特定保健用食品という名前を聞いたことがありますか?特定保健用食品という言葉には聞き覚えがなくても「トクホ」といえば、ぴんときた方もいるかもしれません。
特定保健用食品は我が国の国民の健康を図るため、正しい食品選びができるようにするための制度です。これから詳しく解説していきます。
特定保健用食品とは
特定保健用食品とは、消費者庁の定義によれば「許可等を受けて、食生活において特定の保健の目的で摂取をする者に対し、その摂取により当該保健の目的が期待できる旨の表示をする食品」とされています。
通称「トクホ」と呼ばれるもので、からだの生理学的機能などに影響を与える成分を含んでいることにより、特定の保健の効果があることが、国から科学的根拠や有効性や安全性について審査を受けているものなのです。特定の保健の効果とはたとえば、「カルシウム等の吸収を高める」や、「食後の血糖値の上昇を緩やかにする」などの効果のことです。
特定保健用食品の管轄
トクホの商品に表示されているこのマークをみなさんも目にしたことはありませんか?
トクホの制度は、1991年に始まり、その許可に関する事務手続き及び有効性と安全性の評価は厚生労働省がおこなってきましたが、2003年に食品安全基本法の制定により、安全性の評価が食品安全委員会に移管されました。2009年、食品衛生法やJAS法、健康増進法等の法律が消費者庁に移管される中でトクホの制度も厚生労働省から消費者庁に管轄が移行しました。
保健機能食品とは
そもそも、トクホは大きく「保健機能食品」の中に含まれるものです。
「保健機能食品」は「トクホ(特定保健用食品)」と「栄養機能食品」に分類されます。
引用先:食品衛生の窓
トクホも栄養機能食品も、消費者が自分に合った食品を選択できるようにするために、一般の食品では表示することのできない効果や機能などを表示することができるようになっていることが特徴です。
特定保健用食品の種類
(1)特定保健用食品(疾病リスク低減表示)
関与成分の疾病リスク低減効果が医学的・栄養学的に確立されている場合、疾病のリスクの低減させるのに役立つ旨の表示をすることが認められている特定保健用食品をいいます。
(2)特定保健用食品(規格基準型)
特定保健用食品としての許可実績が十分であるなど科学的根拠が蓄積されている関与成分について規格基準を定め、消費者委員会の個別審査なく、事務局において規格基準に適合するか否かの審査を行い許可する特定保健用食品のことです。
(3)条件付き特定保健用食品
現在は特定保健用食品の審査で要求している有効性の科学的根拠のレベルには届かないものの、一定の有効性が確認される食品を、限定的な科学的根拠である旨の表示をすることを条件として、許可対象と認めるのが、条件付き特定保健用食品です。
たとえば、許可表示「○○を含んでおり、根拠は必ずしも確立されていませんが、△△に適して いる可能性がある食品です。」 などと表示することになります。
トクホで表示できる効果と成分
効果と関与成分例を紹介します。
◯お腹の調子を整える
(成分例:オリゴ糖、乳酸菌類、食物繊維類、その他)
◯コレステロールが高めの方に適する
(成分例:キトサン、サイリウム種皮由来の食物繊維、大豆たん白質)
◯食後の血糖値の上昇を緩やかにする
(成分例:難消化性デキストリン、L-アラビノース、難消化性再結晶アミロース、グァバ葉ポリフェノール、豆鼓エキス)
◯血圧が高めの方に適する
(成分例:ラクトトリペプチド、サーデンペプチド、ゴマペプチド、杜仲葉配糖体、かつお節オリゴペプチド、燕龍茶フラボノイド)
◯歯の健康維持に役立つ
(成分例:キシリトール、フクロノリ抽出物、リン酸一水素カルシウム、リン酸化オリゴ糖カルシウム、CPP-ACP)
◯食後の血中中性脂肪が上昇しにくいまたは身体に脂肪がつきにくい
(成分例:コーヒー豆マンノオリゴ糖、ケルセチン配糖体、ウーロン茶重合ポリフェノール、難消化性デキストリン、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、中鎖脂肪酸)
◯カルシウム等の吸収を高める
(成分例:カゼインホスホペプチド)
◯骨の健康維持に役立つ
(成分例:大豆イソフラボン、炭酸カルシウム、ビタミンK2
特定保健用食品を摂取する際の注意点
トクホの食品を選ぶ時には、自分がいま必要なのはどのような商品なのか、それが本当に必要なのかを自分の体調や、食生活、ライフスタイル等をよく考えてから選ぶようにしましょう。また、使用する際には、1日の目安量や摂取の方法などを必ず確認し、守るようにしてください。
いずれのトクホの商品にもいえることですが、トクホは医薬品ではありませんし、多量に摂取することによって予防の効果が高くなったり、疾病が治るわけではありません。それどころか、過剰摂取によってどのような弊害があるのかも明らかになっていないことに気をつけなくてはなりません。
トクホの商品には「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。」という文言の表示が義務付けられています。まずは日常の食生活を見直し、バランスのとれた食事をとることが何より大切なことがらであることは忘れてはならないのです。
特定保健用食品に表示されている事項
特定保健用食品の容器包装又はその添付文書には、次の表示事項を表示しなければなりません。
①商品名
②消費期限又は賞味期限
③保存の方法
④製造所所在地
⑤製造者の氏名(法人にあっては、その名称)
⑥許可証票
⑦許可を受けた表示の内容
⑧栄養成分の量、熱量、原材料の名称
⑨特定保健用食品である旨
⑩内容量
⑪一日当たりの摂取目安量
⑫摂取の方法
⑬摂取をする上での注意事項
⑭バランスの取れた食生活の普及啓発を図る文言
⑮その他
トクホの商品を見て、細かい字で色々書かれているなぁと感じた方もいらっしゃるでしょう。それはトクホにこれだけの事項の表示が求められているからなのです。保健の目的を持つ食品として責任のある表示が求められるのです。
特定保健用食品の表示の適正について
特定保健用食品は、その食品ごとに提出されたデータに基づき、その有効性や安全性について国が審査を行い、科学的な根拠の存在が確認された限りで、特定の保健の用途を表示することを許可するものです。許可された表示の範囲を超えた広告は、健康増進法第26条第1項の規定に違反することになります。
また、当該広告が著しく事実に相違するか、又は著しく人を誤認させるものである場合には、同第31条第1項の規定に違反するおそれがあります。例えば、消費者庁が誇大表示にあたる例として上げるものとして「血圧が高めの方へ」という許表示の食品について、「血圧を下げる」と表示することがあげられています。
特定保健用食品の具体例
実際にトクホの商品にはどのようなものがあるのでしょうか。インターネットのショッピングサイトなどで人気の商品を紹介していきます。
(1)ヘルシア緑茶
ヘルシア緑茶は、インターネットのトクホ飲料の中でも上位の人気商品です。花王株式会社が発売するトクホの緑茶飲料で高濃度茶カテキンを含むものです。花王株式会社は、この商品について、「本品は、脂肪の分解と消費に働く酵素の活性を高める茶カテキンを豊富に含んでおり、脂肪を代謝する力を高め、エネルギーとして脂肪を消費し、体脂肪を減らすのを助けるので、体脂肪が気になる方に適しています。」との表示を許可されています。
ヘルシア緑茶は飲むタイミングを問わず、1日1本継続的に飲むことで、このような効果を得ることができるとされています。
(2)メッツコーラ
キリンビバレッジ株式会社が発売する炭酸飲料で人気があるのが、キリンメッツコーラです。難消化性デキストリンという、植物のデンプンからできた食品素材が使用されている商品で、許可表示は「本品は、食事から摂取した脂肪の吸収を抑えて排出を増加させる難消化性デキストリン(食物繊維)の働きにより、食後の中性脂肪の 上昇を抑制するので、脂肪の多い食事を摂りがちな方、食後の中 性脂肪が気になる方の食生活の改善に役立ちます。 」となっています。食事と同時に摂取するタイプの商品となっています。
(3)胡麻麦茶
胡麻麦茶はサントリー食品株式会社が、販売する飲料で、ゴマから抽出される“ゴマペプチドという成分が含まれています。この成分に血圧を下げる働きがあることを明らかにしたサントリー食品株式会社は、「本品はゴマペプチドを含んでおり、血圧が高めの方に適した飲料です。」という表示の許可を得ています。1日に350mlが摂取の目安とされています。
(4)カテキン緑茶
カテキン緑茶は伊藤園が販売する緑茶飲料です。伊藤園はカテキンの中でも特に、ガレート型カテキンという成分に注目した商品開発を行いました。
許可表示は、「本品は茶カテキンを含みますので、食事の脂肪の吸収を抑えて排出を増加させ、体に脂肪がつきにくいのが特長です。さらに、本品はコレステロールの吸収を抑制する茶カテキンの働きにより、血清コレステロール、特にLDL(悪玉)コレステロールを減らすのが特長です。体脂肪が気になる方やコレステロールが高めの方に適しています。」となっており、2つの機能の表示が許されています。
もっとトクホの商品について知りたい人は、こちらの記事も見てください。
まとめ
トクホの制度がどのような目的で作られたもので、どのような制度なのかご理解いただけましたか。また、具体的にいくつかの商品をご覧いただいたことで、トクホの商品ごとのトクホの成分やその機能の違いに興味を持たれた方もいらっしゃるでしょう。
トクホの制度は国民の健康を図る目的で、消費者が適切に商品を選択できるように作られたものです。
ぜひ、トクホの制度をよく知り、商品のパッケージにされた表示や、インターネットに公表された情報を活用し、賢い商品選びをして、健康的な生活を送りましょう。
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