インパクト大!改正景品表示法の課徴金制度施行日と概要・ポイント[2016]

景品表示法が改正され、違反業者に課徴金が課せられる課徴金制度が導入されることが決まりました。この課徴金制度は大きなインパクトがあります。

違反業者の中には、この制度の影響で一気に倒産に追い込まれるところも出てくるのではないかと思います。

この課徴金に関する改正景品表示法は、2016年(平成28年)春頃の施行予定となっていますが、施行日までに、この課徴金制度に関する改正景品表示法の内容を熟知し、対策を講じておくことは非常に重要です。

今回は、この2016年改正景品表示法(課徴金制度)の概要やポイントについて解説します。
大手企業の景品表示法違反による摘発も増えていますので、ご注意ください。

目次

課徴金制度の施行日

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景品表示法については、2008年(平成20年)3月に、課徴金制度導入を含む改正法案が国会へ提出されました。

しかし、その後しばらくの間は具体的な審議が未了のまま廃案となり、検討事項として残されている状態でした。

ところが、近年食品偽装などの問題事例が続発し、消費者の利益が害される危険性が高まったため、広告規制を強化して消費者の安全を守るため、広告規制に関する法律である景品表示法の改正が決定しました。

2014年(平成26年)3月11日に改正景品表示法が閣議決定されて、課徴金に関する改正景品表示法は2014年(平成26年)11月19日に成立し、同月27日に公布されるに至りました。

この課徴金制度を含む改正景品表示法の施行は、2016年(平成28年)春頃に施行される見込みで具体的な日付はまだ未定です。

なお、ここで注意しなければならないのは、2014年(平成26年)内において、景品表示法が2度改正されたという点です。

1度目の改正(課徴金制度以外の改正部分)についてはすでに2014年12月1日に施行済みとなっています。

課徴金制度については2度目の改正であり、この施行済みの分とは異なりますので、混乱しないようにしましょう。

課徴金制度の概要と7つのポイント

ポイント
課徴金制度の概要はどのようになっているのでしょうか。

理解に必要な前提知識

その前提として、景品表示法の規制内容について理解しておく必要があります。

景品表示法において規制される広告表現には、
「優良誤認表示」
「有利誤認表示」
「その他誤認されるおそれがあるとして指定される不当表示」
の3類型があります。

「優良誤認表示」は、商品やサービスの「品質や規格等」が優良であると誤認させるような表示のことです。

「有利誤認表示」は商品やサービスの「価格」が有利であると誤認させるような表示です。

「その他誤認されるおそれのある表示」とは、内閣総理大臣が一般消費者に誤認されるおそれがあるとして指定する不当表示のことです。

課徴金制度が導入、適用されるのは、上記の3類型のうちでも「優良誤認表示」と「有利誤認表示」です(8条1項)。

なお、消費者庁長官が商品・サービスの内容についての広告が優良誤認表示に該当するかどうかを判断するために必要があると認める場合に,業者に対し,合理的な根拠資料の提出を求め,その資料が提出されないときにはその表示を不当表示とみなすという「不実証広告規制」についても、定められた期間内に資料提出がなく優良誤認表示と見なされた場合には不当表示と確定されて、課徴金が課せられることとなります(8条3項)。

このように、課徴金制度の適用対象行為が明らかになったところで、課徴金制度の概要をポイント別に見てみましょう。

①対象行為

課徴金制度は、上記のとおり、優良誤認表示をした場合有利誤認表示をした場合並びに不実証広告規制の適用ケースにおいて、合理的な根拠資料の提出がなかった場合に当該広告をした業者に対し課徴金が課せられる制度です。

ただし、この課徴金には下限が設けられていますので、中小や零細の業者には適用されにくくなっているという配慮はあります。このことについては後で説明します。

②対象期間

次に、課徴金が算定される元となる期間を見てみましょう。
課徴金の計算においては、対象期間における売上金額の〇%という形で計算することとされています。

そしてこの課徴金額の計算根拠となる期間は、「不当表示をした期間」及び「不当表示を止めた日から6か月以内に取引をした日」までです。

ただ、これについては、最長でも期間の最終日から遡って3年間となっています(8条2項)ので、3年以上の期間が計算対象になることはありません。

このように、不当表示を止めた後に取引をした期間の売上げについても、課徴金算定の対象となることがあることには注意しましょう。

なお、業者が誤認解消のため、内閣府令で定める措置を採った場合については、例外的にその日が期間の最終日とされます。

③主観的要素(過失による不当表示)

課徴金制度導入の際、過失によって不当表示をした場合にまで課徴金を課すべきかどうかについては議論がなされました。

この点について、立法時には課徴金の要件としてどのような主観的要素を要求するべきかについて議論がなされましたが、結果としては消費者の保護という景品表示法の改正目的を実効化するためにも、過失による不当表示であっても課徴金の対象に含めることが決定しました。

ただ、「違反事業者が不当表示であることを知らず」、かつ「不当表示であることを知らないことについて相当の注意を怠ったものではない」と認められる場合は、課徴金は賦課されないこととなっています(8条1項ただし書)。

この「相当の注意」についての理解ですが、通常の商慣習に従っていれば、「相当の注意」を尽くしたことになるという理解です。この部分は曖昧なままですので、今後その基準を明確にするためにガイドラインが作成される予定です。

事業者側にとっては、過失、すなわち注意義務違反による不当表示をしないことが重要になりますが、過失の内容は一義的に明らかでないため、今後の明確なガイドラインの策定が待たれるところです。

④自主申告による課徴金額の減額

課徴金制度においては、違反事業者がその違反行為を自主申告した場合に、課徴金額が減額される制度が設けられています。具体的に減じられる金額は課徴金の2分の1の金額とされています。ただし、自主申告があるといっても、調査が入ったことによって事業者が課徴金納付命令があることを予測して申告がなされたときには減免されません(9条)。

⑤自主返金による減免

違反事業者が、定められた手続に従って、顧客に対して自主的に返金を行った場合には、その返金額に応じて課徴金の減免が受けられます(10条、11条)。

この自主返金によって減免される課徴金の金額は、その返金額に応じて決定されるものであり、自主申告による減額とは異なって全額の免除を受けることも可能です。

違反事業者が自主返金による減免を受けるためには、具体的には実施を予定する返金計画を作成した上で、内閣総理大臣の認定を受け、その計画に従って返金措置を実施して、さらには期限内に報告することが必要となります。

⑥除斥期間

除斥期間(じょせききかん)とは、法律関係を早く確定させるため、一定期間経過後に権利を消滅させる制度です。

課徴金制度には除斥期間も定められています。具体的には、課徴金の対象となる行為を止めた日から5年を経過すれば、当該課徴金は賦課されないこととなっています(12条7項)。

⑦弁明の機会の付与

課徴金が課される前提として、違反事業者にも手続き的な保障があります。具体的には、事業者には弁明の機会が与えられています(13条~15条)。

課徴金制度に違反した場合の罰則・罰金

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課徴金制度においては、違反事業者に対し、具体的にどのくらいの金額が課されることとなるのでしょうか。

課徴金として課される金額は、上述の課徴金の「対象期間」における対象商品・役務の「売上額の3%」となっています。

商品ごとに判断されますので、単品リピート通販ビジネスをしている事業者は、大きなリスクになり、今よりも法律への注意が必要となってきます。

ただし、この計算によって算出された課徴金の金額が、150万円未満の場合は、課徴金は付加されないこととなっています(8条1項)。課徴金が150万円未満と言うことは、対象となる売上額が5000万円未満という場合です。

このように、課徴金の額に最低額がもうけられたことにより、中小や零細の事業者に対しては課徴金が課されるケースが限定的です。

なお、上記課徴金の下限制度によって、売上金額が少ないため課徴金が課されないとしても、措置命令等の違反によって別途処分等を受けることはあります。

そして、この課徴金の金額については、上述のとおり自主申告による減額や自主返金による減免措置もあります。

まとめ

以上、2016年春頃に施行予定となっている改正景品表示法において導入予定の課徴金制度について解説しましたが、いかがでしたか。

消費者の保護を目的として成立した改正景品表示法ですので、事業者に対しては課徴金という重いペナルティが課せられることとなったわけですが、課徴金には下限がもうけられるなどして中小や零細の事業者への過度な負担が抑えられているなどの配慮はあります。

また、今後の課題として、過失による課徴金が課される場合について、事業者が注意義務を果たしたと言えるためのガイドラインの制定が待たれるところですので、今後はこのガイドラインの制定の動向にも注意しておく必要があります。

いずれにしても事業者にとっては重い負担となる課徴金制度ですので、くれぐれもこのようなペナルティを受けることのないよう、以前にもまして慎重な態度で広告表示内容に配慮していくことが大切であると言えるでしょう。

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