③医薬品的な効能効果の暗示
具体的なNG表現としては、
・高血圧の改善
・免疫力を上げる
・アンチエイジング
・バストアップ
・認知症予防
・コロナウイルスの予防
・細胞の活性化
などがあります。
景品表示法で注意すべきこと
景品表示法で注意すべきなのは、優良誤認表示・有利誤認表示・ステマ規制などです。
優良誤認表示は、効能効果の表現が薬機法上問題にならない場合でも、問題になる場合があります。
例えば、「食べるだけで5キロやせる」という表現は薬機法上は問題ありませんが、本当に5キロやせるのか、客観的な根拠があるのかが問われます。
有利誤認表示は、キャンペーンで特に問題になります。
例えば、「初回購入者は通常6000円のところが3000円」と表示していたものの、最近相当期間にわたって6000円の販売実績がないような場合は違反と判断されるおそれがあります。
ステマ規制は、例えば通販サイトの口コミに、会社関係者が良い口コミを投稿したような場合に問題となります。
まとめ
健康食品・サプリメントのマーケティング成功事例を紹介しました。巨大市場ゆえ、様々な商品があり、知らない事例もあったのではないでしょうか。
意外とまだまだあなたの知らない成長ブランドがあるはずです。チャンスを探してみてください。
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