シャンプーなどのヘアケア商品を取り扱う事業者は、自社商品をアピールするために、他社商品との差別化を図る必要がありますが、注意しなければならないのが薬機法という法律です。
育毛シャンプーなど、少なからず人体に影響を及ぼすシャンプーを取り扱う場合には、特に注意する必要があります。
今回は、シャンプーと薬機法の関係について解説していきます。
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シャンプーは薬機法(旧薬事法)の対象?
薬機法は、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品に関する運用などを定めた法律です。
一見すると、シャンプーはいずれにもあてはまらないため、薬機法の規制対象ではないとも思えます。
ここで、薬機法の規定を見てみましょう。
【薬機法2条3項】
この法律で「化粧品」とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚もしくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう
この規定は、「化粧品」の定義について定めたものですが、わたしたちが日常的に使うシャンプーやコンディショナーは、ここでいう「化粧品」に該当します。
そのため、シャンプーは薬機法により規制を受ける対象なのです。
多くのシャンプーは薬機法の「化粧品」に該当しますが、薬用シャンプーは薬機法の「医薬部外品」になりますので、注意してください。
シャンプー広告が表現できる効能効果
薬機法は、シャンプーやコンディショナーといった化粧品の広告について、一定の規制を設けています。そのため、シャンプーを販売する際に、自由に効能効果を謳うようなことはできません。
化粧品の効能効果は56項目ありますが、そのうち毛髪にかんする表現は次の16個です。
(2) 香りにより毛髪、頭皮の不快臭を抑える。
(3) 頭皮、毛髪をすこやかに保つ。
(4) 毛髪にはり、こしを与える。
(5) 頭皮、毛髪にうるおいを与える。
(6) 頭皮、毛髪のうるおいを保つ。
(7) 毛髪をしなやかにする。
(8) クシどおりをよくする。
(9) 毛髪のつやを保つ。
(10)毛髪につやを与える。
(11)フケ、カユミがとれる。
(12)フケ、カユミを抑える。
(13)毛髪の水分、油分を補い保つ。
(14)裂毛、切毛、枝毛を防ぐ。
(15)髪型を整え、保持する。
(16)毛髪の帯電を防止する。
治療的な意味合いを示す表現や医師や美容師などが推薦する旨の表現を使用することは禁止されているため、注意するようにしましょう。
※化粧品の効果として表現できる56項目はこちらのページで解説しています。
薬用シャンプーの広告表現
薬用シャンプーは薬機法の「医薬部外品」になり、表現できる範囲が異なります。広告で表現できる効能効果の範囲は以下です。
毛髪・頭皮の汗臭を防ぐ。
毛髪・頭皮を清浄にする。
毛髪・頭皮をすこやかに保つ。※
毛髪をしなやかにする。※
※この2つは二者択一
シャンプー広告で髪質改善は?
シャンプーの広告で髪質改善と表現するのは薬機法違反になるおそれがあります。
<認められない表現>
・毛髪補修成分が傷んだ髪を再生
・傷んだ髪を補修して健康な髪の再生を促す
・毛髪補修成分が髪の内部に浸透し、傷んだ髪が回復する
・毛髪を補修し、バージンヘアが甦る
・傷んだ髪を補修して本質から髪質改善
・ダメージヘアを補修(広告全体として治療的に回復する内容である場合)
・傷んだ髪を修復します
・傷んだ髪が回復します
・健康な髪が甦ります
髪質そのものが変わるような表現は認められていませんが、次のような表現は認められています。
<認められる表現>
・髪を補修して髪の質感をととのえる
・傷んだ髪の毛先まで補修してなめらかに
・○○成分が髪の内部まで浸透し、髪のダメージを補修します
・傷んだ髪の芯まで補修します
キューティクルと薬機法
キューティクルにかんする表現については以下が認められています。
・髪の表面の凸凹を補修し、自然で美しいつや髪を
・キューティクルをしっかり密着させてなめらかな状態に補修
・補修成分がたんぱく繊維の隙間を埋めて補強し、キューティクルをコーティング補修
・〇○成分が傷んだ髪の表面に吸着して、しなやかな状態に補修します
くせ毛と薬機法
医薬部外品のパーマネント・ウェーブ用剤であれば、「毛髪にウェーブをもたせ、保つ。くせ毛、ちぢれ毛又はウェーブ毛髪をのばし、保つ。」と表現することができます。
シャンプーの誇大広告例
「このシャンプーを使えば、あなたの髪が生まれ変わり、サラサラになります」
⇒髪が再生したかのような意味合いになるため、薬機法違反になるおそれがあります。
「シャンプーで髪の毛のボリュームがアップします」
⇒シャンプーは育毛効果を表現できないので、薬機法違反になるおそれがあります。
育毛シャンプーとは?薬機法違反?
「育毛シャンプー」は、頭皮を清潔な状態に保ちながら、抜け毛や薄毛を予防するためのシャンプーです。
数多くの育毛シャンプーが市場に出回っている昨今ですが、そもそも育毛シャンプーは合法なのでしょうか。
通常のシャンプーが薬機法上の「化粧品」にあたることは前述したとおりですが、化粧品を広告する場合に表示できる効能効果に「育毛」は含まれていません。
そのため、育毛シャンプーを広告する場合には、せいぜい「頭皮や毛髪を清潔に保つ、毛髪にうるおいを与える」といった表現しか使うことができず、「育毛」という表現を使ってしまうと、薬機法違反になります。
つまり、「育毛シャンプー」をそのまま販売すると、薬機法違反になるのです。
育毛剤が表現できる効能効果
育毛シャンプーに似た商品に「育毛剤」があります。
「育毛剤」については、「育毛」という表現を効能効果として謳うことが可能です。なぜなら、育毛剤は、薬機法上「化粧品」ではなく「医薬部外品」に分類されているからです。
「医薬部外品」とは、医薬品と化粧品の中間に位置づけられるもので、身体に対する作用が緩やかなものをいいます。
医薬部外品には「育毛剤」という項目が設けられており、「育毛、脱毛予防」といった表現を広告で使うことが認められています。
育毛シャンプーを売るための仕組み
薬機法に違反しそうに思えますが、ドラッグストアなどで育毛シャンプーを見かけることは少なくありません。
ここには、「育毛シャンプー」を売るための仕掛けがあるのです。
実は、育毛シャンプーは「育毛剤」と抱き合わせで販売されています。あくまで、育毛剤がメインであり、育毛シャンプーはそのサポート的役割を果たす意味合いで一緒に販売されているのです。
このような販売形態を採ることにより、「育毛」という表現を使うことが可能になります。
たとえば、育毛剤の効能効果として「育毛」という表現を使い、育毛シャンプーについては「育毛環境を整える」「育毛剤の浸透をサポートする」といった表現にとどめれば、薬機法に抵触することはありません。
なぜなら、この場合、育毛シャンプー自体に育毛作用があるとは一言も謳っていないからです。
このように、育毛剤とセットにすることで育毛シャンプーを販売することができるようになります。
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まとめ
シャンプーを売る場合に色々と表現したいことはあると思いますが、規制がありますのでその範囲で表現するようにしましょう。
また、育毛シャンプーを単体で販売することは薬機法に抵触することになるため注意が必要です。育毛シャンプーを販売するためには、育毛剤とセットで販売することが必要になるということを覚えておきましょう。
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