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今ではごく普通に使うオーガニックコスメという用語。21世紀になってから日本と世界で普及した、コスメの世界では比較的新しい製品ジャンルです。
20世紀になって以来永らく使われてきた、石油製品を原料とするいわゆる「ケミカル化粧品」に対し、その肌トラブルに悩む女性から急速に注目を集めました。
化粧品は、古代エジプトにもあったことが遺跡から確認されています。古代エジプトの神秘的な彫刻や映画のクレオパトラを見ると、はっきりとしたアイラインが引かれているのがイメージできる方も多いと思います。
しかし古代エジプトに石油製品があるわけがありません。人類は長らく天然素材により作られた化粧品を使ってきたのです。「自然の恵みを今一度見つめなおそう」。化粧品に関わる現代の多くの人がこのような原点回帰を意識し始め、オーガニックコスメが脚光をあびるようになってきた、と思えてなりません。
オーガニックコスメは現在、先進国を中心に世界中で広く使われています。一方アジアの新興国ではまだこの言葉が一般的ではない国が多いのも現状です。
しかし近年は日本のインバウンドにおける「爆買い」を、たくさんの方が目の当たりにされていると思います。ごく近い将来、アジアからの観光客が「オーガニックコスメ」に注目するポテンシャルは相当に高く、化粧品業界における重要なマーケティング課題になると思われます。
まずは化粧品全体とオーガニックコスメの市場規模から見てみましょう。
日本でもオーガニックは高成長予測
引用元:ジェトロセンサー
ジェトロ(日本貿易振興機構)のレポートによると、オーガニック以外も含めたすべての「美容・パーソナルケア商品」は、世界全体で2015年の推定で約60兆円。日本の市場規模は約2.3兆円(矢野経済研究所調べ)で、日本市場は世界シェアの3.8%なります。ちなみに人口シェアは1.6%です。
世界市場では、新興国の経済成長を背景に、今後も年8%ペースで成長が続くと予測しています。年8%で成長すると9年で市場規模は2倍になります。日本市場の成長率予測は年1%にも届きません。世界市場とのポテンシャルの差はこれぐらい大きいのが現実です。
引用元:矢野経済研究所
オーガニックコスメに絞った市場希望としては、世界で約3.6兆円(オーガニック協会調べ)、日本で0.1兆円(矢野経済研究所調べ)。化粧品全体と同じくオーガニックコスメも、世界全体では高い伸びが期待されています。また日本でもオーガニックコスメに限っては、化粧品全体の伸びの鈍さに対し5%以上の高い伸びが予想されています。
しかしこの伸びが実現するかはハードルも少なくありません。業界では以下のような課題が指摘されています。
オーガニックコスメ市場の課題
1)天然素材を主に用いており、素材確保の観点や製造の難しさから、ケミカル化粧品のように大手メーカーが大量生産するのは容易ではない。よって価格も高い。
2)中小メーカーが乱立しているのが現状で、ユーザーに安心感を与えるブランドの確立や安定供給はまだ道半ば。
3)日本でも世界でも「オーガニックコスメ」の定義が明確で統一されているとはいえず、メーカー表示の勇み足やユーザーの誤認識によるトラブルに不安が残る。
4)日本国内で販売するためにクリアしなければならない法律「薬事法」が国際標準と異なるルールが多く、それを嫌って参入を躊躇する海外ブランドも少なくない。またこの真逆で国内ブランドがグローバル展開するのを困難にしている。
5)(最近改善されてきたといわれるものの)オーガニックは効果が出るまで時間がかかるため、リピーターを獲得するまでの時間が長くなりがち。
オーガニックコスメ市場の追い風要因
一方、課題という「向かい風」に対し大きな「追い風」要因があることも事実です。
1)新興国の経済成長が、ネット通販や観光など、世界中で巨大な消費を創出している。
2)人口が減少する日本において、インバウンド消費は日本の化粧品市場の伸びを力強く下支えする。
3)SNSによる口コミ拡散の格段のスピードアップが、オーガニックの評価の広まりを下支えする。
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日本にも品質認証制度を
オーガニックコスメのブランドは、前述のように大手メーカーによる大量生産が容易でないため、国内外で星の数ほどあると言っても過言ではありません。
このためユーザーがブランドを選択するにあたり、その品質を確認するには「認証マーク」が大きな目安となっています。世界の有力な認証機関を見てみましょう。
USDA
日本の農林水産省にあたるアメリカ農務省のこと。マークは日本の有機JASに相当する。
ECOCERT(エコサート)
フランスの農学者団体が設立した世界最大級の国際認定機関。
ecobio(エコビオ)
フランスの通商産業省の認証制度。日本の有機JASマークと似た制度。
NaTrue(ネイトゥルー)
主にドイツの有力メーカーが発足させた認証機関。星の数でオーガニックのレベルを表すのが特徴。
BDIH
ドイツの業界団体である医薬品・化粧品商工業企業連盟。
Soil Association
イギリス土壌協会。植物原料の認証機関として著名。
ACO
オーストラリアの認証機関。
日本では2007年に「内閣府認可 NPO法人日本オーガニックコスメティック協会 JOCO」が、一時オーストラリアの認証機関ACOと協業し、認証を始める動きがありました。しかし現在ではユーザーの立場からオーガニックコスメの基準を提案している、という活動にとどまっています。
国内では他に有機JASの登録認定機関であるアーファス認証センターとASACがオーガニックコスメの認証を始めていますが、認証実績はありません。国内メーカーはECOCERTなどが国内で設立した認証機関に、もしくは海外の認証機関に認証を依頼する、というのが現状です。国内では、認証自体を受けていないブランドも少なくありません。
すでに存在する世界の認証機関においても、その認証基準は統一されていないのも事実で、この点を危惧した欧州メーカーがNaTrue(ネイトゥルー)を設立し、欧州や世界でデファクトスタンダード化をうかがっています。
「何をもってオーガニックというか」、認証基準の難しさはこの点につきますが、やはりこの課題は業界として乗り越えねばならない大きなハードルといえます。
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有力ブランドは欧米勢が先行
認証機関が欧米で先行して活動していることからも推測できますが、ブランドも欧米勢が先行しているのが事実です。
まずは世界最大のオーガニックコスメ市場であり、多数がしのぎを削るアメリカの有力ブランドからご紹介します。日本語の公式サイトを開設しているブランドのみURLを表示しました。
アメリカのオーガニックコスメブランド一覧
alima PURE(アリマピュア)
西海岸のポートランド生まれでミネラル成分のみを使うのが特徴、全製品がBDIH取得。
AUBREY ORGANICS(オーブリー・オーガニクス)
世界的に著名な化学者で動物実験反対論者としても知られるオーブリー・ハンプトンが創設。「ナチュラルであること」への強いこだわりを持っている。
AVALON ORGANICS(アヴァロン・オーガニクス)
http://www.avalonorganics.jp/
カリフォルニア生まれの全米でも有数の売り上げを誇るブランド。ナチュラルであることはもちろん「地球にやさしい」というコンセプトで環境との共生にも力を入れている。
BADGER(バジャー)
創始者は大工で、手荒れ対策に作ったバームから生まれたユニークなブランド。ブランドロゴに「アナグマ=バジャー」が描かれていることで知られる。
BURT’S BEES(バーツビーズ)
東海岸のハチミツ職人が創設。蜂から分泌されるミツロウなど天然成分へのこだわりが強い。日本ではリアル店舗からは姿を消したが、国内通販サイトでは引き続き購入できる。
JOHN MASTERS ORGANICS(ジョン・マスターズ・オーガニック)
http://www.johnmasters-select.jp/
ニューヨークのサロン発のヘアケアとスキンケアのラグジュアリーブランド。「地球に敬意を払う」がキャッチコピー。
Kiehl’s(キールズ)
http://www.kiehls.jp/
ニューヨークの調剤薬局が開発。その製品はアメリカの文化や科学の発展に貢献したとして、ワシントンDCのスミソニアン博物館に収納されたことでも知られる老舗企業である。
Nature’s Gate(ネイチャーズ・ゲイト)
全米でも有数の売り上げを誇るヘアケアブランド。ポーランド出身の兄弟がカリフォルニアで創業。ハーブを使用したナチュラル製法と豊富な商品ラインナップで知られる。
アメリカのブランドは西海岸や東海岸の富裕層が比較的多いエリアで多くが誕生しています。
ヨーロッパのオーガニックコスメブランド一覧
続いてヨーロッパのオーガニックコスメのリーダーで、環境先進国のドイツのブランドをご紹介します。アメリカに次いで有力ブランドが多数あります。
ANNEMARIE BORLIND(アンネマリー・ボーリンド)
http://www.borlind.jp/
ドイツ南部シュバルツバルト地方の温泉保養地で知られるバーデンバーデンの近くが本拠のスキンケアブランド。「黒い森で生まれた自然の恵み」を前面に押し出している。
Dr. Hauschka(ドクターハウシュカ)
https://www.dr.hauschka.com/ja_JP/
ウィーンの化学者ハウシュカ博士が設立。オリジナルの植物エキスの抽出技術「リズム製法」により、保存料を使用せずに長期間品質を保ち続ける製品を実現。
Lavera(ラヴェーラ)
http://www.lavera-shop.com/
ラテン語で「真実」の意味のブランド名。自然との調和と「肌が自ら美しくなろうとする力への援助」を貴ぶ哲学を表現。
LOGONA(ロゴナ)
http://www.logona-friends.jp/
自然への感謝と愛情に満ちた製品ラインアップを揃え、ナチュラルコスメのパイオニアとしての存在に自信を持つ。多数の機関から認証を受けていることでも知られる。
MARTINA(マルティナ)
http://www.martinaorganicskincare.com/
バイエルン生まれの「自らの力で肌自身の再生力を呼び起こす」ことに強いこだわりを持つブランド。クレンジングミルクの評価が高い。
Tautropfen(タウトロッフェン)
ドイツ語で「露のしずく」の意味のブランド名。製品は100%ケミカルフリー。
ドイツでは主に南部の自然豊かなエリアで多くの有力ブランドが育まれているようです。
次にヨーロッパの他の国のブランドです。
PHYT’S(フィッツ)
https://www.phyts-japan.com/
フランス。植物学者の手によって南フランスで誕生。高水準の天然由来成分100%で製造、植物療法を活かすことに強いこだわりを持つ。
L’Occitane(ロクシタン)
http://jp.loccitane.com/
フランス。オーガニックと定義されない製品も多くラインナップされているが、スキンケア製品以外にフレグランスやバス製品も豊富に展開する世界でも有数の化粧品ブランド。100%植物由来の原料を使用し、独自の倫理ガイドラインで「貧困の子供を原料生産で駆り立てていない」ことをうたっていることでも知られる。
WELEDA(ヴェレダ)
http://www.weleda.jp/
スイスで誕生し、オーガニックコスメのルーツとも言われるブランド。現在は自然医薬品メーカーとしても知られ多国籍に展開。バイオダイナミック有機栽培農法にこだわり、多方面の製品ラインアップを持つ。
organic BOTANICS(オーガニック・ボタニクス)
イギリス。過敏症に悩む創設者が自宅のキッチンで研究開発して誕生したオーガニック植物美容ブランド。製造行程はデリケートかつ少量生産で、常に新鮮で高品質であることを売り物にしている。
欧州各国はドイツと比べて有力ブランドは多くありません。しかし個性的なブランドが多く、その魅力では決して引けを取りません。
続いて近年急速に注目を集めるオーストラリアのブランドをご紹介します。
自然へのこだわりが強いブランドが目立ちます。
Jurlique(ジュリーク)
http://www.jurlique-japan.com/
自社農園で「バイオダイナミック無農薬有機農法」で栽培した原料による製造にこだわりを持つ。自然と科学の融合がすこやかで美しい肌につながる、という理念で知られる。
Zuii ORGANIC(ズイ・オーガニック)
フローラル(植物)を原料とするオーガニックのメイク製品の先駆けともいえるブランド。豊富なカラーバリエーションが特徴。
日本国内のオーガニックコスメブランド一覧
最後に日本勢の中で比較的浸透しているといえるブランドをご紹介します。
日本のオーガニックコスメ・ブランドはきわめて多数が乱立しているのが現状です。
do organic(ドゥー・オーガニック)
http://www.do-organic.com/
エイジングケアに最適な玄米や黒大豆などの穀物原料を厳選したスキンケアブランド。全品にフランスのオーガニック認証ECOCERTを取得。
WELINA(ウェリナ)
http://welina.jp/
自然栽培の植物原料(USDA認定取得済み)の完全無添加化粧品。「大切な家族のために、産まれたての赤ちゃんが使えるものを」が発足時から変わらないコンセプト。
このほか、下記のブランドも認知度が浸透しつつあると言えるでしょう。
HANA organic(ハナ・オーガニック) http://www.hana-organic.jp/
naturaglace(ナチュラグラッセ) http://www.naturaglace.jp/
琉白(るはく) http://ruhaku.jp/
かぐれ http://www.kagure.jp/
THREE(スリー) http://www.threecosmetics.com/
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チャネルでは「もはや化粧品ではない」
オーガニックコスメの販売は、他の商品カテゴリーと同じく、ネット通販とリアル店舗の双方で各ブランドがしのぎを削っています。
主なブランドのチャネル展開についてご紹介します。
ドイツのANNEMARIE BORLIND(アンネマリー・ボーリンド)は、公式ネット通販に加え、正規リアル店舗/オンラインショップ、取り扱いサロンの三本柱で展開しています。正規リアル店舗は首都圏の百貨店が中心で関西・福岡にも10店を出店。正規オンラインショップは、アマゾン/コスメコム/サンテラボ(楽天市場)の3サイト。また取り扱いサロンは全国に多数。
オーストラリアのJurlique(ジュリーク)も、公式ネット通販に加え多方面に展開しています。正規取扱店としては、百貨店は全国に23店、サロンは5店。コスメ専門店やセレクトショップは全国に81店と多く、中でもコスメキッチンには29店と目立ちます。また首都圏のアウトレットモールにも出店しています。
日本のWELINA(ウェリナ)は、公式ネット通販をベースに、リアル店舗のコスメ専門店/セレクトショップと、オンラインショップを取扱店としています。百貨店には出店していません。リアル添付は首都圏と関西が中心、コスメキッチン(16店)、ビームス(7店)に多く出店しています。オンラインショップは、コスメキッチン/ビームスのほか、ZOZOTOWNなど計8サイトで扱っています。
ネット通販では、各ブランドの公式サイト上での販売とアマゾンや楽天といったメガ通販サイトに加え、化粧品やオーガニックコスメの専門通販サイト、百貨店やセレクトショップなどリアル流通チャネルが運営する通販サイト、ZOZOTOWNといったファッション通販サイトなど、あらゆるチャネルが乱立しています。しかしこうした乱立=多様性こそが、オーガニックコスメの特徴を表しているのです。
また、化粧品であるオーガニックコスメはユーザーの商品選択に際し、使用感やブランドポリシーに関する口コミが大きく影響します。ブロガーによるアフィリエイトを経由した販売が巨大な規模になっていることも、マーケティング課題として当然無視できません。
一方リアル店舗でも、いわゆる「化粧品売場」の枠を超えて、様々な業態に拡張しています。
あえて百貨店に出店しないブランドも少なくなく、ショッピングセンターやファッションビルのテナントとして出店するブランドが目立ちます。化粧品としての機能だけでなくファッション性を意識したチャネル選択が行われていることが、一般の化粧品とは一線を画しています。
オーガニックコスメのパッケージデザインを「インテリアを飾るアイテム」として購入するケースがあることから、ビームスのようなファッション系のセレクトショップや雑貨ショップでもよく扱われています。
他にも直営サロンを設置、ヘアサロンでの販売に注力、アウトレットモールに出店、インバウンドを意識して免税店を強化、といった従来の固定観念を超えた、あらゆるチャネルへの拡張が続いています。
⇒PDF無料プレゼント「化粧品マーケティング3つの勝ちパターン」
オーガニックコスメを育てる
オーガニックコスメは、従来の化粧品の常識とは異なる哲学がユーザーに評価され、今後目立った市場の成長が予測されています。そうした成長につながる流れとして、化粧品の枠を超えファッションアイテムとしてのチャネル展開が広がっています。
「本当はきちんとした説明が必要なのに、安全・安心を担保した簡単さを実現しなければならない」というきわめて高いハードルが業界に問われています。日本国内でいまだ認証機関を設立できていないことは、そのハードルの象徴とも言えます。
一方で2015年にアメリカの有力ブランドBURT’S BEES(バーツ・ビーズ)がリアル店舗から、PANGEA ORGANICS(パンゲア・オーガニクス)に至っては通販サイトも含めて、日本市場から撤退しました。競争の激化も現実に起こっています。
海外に目を向けると、アジアに旅行してショッピングセンターを訪れたことのある方は、あらゆる業態で日本ブランドのお店がたくさんあることに驚かれたことが多いと思います。アジアという世界を牽引する市場では、日本ブランドにはきわめて関心が高いのです。
オーガニックコスメ市場は、21世紀の新たな商品カテゴリーとして発展途上にあると言えます。「将来性ある可能性をきちんと育てる」、夢のあるチャンスに恵まれた業界です。
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