不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)の改正や違反事例

2016年4月から課徴金制度が始まった「景品表示法」に最近注目が集まっています。

景品表示法の正式名称は、「不当景品類及び不当表示防止法」です。

今回は最近の改正点と違反事例に絞って説明します。

目次

不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)とは?

不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法。以下、「景表法」といいます)は、商品やサービスに過大な景品をつけたり、商品やサービスの品質や内容、価格などを偽ったりといった広告行為を規制して、一般消費者を保護することを目的としています。

最近の「不当景品類及び不当表示防止法」の改正内容


平成26年には、春と秋の2度にわたって景表法が改正されました。

当時、ホテルやレストランでメニュー表示と異なる食材を料理に使用するなどの偽装が立て続けに明るみになったり、高齢者を中心とした悪質商法の被害が深刻化していたりと、消費者の安全の揺らぎが社会問題化していたのは記憶に新しいところです。

これら一連の改正は、どちらも私たちの生活に重要な関連をもつものですので、それぞれの改正についてエッセンスを見てみましょう。

平成26年春の改正

行政の監視指導体制の強化(第15条・第10条・第12条関係)

平成26年春の景表法改正以前は、事業者に対する監視・指導は消費者庁が中心となって行っていましたが、中央の一省庁にすぎない消費者庁だけでは、監視の目が行き届く範囲にはおのずと限界がありました。

そこで、中央政府においては、消費者庁を含めた関係省庁が密接な連携のもとに情報交換や調査を行うことにより監視体制を強化するとともに、都道府県知事にも景表法に基づく措置命令や資料提出要求を行う権限が与えられることとなりました。

それだけでなく、景表法改正と同時に改正された消費者安全法において、消費者の安全確保のために活動する「消費生活協力員」や「消費生活協力団体」を育成・確保することが盛り込まれました。この消費生活協力員・団体も、各地域の監視に協力して関係各所への情報提供を行うという役割を担いますので、監視体制がさらに強化されたといえるでしょう。

事業者の表示管理体制の強化(第7条・第8条・第8条の2関係)

冒頭で述べた食品偽装問題等によって、景表法をはじめとする諸法令を遵守する意識が低い事業者の存在があぶり出されました。

このため、事業者の表示等に関するコンプライアンスを強化することを目的として、事業者自身において表示に関する事項を適正に管理するための体制を整備させることとしました。

平成26年秋

プレゼン

課徴金制度の導入

不当表示に対する課徴金制度については、過去に一度法案が提出されていましたが、審議されないまま廃案となっていた経緯がありました。しかし、平成21年に消費者庁が発足したあと、消費者被害の救済の観点から改めて課徴金制度の検討が行われました。

その結果として、秋の改正法で、不当な表示を行った事業者に対する課徴金制度が制定されるに至り、この課徴金制度は平成28年4月から運用がスタートしました。

課徴金納付命令の対象となる行為は、不当表示のうち「優良誤認行為」(第5条第1号)と「有利誤認表示」(同条第2号)の2つです。

優良誤認表示とは、商品やサービスの品質などを、実物の商品や同業他社の商品と比べてとても良いと思わせる表示のこと、
そして有利誤認表示とは、商品やサービスの価格などの取引条件を、実際の条件や同業他社の条件と比べてとても有利だと思わせる表示のことでしたね。

疑わしい表示をしている事業者に対しては、表示の裏付け資料を提出させますが、合理的な根拠を示す資料が提出されず、事業者からの正当な弁明もない場合には、これが不当表示とみなされ、課徴金の納付が命じられることとなります。

この課徴金の金額は、不当表示をした商品やサービスの売上額の3パーセントとなっていますが、事業者による自己申告や、消費者への被害回復を促すために、課徴金額を減額する制度も設けられました。

具体的には、違反行為を自主申告した事業者には、課徴金額を2分の1に減額し(第9条)、また、事業者が消費者に対して適正に返金を実施した場合には、課徴金額が返金額のぶんだけ減額されます。課徴金額より返金額のほうが大きければ、課徴金を納付する必要はなくなります。

最近の違反事例

驚く女性
ここで、最近の景表法違反事例をみてみましょう。

事例1:ココナッツジャパン株式会社(平28・3・31消表対472)

ココナッツジャパンは、「エクストラバージンココナッツオイル」・「エクストラバージンココナッツオイルカプセル」という商品について、自社ウェブサイトの「Health ココナッツオイルと健康」というコーナーで、2年弱にわたり以下のような記事を掲載していました。

・「普段の食事にココナッツオイルを足すだけで栄養がグーンとアップ!」
・「ココナッツは万能の効能を持った魔法のアイテム!」
・「ココナッツオイルには整腸作用がある!?」
・「ココナッツオイルで認知症の予防・改善」
・「ココナッツオイルでガン予防」
・「ココナッツオイルでウイルス感染を防ぐ」
・「ココナッツオイルが心臓病を予防する理由」
・「ココナッツオイルがアルツハイマー病に効果がある理由」

これらのウェブ上の記事は事実上この商品の広告に該当するものであり、この商品を摂取することで認知症やガンなどの予防ができる効果等があるかのような表示をしていたといえることから、消費者庁がココナッツジャパンに対して裏付け資料の提出を求めましたが、同社から出された資料では、これらの表示の合理的な根拠を見出すことができませんでした。

そのため、消費者庁は同社に対して、これらの表示が景表法に違反する優良誤認表示にあたるものであったことを一般消費者に周知徹底するとともに、社内で再発防止策を講じ、今後同様の表示を行わないよう命じました。

事例2:株式会社えがお(平28・3・30消表対466)

えがおは、「えがおの黒酢」という商品について、自社ウェブサイトで2年以上にわたり、「アミノ酸一般食酢の120倍のえがおの黒酢でダイエットサポート!」、「『黒酢』に含まれたアミノ酸のメラメラパワー!」などという記述を行い、この商品を摂取するだけで、運動や食事制限なくダイエットに効果があるかのような表示をしていました。

これについて、消費者庁がえがおに対して裏付け資料の提出を求めましたが、同社から出された資料では、これらの表示の合理的な根拠を見出すことができませんでした。

そのため、消費者庁は同社に対して、これらの表示が景表法に違反する優良誤認表示にあたるものであったことを一般消費者に周知徹底するとともに、社内で再発防止策を講じ、今後同様の表示を行わないよう命じました。

まとめ

ここで紹介した両事例とも、課徴金制度が開始される前の行為に対する措置命令ですが、さきほど述べたとおり優良誤認行為自体は課徴金制度の対象となりましたので、今後は同様の行為に対して課徴金が課される可能性が高いといえます。

両事例に共通するのは、「自社のウェブサイトに掲載された記事が裏付けに乏しく、優良誤認表示にあたると判断されたこと」です。東京都生活文化局が平成26年度の1年間で24,000件のインターネット広告を調査したところ、そのうち実に336事業者・398件もの不当表示が確認され、そのほとんどが優良誤認表示・有利誤認表示にあたるものであったとのことでした。

つまり、広告60件に1件は不当表示が含まれている計算になります。かなり多いという印象を受けられるのではないでしょうか。

監視機能が強化されたとはいえ、インターネット上には広告や記事を安価で簡単に掲載することができるため、どうしてもいたちごっこの様相を呈してしまいます。また、インターネットに限らず雑誌などでも、PRであることを明記しない記事広告が問題化しています。

企業の広告活動にますますモラルが問われる時代になってきたものの、消費者の側でも、広告を鵜呑みにすることなく、商品やサービスの内容を冷静に判断する慎重さが必要だといえます。

参考になったらシェアをお願いします!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

薬機法や景品表示法について情報発信をしています。TwitterFacebookのフォローをお願いします。

コメント

コメントする

目次