景品表示法で新しく導入された「確約手続」とは何なのか、どんな手続きを行う必要があるのか、こちらで詳しく解説します。
今後、この手続きを利用する事業者が増えてくると思われますので、今のうちにチェックしておいてください。
※現在、パプリックコメント中のため、多少変更になる可能性はあります。
景品表示法の確約手続とは?
確約手続とは、景品表示法第4条または第5条の規定に違反する疑いのある行為について、事業者の自主的な取り組みによって、迅速に問題を解決するために導入された手続きです。
事業者は、是正措置計画を作って認定申請を行い、認定をもらう必要があります。
確約手続が導入された背景
確約手続が導入された背景として、次のような課題がありました。
①措置命令または行政指導しか方法がない
景品表示法違反行為を行う事業者の中には、悪意をもって不当表示を行う事業者だけでなく、意図せずに結果的に不当表示になってしまった事業者や、表示の改善などの自主的な取組を積極的に行おうとする事業者もいます。
しかし、これまでは措置命令か行政指導しか方法がありませんでした。
②事件処理期間が長期化している
端緒件数が増加傾向にもかかわらず、課徴金制度の導入によって事件処理期間が長期化し、措置件数を増やすことができていませんでした。
※端緒件数とは、新規の職権探知、情報提供及び自主報告の合計の件数のこと。
端緒把握から措置命令までの平均処理日数 | 321日 |
端緒把握から課徴金調査終結までの平均処理日数 | 575日 |
引用元:景品表示法を取り巻く現状について
確約手続の対象
確約手続の対象は
・第4条の規定による制限若しくは禁止
・第5条の規定に違反する行為
です。
景品表示法第4条と第5条を以下に掲載します。
第5条第1号は「優良誤認表示」、第5条第2号は「有利誤認表示」です。
(景品類の制限及び禁止)
第四条 内閣総理大臣は、不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を確保するため必要があると認めるときは、
景品類の価額の最高額若しくは総額、種類若しくは提供の方法その他景品類の提供に関する事項を制限し、又は景品類の提供を禁止することができる。
第五条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
三 前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの
また、違反被疑行為が既になくなっている場合であっても、改正後の景品表示法第30条の規定により、対象となり得ます。
対象外となる場合
違反被疑行為者が
①10年以内に法的措置を受けたことがある場合
②根拠がないことが分かっていながら表示するなど悪質かつ重大な場合
は対象外です。
迅速な是正が期待できず、厳正に対処する必要があるためです。
確約手続の流れ
事業者側で景品表示法の違反被疑行為があり、そのことについて調査が開始された後、確約手続通知が来ることになります。
消費者庁は、「調査の開始」から「弁明の機会の付与の通知」を行うまでの間に、確約手続に付すことが適当であると判断するとき、違反被疑行為者に対して確約手続通知を行います。
現在の措置命令・課徴金納付命令の流れは以下のとおりです。
引用元:消費者庁
確約手続を行うメリット
認定をもらうことができれば、以下の適用を受けずに済みます。
・措置命令
・課徴金納付命令
また、事業者として真摯な対応をしているというイメージを消費者に与えられる可能性があります。
確約手続は公表される?
確約計画の認定後は、以下のことが公表されます。
・認定確約計画の概要
・当該認定に係る違反被疑行為の概要
・確約認定を受けた事業者名その他必要な事項
公表する目的は、法運用の透明性と、事業者の予見可能性を確保するためです。
確約認定申請を却下した場合、認定を取り消した場合、申請者が取り下げた場合は公表されません。
確約手続の認定要件
確約手続の認定要件は、以下の2つです。
①措置内容の十分性
違反被疑行為等を是正するために十分なものであることが必要です。
確約手続通知の書面に記載された内容と一定程度合致する事案の措置の内容を用意しなければいけません。
②措置実施の確実性
確実に実施されると見込まれるものであることが必要です。
例えば、一般消費者への被害回復を行う場合、措置の内容、対象となる一般消費者への周知の方法、実施に必要な資金の額、その調達方法、を具体的に明らかにしなければいけません。
是正措置計画の内容・典型例
是正措置計画の内容は事案によって異なるため、個別に調べて作成する必要がありますが、典型例が「確約手続に関する運用基準」に示されています。
(ア)違反被疑行為を取りやめること
違反被疑行為を継続している場合、違反被疑行為をやめることは、「措置内容の十分性」を満たすために必要な措置のひとつです。
(イ)一般消費者への周知徹底
違反被疑行為の内容について一般消費者へ周知徹底することは、「措置内容の十分性」を満たすために必要な措置のひとつです。
(ウ)違反被疑行為及び同種の行為が再び行われることを防止するための措置
コンプライアンス体制の整備等を行い、事業者の役員および従業員に周知徹底することは、「措置実施の確実性」を満たすために必要な措置のひとつです。
(エ)履行状況の報告
事業者、または履行状況の監視等を委託した独立した第三者(消費者庁が認める者に限る)が、確約措置の履行状況について、消費者庁に対して報告することは、「措置実施の確実性」を満たすために必要な措置のひとつです。
報告時期と回数は、確約措置内容に応じて設定します。
(オ)一般消費者への被害回復
商品やサービスを購入した一般消費者に対し、その購入額の全部または一部について返金することは、「措置内容の十分性」を満たすために、重要な事情として考慮されます。
(カ)契約変更
違反被疑行為がなされるに至った要因が、既存の取引先(アフィリエイターを管理するASP、調査会社など)にもある場合、取引先の変更や、契約内容の見直しは、「措置内容の十分性」を満たすために有益です。
(キ)取引条件の変更
例えば、違反被疑行為が景品表示法第5条第2号(有利誤認表示)に違反する疑いのある行為だった場合、取引条件の変更は、「措置内容の十分性」を満たすために有益です。
是正措置計画の様式例はこちらの資料に掲載されています。P.11〜です。
まとめ
確約手続は、景品表示法違反被疑行為の端緒件数の増加や、事件処理の長期化によって導入された新しい解決方法です。今後、利用されるケースが増えてくると思われます。
もし自社で景品表示法違反行為を行ってしまった場合には、積極的に活用しましょう。
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