優良誤認表示とは?ガチャ返金・違反事例[景品表示法]

景品表示法は不当表示により商品・サービスの購入に関する合理的選択を阻害することを防止して一般消費者の利益を保護する法律です。

景品表示法の禁止する不当表示の典型は、①優良誤認表示と②有利誤認表示の2類型です。

今回は、景品表示法の禁止する不当表示のうち、優良誤認表示について、その内容及び違反した場合に起きること、過去の実際の違反事例について解説します。

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目次

優良誤認表示とは?

優良誤認表示とは、商品・サービスの品質・規格などの内容について、実際のものや事実に相違して同業他社のものより著しく優良であると一般消費者に誤認されるおそれのある表示をいいます。

簡単にいえば、販売する商品・サービスについて実際より良く見せる表示をして消費者を不当に勧誘することです。

優良誤認表示と有利誤認表示との違い

優良誤認表示とは、商品・サービスの品質・規格などの内容について、実際のものや事実に相違して同業他社のものより著しく優良であると一般消費者に誤認されるおそれのある表示をいいます。

他方、有利誤認表示とは、商品・サービスの価格などの取引条件について、実際のものや事実に相違して同業他社のものより著しく有利であると一般消費者に誤認されるおそれのある表示をいいます。

このように、優良誤認表示と有利誤認表示とは、非常に似ています。

しかし、優良誤認表示は商品・サービスの「内容」に関する不当表示であるのに対して、有利誤認表示は商品・サービスの「取引条件」に関する不当表示である点において、両者は異なります。

たとえば、ハンバーグステーキについて、実際には国産牛を10%使用しているだけであるのに「国産牛100%使用」と表示することは、商品の「内容」に関する不当表示であり、優良誤認表示になります。

他方、実際に国産牛100%使用しているステーキハンバーグでも、過去に1500円での販売実績はないのに、「通常価格1500円のところ、今だけ750円」と表示することは、商品の「取引条件」に関する不当表示であり、有利誤認表示になります。

優良誤認表示と詐欺との違い

次に、有利誤認表示のほかに優良誤認表示と似ているのは「詐欺」です。
詐欺は、簡単にいえば、客に虚偽の事実を告知して、商品・サービスの取引に関する内容・取引条件について勘違いさせ(錯誤)、その勘違いに基づいてお金を払わせる行為です。

有利誤認表示と詐欺の決定的な違いの1つは、故意つまり、わざとしていることの要否です。

有利誤認表示の場合には故意は不要です。他方、詐欺の場合には故意は必要です。

そのため、確認不足等の不注意により優良誤認表示した場合でも景品法違反として行政処分の対象となるのに対し、詐欺にはなりません。

また、故意に基づく不当表示でも、単なる表示行為の事実から客の商品の内容・取引条件について錯誤に陥らせ、その錯誤に基づいて金銭を交付させるところまでの意図を有していたことを証明することは非常に困難です。

そのため、故意に基づく優良誤認表示でも多くのケースでは詐欺にはならないのです。

優良誤認表示を理由にガチャ返金はされる?

ガチャとは、ソーシャルゲーム等において、有償の抽選によりゲーム内のアイテム等を購入するシステムです。

このガチャの確率表記が嘘や違法にならないのか、確率操作しているのではないか、確率がおかしいなどと何度か話題になっています。それでは、優良誤認表示を理由としてガチャのために使った金銭の返金を求めることはできるのでしょうか。

ゲーム運営会社の任意での返金

まず、一番簡易に返金してもらう方法はゲーム運営会社の任意の返金です。但し、この任意の返金は、あくまでもゲーム運営会社の同意を必要としますから、確実に返金できる方法ではありません。

法律に基づいて返金を強制させる方法はあるの?

ゲーム運営会社の任意の返金は法律上の義務ではないため拒否されれば実現されません。その場合、法律に基づいて返金を強制させる方法はないのでしょうか。

考えられるのは、①消費者契約法の不実告知を理由とする契約の取消と②債務不履行に基づく損害賠償請求の2つです。

消費者契約法の不実告知を理由とする契約の取消

まず、消費者契約法は、契約の締結の勧誘に際し、契約に関する「重要事項」について「事実と異なること」を告知したことにより当該重要事項について「誤認」したことを要件として、当該契約の取消を認めています。

たとえば、実際には出現率0.01%のアイテムについて「出現率1%」と表示されていたため当該アイテムを有償でもゲットしたいと考えた消費者Aが10回100円のガチャを10000回(計10万円)行い、ようやく1体ゲットした後に不当表示を知ったものとしましょう。

まず問題になるのは、そもそも取消の対象になる契約の内容です。
素直に考えれば、取消の対象になるのは「代金100円の支払により10回のガチャを回す」契約になると思います。このうち消費者Aとしては、目的のアイテムを取得できなかった9個の契約の取消を求めることになるでしょう。

次に、問題になるのは、アイテムの出現率はガチャ契約に関する重要事項に当たるのかという点です。

消費者契約法は「重要事項」について契約の目的となるものの取引条件であり、消費者の契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすものと規定しています。

この点、ガチャにおける特定のアイテムの出現率は特にレア・アイテム=ゲームにおいて非常に有利となるアイテムであれば有償ガチャを回すか否かについての判断に通常影響を及ぼすものといえそうです。

景品表示法と消費者契約法は別の法律ではありますが、共に一般消費者の利益を保護するという意味では共通しています。

したがって、景品表示法違反である優良誤認表示は消費者契約法における重要事項に関する不実告知でもあると判断する考え方は十分にあり得ます。但し、この問題については、現状確立した裁判所の見解はありません。

債務不履行に基づく損害賠償請求

それでは、債務不履行に基づく契約の解除損害賠償についてはどうでしょうか。
まず、有償ガチャ契約において、ゲーム運営者はガチャのアイテム出現率を表示するに際してこれを正確に表示する義務を負うことについては認められるでしょう。その義務を怠り実際の出現率とは異なる出現率を表示した行為は債務不履行に当たります。

問題は、その債務不履行により生じた損害及び両者の因果関係です。一般に損害賠償請求における損害は債務不履行のなかった場合の経済状況と債務不履行により生じた経済状況の差額として把握されます。

まず債務不履行のなかった場合つまり優良誤認表示のなかった場合の経済状況については1回もガチャを回さなかったといえるのであれば10万円でしょう。しかし、そのように言い切れるのかは問題です。これは債務不履行と損害との因果関係の問題でもあります。

もしも優良誤認表示の有無に関わらず、やはりガチャは回していたのであれば、そもそも債務不履行と因果関係のある損害はないからです。

次に、債務不履行のあった場合すなわち優良誤認表示により生じた経済状況は10万円の損失とガチャにより得たアイテムの経済的価値の取得です。ここでも因果関係の問題が生じることはさておき、ガチャにより得たアイテムの経済的価値はどのように算定するのでしょうか。

このように、債務不履行に基づくガチャ返金においては、債務不履行と損害との因果関係、損害額の確定という難題をクリアする必要があります。

なお、後者の損害額の確定の点について、法律上、損害の生じたことが認められる場合において、損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判所は相当な損害額を認定することができる旨の規定(民事訴訟法248条)があり、この規定を活用して裁判所に相当な損害額を認定してもらうよう求めることも考えられます。

民法上の詐欺取消は認められないの?

なお、詐欺に基づく取消については、先に説明したとおり、詐欺の成立する要件をクリアできない場合が多く難しいでしょう。

もっとも、誰でも欲しがるレア・アイテムについて実際には出現確率0%であるのに、これを知りながら課金させる目的から出現確率50%と表示するようなケースでは、そもそも当たりくじのないくじを引かせるようなものですから詐欺として取消の認められる可能性はあるでしょう。

優良誤認表示が認められた場合に起こること

優良誤認表示が認められた場合には、消費者庁により、①措置命令②課徴金納付命令の2つの行政処分を課せられます。

措置命令とは、優良誤認表示の排除、再発防止策の実施などを命じるものです。

課徴金納付命令とは、一定の要件の下、当該優良誤認表示による売上の一部を納付することを命じるものです。

なお、消費者庁の調査において、対象の表示の根拠になる資料等の提出を求められた場合に何らの資料等を提出しないと、措置命令との関係では優良誤認表示であると擬制され、課徴金納付命令との関係では優良誤認表示と推定されます。

なお、擬制とは、仮に真実ではない場合でも、真実とみなすことです。また、推定とは、一応真実であると認め、真実ではないことを積極的に証明しなければ、真実であると判断されることです。

優良誤認表示の景品表示法違反事例5選

①TSUTAYAの動画見放題プラン等に関する優良誤認表示

<平成31年2月22日>
TSUTAYAは自社の提供する動画配信サービスの「動画見放題」プラン等について自社HP等において人気ランキング及び近日リリースのカテゴリーを含む複数の動画の画像を背景にして「動画見放題 月額933円(税抜) 30日間無料お試し」などと表示していました。

しかし、実際の見放題の対象は全体の12%~26%(特に新作及び準新作については1%~9%)であり、表示の背景の人気ランキング及び近日リリースの動画の大部分は見放題の対象ではありませんでした。

このような表示は優良誤認表示であるとして、TSUTAYAは課徴金1億1753万円の納付を命じられました。

なお、TSUTAYAはHP上における「よくある質問」の欄において、実際の見放題の対象についての補足説明の項目を用意していましたが、この表示は「見放題」の表示とは離れた箇所に小さい文字で記載されており、クリックしなければ見ることのできないものであるから、一般消費者の誤認を解消させるものではないとされています。

②日本マクドナルドの「ローストビーフバーガー」の優良誤認表示

<平成30年7月24日発表>
日本マクドナルドは自社の販売する「東京ローストビーフバーガー」及び「東京ローストビーフマフィン」のTVコマーシャルにおいて、ローストされた牛赤身の肉の塊をスライスする映像を流して同商品にブロック肉(牛の部分肉を分割したもの)を使用しているように表示していたところ、実際には同商品の大半に形成肉(ブロック肉を切断加工したものを加熱して結着させ形状を整えたもの)を使用したため、当該表示は優良誤認表示であると判断されました。

これにより、同社は消費者に対する優良誤認表示の事実の周知、再発防止、同表示の削除の措置命令を講じました。

③ガンホー「パズドラ」の優良誤認表示

<平成30年3月28日発表>
ガンホーは自社の提供するオンラインゲーム「パズル&ドラゴン」通称パズドラのモンスターガチャにおいて、提供する13体のモンスター全てについて「究極進化」の対象になる表示をしていたところ、実際に「究極進化」の対象になるモンスターは13体中2体に過ぎないという優良誤認表示により課徴金5020万円の納付を命じられました。

④三菱自動車及び日産自動車の自動車の燃費性能に関する優良誤認表示

<平成29年6月14日発表>
三菱自動車及び日産自動車は自社の販売する軽自動車の燃費性能について国の定める試験方法に基づかない方法により算出された数値をカタログに表示しており、実際の国の定める試験方法に基づき算出された燃費性能は表示より劣る優良誤認表示により、三菱自動車は368万円、日産自動車は317万円の課徴金の納付を命じられました。

しかし、このうち日産自動車に対する課徴金納付命令ついては、後日、不服申立に基づく審査の結果、取消となりました。

理由は、日産はOEM(相手先ブランドによる生産)供給元である三菱自動車の提供する情報に基づいて燃費性能に関する優良誤認表示しているところ、その情報の正確性について必要かつ相当の調査は尽くしており、優良誤認表示につき「相当な注意を怠った」とはいえないとされたためです。

このように優良誤認表示のある場合でも、表示者に不注意のない場合には、課徴金の納付を命じることはできないのです。

⑤合同会社DMM.comの液晶ディスプレイに関する優良誤認表示

<平成30年10月19日発表>
合同会社DMM.comは自社の販売する液晶ディスプレイの性能について倍速駆動と称する技術により1秒間60フレームにより構成される映像を1秒間120フレームにより構成される映像にできる旨表示していたところ、実際にはそのような機能を有していなかったという優良誤認表示により課徴金1704万円の課徴金の納付を命じられました。

まとめ

優良誤認表示とは、商品・サービスの内容について、実際のものや事実に相違して同業他社のものより著しく優良であると誤認させる表示です。

有利誤認表示は商品・サービスの価格等の「取引条件」に関する不当表示であるのに対し、優良誤認表示は商品・サービスの性能等の「内容」に関する不当表示です。

優良誤認表示は客観的に消費者の商品・サービスの内容に関する誤認を生じさせるおそれのある場合には措置命令の対象になり、表示者の故意・過失による場合には他の要件の下、課徴金の納付命令の対象になります。

優良誤認表示について積極的に相手を欺く詐欺が成立するケースは多くありません。オンラインゲームのガチャに関する優良誤認表示のあった場合にガチャのための課金の返金を求めることのできる可能性はありますが、ハードルは高いです。

優良誤認表示による措置命令・課徴金納付命令の事例はいくつもあり、中には1億円を超える課徴金の納付を命じられた事例もあります。

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