貼るだけでやせるは法律違反?ダイエットパッチの景表法違反理由は?

楽にダイエットしたい、すぐに体重を減らしたい、部分的に痩せたい…、苦労しないで体重を減らしたい人のニーズは非常に大きく、お店にあるダイエットグッズや、通販番組のダイエット食品、30分完結ジムなど、痩せたい人向けのビジネスはとどまることを知りません。

しかし、「痩せます!」と断言するのは非常に危険です。医学的にも証明されていない根拠宣伝するのは、様々な法律に抵触します。根拠がないもの、根拠が薄いものを、さも全員に効果があると謳うのは非常に危険で、取り締まりや行政処分の対象になります。

今回はお手軽ダイエットを謳った「ダイエットパッチ」がなぜ景品表示法違反になったのかわかりやすく解説します。

目次

ダイエットパッチとは?

今回問題となった3社のダイエットパッチとは、メーカーによって若干差はありますが、湿布よりも少し小さな粘着性のシートを、ダイエットしたい箇所に貼り、そのまま日常生活を送っている間に、夜眠っている間に、気付かないうちに脂肪を燃焼させる成分が溶け出し、湿布のように皮膚から吸収されることによって痩せる、と痩身効果を謳っているお手軽ダイエットアイテムです。

お腹や太ももなど痩せたい箇所に貼ると、ピンポイントにその部分の脂肪が燃焼され痩せる効果があるとされ、メーカーによってはさらにパッチ中央の磁石によるツボ刺激が加わることで、パッチを貼っていない全身のダイエットにもつながる、という優れモノです。

運動も食事制限も要らず楽して痩せられる、というのがポイントで、この効果が本物ならば、あらゆるダイエットが要らなるような魔法のアイテムですが残念ながらそうではありませんでした。

景品表示法違反の内容

今回問題となった3社のダイエットパッチはいずれも景品表示法違反であることを指摘されました。

景品表示法とはざっくりいうと、利益を上げるために、ウソや紛らわしい過大広告を打ったり、本来の商品以上の過大な景品が当たったりすると、公平な企業間の競争が阻害されるのでそれを防ぐための法律です。

無果汁なのに果汁50%、輸入牛なのに国産ブランド牛、結婚できないのに成婚率100%、こういうものは誇大広告、虚偽広告で景品表示法違反となります。

今回のダイエットパッチは、景品表示法違反の中でも「優良誤認」に当たるという理由で問題となりました。優良誤認とは、その商品が他の同じような商品と大して変わらないのに、著しく優れていると消費者に誤解させる広告を載せることです。

A社の商品は「貼るとその部分が短期間に痩せる」「個人差があります」
B社の商品も「貼るとその部分が短期間に痩せる」
C社の商品はもっと誇大広告で「お腹に貼ると全身が短期間に痩せる」「通常価格(実際にはない)よりこんなに安いです!」

「絶対100%痩せる」とは言っていませんが、しかし、確かに痩せそうな成分は含まれていて、人によってはすぐ確実に痩せる優れた商品だと誤解、誤認してしまいます。C社のダイエットパッチの場合、さらに、今ならいつもより安く買えるという誤認もあります。

消費者庁から受けた措置

これらの商品は、表示通り部分的に実際にすぐ痩せることはできず、景品表示法違反だと消費者庁から指摘され、行政処分(措置命令)を受けることになりました。

処分の内容は以下の通りです。

1.A社とB社
・今後同じ広告を打たない
・根拠なく同じような内容の広告(すぐに痩せる等)を打たない
・再発防止策と景品表示法違反をしていたことについて役員と社員に周知徹底
・消費者に「過大広告でした」と周知徹底
・A社については「個人差があります」は通用しない

2.C社

A社とB社への処分に加えて

・偽っていた「通常価格」の表示をもうしない

以上の措置命令を受けました。

措置命令を受けると、消費者庁のHPに企業名が載り、課徴金(罰金)を支払うことになります。消費者や取引先からの信用を失い、経営に影響が出ます。知名度が高い会社ならば、報道されさらに信頼を失います。損害賠償請求訴訟を起こされるかもしれません。

C社は、新聞に謝罪・訂正広告を後日出しました。

景品表示法違反になった理由

上で書いた景品表示法違反になった理由をもう少し詳しく見ていきます。A社とB者は「優良誤認」、C社は「優良誤認」に加えて「有利誤認」という違反行為をしていました。

痩身効果について科学的な根拠がないのにそれを謳ったこと、及び価格について錯誤させたこと、が理由になります。

1)A社

「貼るだけで簡単に痩せる」「寝るときに貼っておくだけでダイエット」「セルライトも除去できます」

という広告を、使用前使用後の写真と一緒に掲載。「温熱効果」「むくみ除去」など医学的根拠があり他社の同じような製品よりも優れていると誤認させました(優良誤認)。

「※個人差があります」と断りを入れていましたが、打消し表示は認められませんでした。

2)B社

「貼って寝るだけで痩身効果」「脂肪分解注射の成分が経皮吸収!?」(吸収すると断定していないことに注意)「パッチの主要成分が脂肪の分解と消費を促進」(だから痩せるとは言っていない)

という広告を、使用前使用後の写真と一緒に掲載。やはり他社の製品よりダイエットに即効性があり優れていると誤認させました(優良誤認)。

3)C社

「ダイエットパッチを貼るだけでダイエット成分が経皮吸収され、全身を駆け巡り身体全体が燃焼モードに」

という広告を、体験談や太っていた時のブカブカのズボンを履いているダイエット後の使用者の写真を掲載し特別な効果があると誤認させました(優良誤認)。

合わせて、通常価格がないのに「通常価格59,400円→特別価格11,800円」のように安くなったと錯覚させました(有利誤認)。

その他景品表示法違反になる表現の具体例

今回のダイエットパッチのような優良誤認はよく指摘され措置命令が下っています。実際にあった景品表示法違反の表現を見ていきましょう。優良誤認に加えて他の違反事例も補足します。

優良誤認表示になる表現の具体例

①「国産黒毛和牛A5ランク」→実際はただの国内産の牛肉

②「ノートパソコン完全未使用美品」→実際は1年以上使っていて表面を磨いて新品に見せかけた

③「18金ネックレスがこの価格!」→実際は銀も混ざっている合金の安物だった

④「当結婚相談所の成婚率は90%!」→実際は10%ない。結婚相談所以外のきっかけで出会った人も成婚率に入れる。また、3か月以内に辞めた人は退会者に含めなかった。広告の隅に小さく算出率を掲載。

⑤「当社の青汁を飲めば、高血圧が解消しガンになるリスクが下がり、認知症の予防効果があります」→野菜ジュースなのでビタミンは摂れるかもしれないがそんな効果はない。

消費者庁が優良誤認表示の疑いありと判断した場合、措置命令前に「合理的な根拠」(医学的学術的根拠や統計調査結果等)の提出を求め、それでも疑いが晴れない場合処分となります。

有利誤認表示になる表現の具体例

他社の似た商品、自社の標準内容と比較し、価格が安い、量が多いなど有利な条件であると誤認させるものです。

①「ステーキ300gが定価2000円のところ50%引きで1000円」→定価で販売したことはなく、実際は1000円が定価。相応の肉でまずい。倒産した「ステーキケネディ」。

②「当講座の受講料わずか20,000円。他社は50,000円」→実際には20,000円に加えて、テキスト料、指導料、カウンセリング料などを取られて50,000円を超えてしまう。

③「歯科矯正4000円ぽっきり!」→実際には診察料、初診料のみで、矯正器具や歯科衛生士の施術などは別料金、高額の矯正器具で儲ける。

そのほかの景品表示法違反

①「格安利息で融資します」→融資の場合年利をはっきり表示することが必要。

②「オレンジジュース(実際は無果汁)→無果汁の場合記載が必要

③「このスーツフランスから仕入れました!」→フランスの商社から仕入れても製造元made in ○○はダメ。

など日常の様々な場面で景品表示法違反になりかねない事例が確認できます。

今後の教訓

「同じようなことを他社でもしているじゃないか」

「こんなのセールストークだよ」

と思われる方もいるかもしれません。すべての景品表示法を消費者庁は摘発できませんし、まず証拠の提出を求めるため、公になる前に改善を図ることもできます。

命令の端緒は様々で、消費者庁の「景品表示法違反被疑情報提供フォーム」(https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/contact/disobey_form/)から誰でも情報提供できます。

つまり、効果がなかった消費者だけではなく、ライバル会社や「正義マン」が投稿することもできるため、少しでも「盛った」表示をすると、思わぬ処分を受け、公にされてしまうリスクがあります。以前よりも、措置命令を受けるリスクは高くなっていると思って、ウソをつかないこと、科学的根拠がないことは載せないようにしてください。

在庫はあるのに「限定○個」みたいな表示も景品表示法違反になることがあります。セールストークが乗ってしまうと、足をすくわれる危険性があります。

WEB上で簡単に広告できるようになったため、つい優良誤認表示ととられかねない謳い文句を載せたくなりますが、消費者意識の高まりもあり、どこで誰から撃たれるかわかりません。やはり法律の範囲内で正しく競争しましょう。

まとめ

実際の景品表示法違反「優良誤認」の事例を解説し、関連する具体例にも触れました。似たような広告やWEBページを見たことがある人も多いのではないでしょうか。

科学的根拠や統計によらない誇張表現はNGだと認識しましょう。SNS社会によって情報はあっという間に拡散してしまいます。「あの会社は違法なことをしている企業だ」とネットに広がると、行政処分以上のデジタルタトゥーとして何年も残ってしまいます。

景品表示法違反による社会的制裁も大きくなっていると肝に銘じて正々堂々競争しましょう。

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