健康食品を取り扱う場合、その広告表現や表示について各種の法律による規制を受けますが、健康食品については健康増進法による規制を受けることにも注意しなければなりません。
健康増進法は、「国民の健康維持と現代病の予防」を目的とする法律ですが、食品の広告表示方法に禁止事項を設けていたり、食品の分類や分類された食品ごとの表示方法についても細かく定めていたりしますので、健康食品を取り扱う場合は、こういった健康増進法による規制に従う必要があるのです。
そこで今回は、健康食品を取り扱う際に必須の知識となる健康増進法の基本的な考え方や、健康増進法による具体的な規制内容について解説します。
健康増進法とは?目的と概要
健康増進法とは、国民の健康維持と増進、現代病の予防などを目的として定められた法律です。国民の総合的な健康推進について基本的な事項を定めており、また国民の健康の増進を目的とした各種の措置を講じることによって、国民保健の向上を図っています。
たとえば、健康増進法は、国民自身にも健康維持に関する義務を課しており、この法律を元に健康診断や保健指導が行われていますし、施設管理者に対する受動喫煙についての規制などの定めもあります。
健康増進法は、国民の健康を守るという観点から食品の表示に関しても規制しており、食品の栄養成分についての表示方法を定め、特定保健用食品などの食品の分類方法や許可制度についても定めています。
もちろん、健康食品も食品の一種である以上、この健康増進法による規制を受けることになります。
健康増進法の健康食品とは?
消費者庁から健康食品の規制やどんな広告が虚偽誇大表示になるのか、わかりやすく説明するために「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」という資料が公表されていますが、そこでは健康増進法に定める健康保持増進効果等を表示して食品として販売するものを「健康食品」としています。
令和4年の改正では、明らか食品も健康食品に含まれることになりました。
保健機能食品の存在
健康食品の中には、保健機能食品と呼ばれる食品があります。
保健機能食品には以下が含まれます。
・特定保健用食品
・栄養機能食品
・機能性表示食品
特定保健用食品は、許可を受けた機能性について表示できます。
栄養機能食品は、国が定める基準に係る栄養成分の機能性を表示できます。
機能性表示食品は、事業者の責任で、科学的根拠を基に届け出た内容について機能性を表示できます。
健康保持増進効果等の内容
(1)健康の保持増進の効果
・ア 疾病の治療又は予防を目的とする効果
・イ 身体の組織機能の一般的増強、増進を主たる目的とする効果
・ウ 特定の保健の用途に適する旨の効果
・エ 栄養成分の効果
※アとイについては、医薬品的な効能効果であり、薬機法上の承認を得ていない限り、効能効果などについて表示することはできません(薬機法 第68条)。
※ウについては、消費者庁長官の許可を受けないと表示できません(健康増進法 第43条第1項)。
(2)内閣府令で定める事項
・ア 含有する食品又は成分の量
・イ 特定の食品又は成分を含有する旨
・ウ 熱量
・エ 人の身体を美化し、魅力を増し、容ぼうを変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つことに資する効果
(3)健康保持増進効果等を暗示的又は間接的に表現するもの
・ア 名称又はキャッチフレーズにより表示するもの
・イ 含有成分の表示及び説明により表示するもの
・ウ 起源、由来等の説明により表示するもの
・エ 身体の組織機能等に係る不安や悩みなどの問題事項を例示して表示するもの(令和4年改正で追加)
エの具体例
「こんなお悩みありませんか?疲れが取れない。健康診断で○○の指摘を受けた。運動や食事制限が苦手。いつもリバウンドしてしまう。メタボが気になる。」、「最近、体力の衰えを感じるのは、○○が不足しているせいかもしれません。」、「年齢とともに、低下する○○成分」
・オ 新聞、雑誌等の記事、医師、学者等の談話やアンケート結果、学説、体験談などを引用又は掲載することにより表示するもの
・カ 医療・薬事・栄養等、国民の健康の増進に関連する事務を所掌する行政機関(外国政府機関を含む。)や研究機関等により、効果等に関して認められている旨を表示するもの
令和4年の改正では、健康保持増進効果等の内容や具体例について多数の追加がありました。違反広告が後を絶たず、消費者被害も多いためだと思われます。
健康増進法と薬機法と景品表示法の違い
健康食品の規制がよく出てくるのが、薬機法や景品表示法ですが、違いがわかりにくいと感じる人もいるでしょう。
具体的にどう異なるのか簡単に表で説明します。
健康増進法 | 薬機法 | 景品表示法 | |
目的 | 国民の栄養改善や健康増進措置で国民保健の向上を図ること | 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の品質と有効性及び安全性の確保、研究開発促進で保健衛生の向上を図ること | 不当な景品類や表示による誘引防止により、消費者の自主的かつ合理的な選択を確保して、一般消費者の利益を保護すること |
対象 | 健康増進事業 | 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品 | 商品・サービスの景品類や表示 |
規制対象 | 何人も | 何人も | 事業者 |
罰則 | 指導、勧告、懲役、罰金 | 行政処分、課徴金納付命令、懲役、罰金 | 措置命令、課徴金納付命令、懲役、罰金 |
健康増進法の違反事例
※クリックで拡大可能。引用元:健康増進法の勧告事例
平成28年(2016年)3月1日に、ライオン株式会社に対して健康増進法の勧告が出ました。
「臨床試験で実証済み!これだけ違う、驚きの『血圧低下作用』。」
「50・60・70・80代の方に朗報!」、「毎日、おいしく血圧対策。」
「“薬に頼らずに、食生活で血圧の対策をしたい”そんな方々をサポートしようとライオンが開発した『トマト酢生活』。」
特定保健用食品の表示とともに行った上記の表示が、この商品が血圧を下げる効果があるという表示についてあたかも消費者庁長官から許可を受けているかのように示し、また、医薬品等の治療によることなく、この商品を飲むだけで高血圧を改善できるかのように示す表示をしていた、として健康増進法の虚偽誇大表示であると、判断されました。
健康増進法の罰則
健康増進法では、第65条1項で虚偽誇大表示を禁止しています。
何人も、食品として販売に供する物に関して広告その他の表示をするときは、健康の保持増進の効果その他内閣府令で定める事項(次条第三項において「健康保持増進効果等」という。)について、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならない
対象は「何人も」となっており、商品の販売事業者に限らず、広告代理店や新聞・雑誌・Webメディア事業者も対象に含まれます。
違反した者に対して、消費者庁は、健康増進法第66条第1項に基づき、当該表示に関し必要な措置をとるべき旨の勧告をすることができ、勧告を行った際は公表することができます。
さらに、勧告を受けた者が、正当な理由なくその勧告に係る措置をとらなかったときは、その者に対して、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができます(健康増進法第66条第2項)。そして命令に違反した者には、6月以下の懲役又は100万円以下の罰金が科されます(健康増進法第71条)。
まとめ
以上、健康食品を取り扱う際に注意が必要な健康増進法について解説しましたが、いかがでしたか。
国民の健康維持・増進を目的とする健康増進法においては、食品の表示についての禁止事項が定められていますし、各種の食品の機能による分類や表示方法、特定の食品についての国による許可制度についても定められています。
健康食品の取り扱いの際には、これらの健康増進法の規制内容に充分注意して、法律に違反することのないよう、しっかりと理解しておくことが必要です。参考にしてみてください。
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