ドラッグストアや薬局で販売されている多くのOTC医薬品。1回は購入したことがあるのではないでしょうか。しかし、日本では欧米よりも体調不良の時にはそれらの医薬品を利用するよりも病院へ行くという人が多く、OTC医薬品について『あまりよく知らない』とか『副作用が怖いから買わない』という方もおられます。
しかし、最近ではさまざまな問題からセルフメディケーションを積極的に進めるようになってきました。疑問や不安を解消すればとても便利なOTC医薬品。それらを上手に使っていくにはどうすれば良いのかをまとめてみました。
OTC医薬品とは?
OTC医薬品(OTCとはOver The Counterの略語)とは医師の処方箋がなくてもドラッグストアや薬局で直接購入できる医薬品のことを指します。最近では規制の緩和もあり、多くのOTC医薬品が店頭で販売されています。
また昨年、セルフメディケーションの推進を目的として平成29年1月1日から1年間にOTC医薬品のスイッチOTC医薬品とされるものを一定の金額以上(上限あり)購入すると税制の優遇が受けられるという制度も作られました。
スイッチOTC医薬品とは?
スイッチOTC医薬品とは、もともと医療用として使用されていた医薬品を有効成分や服用方法、用量が全く同じまま市販されている医薬品のことを指します。
OTC医薬品は、その有効成分のリスクによって『要指導医薬品、第一類医薬品、第二類医薬品、第三類医薬品』の4つに分けられています。
この中で要指導医薬品と第一類医薬品は安全に服用するために購入者に対して副作用などのリスクを説明する義務があるため、薬剤師のみが販売できる医薬品です。スイッチOTC医薬品のほとんどは第一類医薬品に該当しています。
スイッチOTC医薬品の具体的な薬一覧
現在販売されているスイッチOTC医薬品でよく聞くのは内服薬では解熱鎮痛薬や抗アレルギー薬、胃薬などがあり、外用薬では抗真菌剤(水虫薬)などがあります。
主なスイッチOTC医薬品
<内服薬>
λ ガスター10(成分:ファモチジン 効果:胃酸分泌抑制薬)
λ トランシーノ薬用ホワイトニングエッセンス(成分:トラネキサム酸 効果:肝斑治療薬)
λ ロキソニンS(成分:ロキソプロフェンナトリウム 効果:解熱鎮痛薬)
<外用薬>
λ ボルタレンACゲル/ローション/テープ(成分:ジクロフェナクナトリウム 効果:消炎鎮痛薬)
λ アラセナS(成分:ビダラビン 効果:抗ウィルス薬)
λ ラミシールプラスクリーム(成分:テルビナフィン 効果:水虫薬)
この他にもさまざまなスイッチ医薬品が販売されています。同じような効果でも少しずつ異なる特徴を持っていますので、気軽に店頭の薬剤師に相談するようにしましょう。
また、現在販売されているロキソニンテープやゲル、パップなどは要指導医薬品に分類されています。その他の要指導医薬品は抗アレルギー薬のエバステルALやペミラストンAG点眼液などがあります。厚生労働省のホームページで定期的に更新されていますのでそれを参考にしてください。
スイッチOTC医薬品を買うと医療費控除?
今まではOTC医薬品をたくさん購入しても税制などの優遇を受けることができませんでした。しかし昨年、セルフメディケーション推進を目的として、OTC医薬品のうちスイッチOTC医薬品に該当するものを購入した場合に『租税特別措置法に基づく医療費控除の特例(セルフメディケーション税制)』という控除を受けることができるという制度が作られました。一体、どのような制度なのでしょうか。詳しくみてみましょう。
そもそもセルフメディケーションってなに?
セルフメディケーションを日本語でわかりやすく言い換えると『自己治療』というのが最適です。これは普段、『風邪気味かも・・・』とか『頭が痛い・・・』、『胃の調子が良くない』など軽い症状がある際に自分で薬を購入し、服用したり休息をとったりして自分の健康を自分で管理することを指します。
また、世界保健機関(WHO)ではこのセルフメディケーションを『自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当すること』としています。このセルフメディケーションの効果としては次のようなものもあります。
①毎日の健康管理の習慣がつく
②医療や薬の知識が身に付く
③疾患により医療機関に受診する手間と時間が省かれる
④医療費の増加を防ぐ
現在の日本では軽い体調不良であっても病院を受診するケースが多くみられます。病状が悪化するのを防ぐために専門家に診てもらうという観点では良いことでもあります。しかし、それによって自分自身の体調を医者任せにして関心を持たないというのは少し問題がありますよね。
セルフメディケーション税制とは?
1年間に支払った医療費が10万円を超える場合に、超えた分が所得から控除される医療費控除という制度は存在しています。しかし、比較的健康で病院を受診することがない人にはあまり関係がないものでした。そのような方がちょっとした体調不良でスイッチOTC医薬品を利用した場合に一定の条件を満たせば税金が還付・優遇される制度が昨年作られました。それがセルフメディケーション税制です。これは2017年1月1日から始まっています。
セルフメディケーション税制を活用できる一定の条件
厚生労働省のホームページでは『健康の維持増進及び疾病の予防の取組と一定の取組を行う個人が平成29年1月1日から平成33年12月31日までの間に自己と生計を共にする配偶者とその他家族に係る一定のスイッチOTC医薬品の購入対価を支払った場合においてその対価の合計額が1万2000円を超える場合は、その超える部分(上限8万8000円)についてその総所得金額等から控除する』と記載されています。
ここで気になるのは『一定の取り組み』です。まず、一定の取り組みとは健康を維持するために特定健康検査や予防接種、定期健康診断、健康診査、がん診査などのことを指します。きちんと自分の健康を定期的にチェックしているかということが言われています。このような検診などを定期的に受けた上で指定する成分のスイッチOTC医薬品を購入した場合に税制の優遇を受けることができるというものです。
スイッチOTC医薬品の成分って言われても・・・
『◯◯という成分が税制に該当する成分です。』と言われても、薬の箱の小さいカタカナを見て判断するのは面倒ですよね。しかし現在販売されている医薬品でこの税制の対象になっているものの箱に『セルフメディケーション/税/控除/対象』という言葉がマークとして箱に記載されていますのでこれを目印に探せるようになっています。
一度、店頭に足を運んで自宅に常備しているものが対象になっているか見ておくのも良いでしょう。
医療費控除を受けるにはどうすればいい?
注意してほしいのはこの税制を受ける場合には既存の医療費控除を受けることができません。したがって、どちらを選択するかをきちんと考えてから申告するようにしましょう。セルフメディケーション税制を申告する場合には以下の書類が必要です。
①対象の医薬品を購入した時のレシートや領収書
このレシートや領収書には商品名と金額、当該商品がこの税制対象商品である旨の記載、販売店名、購入日の記載が必要です。
②年内に行った予防接種や健康診断などを明らかにする書類(領収書や結果通知書など)
③(給与所得者の場合)源泉徴収票
これらを確定申告書に添付して申告します。少し面倒に感じるかもしれませんが、せっかくできた制度なので有効に利用するようにしましょう。
まとめ
今まであまりOTC医薬品に関心がなかった方も多いのではないでしょうか。現在販売されているOTC医薬品は安全性が確立されており、安心して使うことができます。また、その中のスイッチOTC医薬品は医療用で使用されてきてその有効性が明らかになっていますがリスクが高く、販売時に薬剤師の問診や説明を義務付けているものもあります。
スイッチOTC医薬品の中で自分の症状を改善するものがあるのかを薬剤師に相談をしながら選んでみても良いのではないでしょうか。
しかしながら、注意していただきたいのはスイッチOTC医薬品を含む全てのOTC医薬品本来の役目は軽度な症状の治療や予防を目的としています。症状が改善しない場合や再発を繰り返す場合、悪化する場合は必ず専門の医療機関の受診が必要です。その判断がしづらい場合は薬剤師に症状と経過の相談をしてみましょう。
OTC医薬品をうまく利用することで自分自身の健康管理やその知識を自分たちの健康寿命を伸ばすようにしましょう。
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