ダイエット医薬品を個人輸入する時の注意点(MDクリニックなど)

ダイエットは、市場が大きいこともあって海外から医薬品を輸入する方がいます。
ただ、海外医薬品は様々な注意が必要です。

そのことについて説明していきます。

目次

海外医薬品の個人輸入が行われる背景

海外個人輸入
現在、日本国内では、製薬会社や研究機関などによる研究開発によって、たくさんの種類の医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品(以下、「医薬品等」といいます)が流通しています。

これらの医薬品等は、思わぬ効き目によって患者さんの体に害を及ぼすことのないよう、何度も有効性や安全性についてのテストを繰り返したうえ、厚生労働省が審査して承認することによって、はじめて市場に流通することになります。

しかし、海外で開発され流通している医薬品等は、効果や安全性が実証されているものであったとしても、その承認審査手続が必要であることによって、日本国内で一般的に使用されるまでにはかなりの時間がかかる(ドラッグ・ラグ)のは周知の事実だと思います。海外の医薬品を営業として輸入することには大きな制約が課されているのが現状です。

日本では、1990年代後半から、インターネットの普及に伴って、海外で市販されている医薬品等を個人で簡単に輸入できるようになってきました。また、すでに日本国内で流通している医療用医薬品や、後発医薬品(いわゆるジェネリック医薬品)についても、医師の診察を受けて処方箋を発行してもらうことなく、海外から個人輸入することが行われているようです。

特に、ダイエットや薄毛、EDなどの、美容やコンプレックスに関する医薬品等については、医師等に相談すること自体のハードルがやや高めであるといえますから、個人輸入によって医薬品等を入手したいという心情も理解できなくはありません。

今では、そのような海外の医薬品等の輸入を代行する業者もかなり数多く存在しています。なかには、まるで日本国内の通販サイトで買い物をするかのように、手軽に海外の医薬品等を入手できるサイトもありますが、法違反が強く疑われる集客手法をとっていることも少なくありません。

次に、そのような海外の医薬品等を輸入して服用することについての留意点や問題点をみていきましょう(なお、以下では「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」の略称として「薬機法」を用います)。

個人輸入した医薬品の取扱い

医薬品
最初に述べたとおり、海外の医薬品等は、厚生労働省の承認なしには日本国内に流通させることができません。では、海外の医薬品等を自分で使用するために個人輸入する(海外から持ち帰る場合を含みます)ことについては、どのような規制があるのでしょうか。

まず、原則から確認します。日本国内で承認されていない医薬品等を輸入するためには、関税法及び薬機法の規定に基づいて、輸入の許可を得ておく必要があります。医薬品等に関しては、以下のために輸入する場合(つまり、営業として輸入するのでない場合)に、厚生労働省地方厚生局に申請を行い、薬事監視専門官による証明を受けることとなります。この証明を「薬監証明」といいます。

・個人使用
・医師や歯科医師による治療用
・企業や医師等による臨床試験用
・試験研究用
・社内見本用
・展示会用 など

このうち最初の2点、個人使用または医師等による治療用として医薬品等を輸入する際は、種類と数量によっては薬監証明を受ける必要がない、という特例的な取扱いがあります。輸入する医薬品等を自分自身のために使用する(第三者に売却あるいは譲渡することは許されません)か、あるいは医師等が患者の治療目的に使用することが明らかであって、数量が規定以内に収まっていれば、薬監証明を受けなくても、税関の確認だけで輸入することができます。

ここでいう規定の数量とは、おおむね以下のとおりとなります。
・外用剤(軟膏などの外皮用薬、点眼薬など)
1品目あたり24個以内
・処方せん薬(医師による処方が必要とされる医薬品)
用法用量からみて1か月分以内
・それ以外の医薬品等
用法用量からみて2か月分以内

なぜこのような例外が認められているのかといいますと、日本国民が海外で受けた投薬治療を継続する必要性や、日本を訪れる外国人が長期的に服用している医薬品を持ち込む必要性があるというのが、もともとの制度趣旨です。

そして、この規定を根拠に、一部の医薬品等を比較的簡単に個人輸入することができるようになっているのです。ただし、自己判断で服用すると重大な健康被害を引き起こすおそれがある医薬品等についてはこの限りではなく、医師の処方なしに輸入することはできません。

海外医薬品等の効果や安全性

ナースとドクター
いくら海外から医薬品等を個人輸入することができるとはいっても、健康被害の不安は常につきまとうものです。

厚生労働省による承認審査や輸入時の薬監証明は、有効性や安全性の確保という観点からすればやはり必要不可欠なものだといえますが、そのような段階を全部すっ飛ばして個人輸入するとなると、その医薬品等の有効性や安全性に誰かが責任を持ってくれるわけではなく、いわゆる自己責任が要求されることにもなります。海外の医薬品等がもつ問題点は、大きく以下の3つに分けられるでしょう。

①品質・有効性・安全性が確認されていないこと

日本国内で流通している医薬品等はいずれも、冒頭でも述べたとおり、開発に莫大な費用を掛け、何度もテストを重ねたうえで、さらに厚生労働省が審査をしてやっと承認されたものばかりです。

そのため、日本国内の医薬品等は一定の品質が担保されているといえます。日本国内の医薬品を適正に使用したにもかかわらず発生した健康被害については公的な救済制度(医薬品副作用被害救済制度)も準備されています。

しかし、海外の医薬品等が、すべて日本と同様の厳しい検査をパスしているわけではありませんし、そもそも製造段階での技術面や衛生面などに問題があることで、健康に害を及ぼす可能性もあります。

また、海外の当該国家では医薬品に当たらないような健康食品やサプリメント等であっても、日本で医薬品とされている成分が含まれていることもありえます。もちろん、海外の医薬品等については、前述の被害救済制度の対象にもなりません。

②ホンモノであるとは限らない

海外では、正規メーカーの医薬品等であるかのように装った偽物が流通していることがあります。

また、必ずしも成分や有効性・安全性について正確な表示がされているとも限りません。思ったような効果が出ないだけならまだしも、十分な安全性が確立していないような成分を知らず知らずのうちに摂取することにもつながりかねないといえます。

③医師等が副作用に対応できない

海外の医薬品には、説明書があっても外国語が理解できず、その成分等がそもそも明らかでなかったり、用法・用量を守れなかったりすることによって、思いもよらない副作用が発生するリスクが潜んでいます。

もしも当該医薬品等の副作用らしきものが発生して病院へ駆け込んだとしても、どんな医薬品等のどんな成分によってその副作用が起こっているのかについて、医師や薬剤師等が状況を正確に把握して処置をすることは困難だといえます。

ダイエット医薬品の健康被害例 ―「MDクリニックダイエット」など

禁止
ここで、海外製のダイエット医薬品を服用したことによって、実際に日本国内で起こってしまった健康被害を紹介します。

最新情報はこちらを参照(厚生労働省:健康被害情報・無承認無許可医薬品情報

①タイ製医薬品

タイ製のダイエット医薬品として、「MDクリニックダイエット」・「ホスピタルダイエット」と称される製品があります。海外の医薬品でアリながら、インターネット上でも、取扱店舗や口コミが数多く検索に引っ掛かってくる有名な製品のようです。

これらの製品は、さまざまな色の錠剤とカプセル剤とを数種類ずつ服用するタイプの医薬品であるとみられますが、平成14年以降、毎年のように全国各地で健康被害と疑われる例が確認されています。平成17年には神奈川県で、平成21年と平成23年には東京都でそれぞれ死亡例が報告されているほか、肝機能障害や甲状腺異常、動悸、吐き気、幻覚・幻聴などといった重篤な副作用が発生しているようです。

発生する副作用の種類が多岐にわたっているのは、製品によって成分が異なることに由来しますが、なかには、ジアゼパム・フェノバルビタールなどといった向精神薬や、シブトラミンという国内未承認の成分が含まれている製品もありました。そのような、用法・用量を厳しく守るべき医薬品が、個人輸入により出回ってしまっているのが日本の現状となっています。

②中国製ダイエット健康食品(未承認医薬品)

多少古い報告の事例となりますが、平成14年4月から平成18年7月までの4年あまりのあいだに、日本全国で、45種類の中国製のダイエット健康食品が、800件近くの健康被害を引き起こしていたことが判明しています。

報告された健康被害のほとんどが女性に起きたものであり、なかでも多数の健康被害を発生させたのは以下の3種類の製品でした。

・「御芝堂減肥●嚢」194人
肝機能障害事例 135人。うち1人が死亡(東京)、53人が入院。
甲状腺障害事例 19人。うち1人が入院。
詳細不明 40人。うち1人が入院。

・「▲之素●嚢」197人
肝機能障害事例 120人。うち2人が死亡(岩手、埼玉)、71人が入院。
甲状腺障害事例 32人。うち3人が入院。
詳細不明 45人。うち5人が入院。

・「茶素減肥」 34人
肝機能障害事例 21人。うち13人が入院。
甲状腺障害事例 1人
※ ●=「月交」(にくづきに交)、▲=「糸千」(いとへんに千)

まとめ

これらの情報は、厚生労働省等が、後記ウェブサイトをはじめとしていろいろな形での啓蒙を進めているところですが、他方で、海外の医薬品等の情報やその製品自体を入手することも簡単になってきています。

ダイエット医薬品・健康食品に限らず、さまざまな医薬品等の健康被害が報告されており、医師等に相談することなく海外の医薬品等をむやみに輸入して使用することは本当に危険度が高いものだと認識させられます。

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