景品表示法改正2023年の条文や内容・ポイントは?

景品表示法改正2023年の条文や内容は?

景品表示法(​​不当景品類及び不当表示防止法)の一部を改正する法律案が2023年5月10日に成立しました。基本的には厳罰化の方向です。

消費者委員会本会議の議事録によると、自主的に是正に取り組む事業者には、確約手続の導入で早期の是正を図り、繰り返し違反する事業者または悪質な事業者に対しては、抑止力の強化もしていき、景品表示法の対応力を高めていく、というのが今回の改正の中核部分とのことです。

主な改正内容と、それにかんする条文などについて確認していきます。

目次

主な改正内容

主な改正内容は資料にまとめられており、以下のとおりです。


引用:概要

法律案・理由

新旧対照条文

事業者の自主的な取組の促進

確約手続の導入

違反行為を行った事業者が是正措置計画を申請し、認定されれば、措置命令及び課徴金納付命令の適用を受けないこととする迅速な問題改善制度の創設。(第26〜33条)

具体的には下記の条文内容が新設されます。

第六節 是正措置計画の認定等

(継続中の違反被疑行為に係る通知)
第二十六条 内閣総理大臣は、第四条の規定による制限若しくは禁止又は第五条の規定に違反する行為があると疑うに足りる事実がある場合において、その疑いの理由となつた行為について、

一般消費者による自主的かつ合理的な商品及び役務の選択を確保する上で必要があると認めるときは、当該疑いの理由となつた行為をしている者に対し、次に掲げる事項を書面により通知することができる。

ただし、措置命令に係る行政手続法第三十条の規定による通知又は第十五条第一項の規定による通知をした後は、この限りでない。

一 当該疑いの理由となつた行為の概要
二 違反する疑いのある法令の条項
三 次条第一項の規定による認定の申請をすることができる旨

※第四条は、景品類の制限及び禁止。
第五条は、不当な表示の禁止(優良誤認表示、有利誤認表示、指定告示を含む)。つまり、第5条第3号にもとづく、おとり広告やステマも含まれます

また、確約手続をすることになった事業者は公表される可能性があります。

(是正措置計画に係る認定の申請等)
第二十七条 前条の規定による通知を受けた者は、疑いの理由となつた行為及びその影響を是正するために必要な措置を自ら策定し、実施しようとするときは、内閣府令で定めるところにより、その実施しようとする措置(以下この条及び第二十九条第一項第一号において「是正措置」という。)に関する計画(以下この条及び同号において「是正措置計画」という。)を作成し、これを当該通知を受けた日から六十日以内に内閣総理大臣に提出して、その認定を申請することができる。2 是正措置計画には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 是正措置の内容
二 是正措置の実施期限
三 その他内閣府令で定める事項3 内閣総理大臣は、第一項の規定による認定の申請があつた場合において、その是正措置計画が次の各号のいずれにも適合すると認めるときは、その認定をするものとする。​​
一 是正措置が疑いの理由となつた行為及びその影響を是正するために十分なものであること。
二 是正措置が確実に実施されると見込まれるものであること。

4〜9(省略)

(是正措置計画に係る認定の効果)
第二十八条 第七条第一項及び第八条第一項の規定は、内閣総理大臣が前条第三項の認定(同条第八項の変更の認定を含む。次条において同じ。)をした場合における当該認定に係る疑いの理由となつた行為については、適用しない。ただし、次条第一項の規定による当該認定の取消しがあつた場合は、この限りでない。

※第七条第一項は、措置命令
※第八条第一項は、課徴金納付命令

通知を受けた事業者は、是正措置計画を提出することになります。これを提出して認定されれば、措置命令や課徴金納付命令が行われることはありません。

課徴金制度における返金措置の弾力化

・消費者への返金方法として金銭以外に第三者型前払式支払手段(いわゆる電子マネー等)も許容(第10条)。

下線部分が改正で追加されました。

第十条 第十五条第一項の規定による通知を受けた者は、第八条第二項に規定する課徴金対象期間において当該商品又は役務の取引を行つた一般消費者であつて政令で定めるところにより特定されているものからの申出があつた場合に、

当該申出をした一般消費者の取引に係る商品又は役務の政令で定める方法により算定した購入額に百分の三を乗じて得た額以上の金銭(資金決済に関する法律(平成二十一年法律第五十九号)第三条第七項に規定する第三者型発行者が発行する同条第一項第一号の前払式支払手段その他内閣府令で定めるものであつて、金銭と同様に通常使用することができるものとして内閣府令で定める基準に適合するもの(以下この項において「金銭以外の支払手段」という。)を含む。以下この条及び次条第二項において同じ。)を交付する措置(金銭以外の支払手段を交付する措置にあつては、当該金銭以外の支払手段の交付を承諾した者に対し行うものに限る。以下この条及び次条において「返金措置」という。)を実施しようとするときは、

内閣府令で定めるところにより、その実施しようとする返金措置(以下この条において「実施予定返金措置」という。)に関する計画(以下この条において「実施予定返金措置計画」という。)を作成し、これを第十五条第一項に規定する弁明書の提出期限までに内閣総理大臣に提出して、その認定を受けることができる。

現金やクレジットカード以外の決済手段が利用されることが増えている現実に即して、改正された内容です。

違反行為に対する抑止力の強化

課徴金制度の見直し

・課徴金の計算の基礎となる事実を把握できない場合に売上額の推計から算出が可能に(第8条第4項)。

以下は新設の条文です。

第八条
4 第一項の規定により課徴金の納付を命ずる場合において、当該事業者が当該課徴金対象行為に係る課徴金の計算の基礎となるべき事実について第二十五条第一項の規定による報告を求められたにもかかわらずその報告をしないときは、内閣総理大臣は、当該事業者に係る課徴金対象期間のうち当該事実の報告がされず課徴金の計算の基礎となるべき事実を把握することができない期間における第一項に定める売上額を、当該事業者又は当該課徴金対象行為に係る商品若しくは役務を供給する他の事業者若しくは当該商品若しくは役務の供給を受ける他の事業者から入手した資料その他の資料を用いて、内閣府令で定める合理的な方法により推計して、課徴金の納付を命ずることができる。

・10年以内に課徴金納付命令を受けたことがある事業者は、課徴金の額が1.5倍(第8条第5項及び第6項)

以下は新設の条文です。

第八条
5 事業者が、基準日から遡り十年以内に、課徴金納付命令(当該課徴金納付命令が確定している場合に限る。)を受けたことがあり、かつ、当該課徴金納付命令の日以後において課徴金対象行為をしていた者であるときにおける第一項の規定の適用については、同項中「百分の三」とあるのは、「百分の四・五」とする。

6 前項に規定する「基準日」とは、同項に規定する課徴金対象行為に係る事案について、次に掲げる行為が行われた日のうち最も早い日をいう。
一 報告徴収等(第二十五条第一項の規定による報告の徴収、帳簿書類その他の物件の提出の命令、立入検査又は質問をいう。第十二条第四項において同じ。)
二 第三項の規定による資料の提出の求め
三 第十五条第一項の規定による通知

何度も違反行為を行う事業者に対して、厳しい措置を行うための内容です。

罰則規定の拡充

・優良誤認表示・有利誤認表示に対し、直罰(100万円以下の罰金)が可能に(第48条)。

以下は新設の条文です。

第四十八条 次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、百万円以下の罰金に処する。

​​一 自己の供給する商品又は役務の取引における当該商品又は役務の品質、規格その他の内容について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると一般消費者を誤認させるような表示をしたとき。

二 自己の供給する商品又は役務の取引における当該商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者を誤認させるような表示をしたとき。

円滑な法執行の実現に向けた各規定の整備等

国際化の進展への対応

・措置命令等における送達制度の整備・拡充、外国執行当局に対する情報提供制度の創設(第41条~第44条)

以下は新設の条文です。

(外国執行当局への情報提供)
第四十一条 内閣総理大臣は、この法律に相当する外国の法令を執行する外国の当局(次項及び第三項において「外国執行当局」という。)に対し、その職務(この法律に規定する職務に相当するものに限る。次項において同じ。)の遂行に資すると認める情報の提供を行うことができる。

適格消費者団体による開示要請規定の導入

・適格消費者団体が、事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の開示を要請でき、事業者は応ずる努力義務を負う(第35条)

以下は新設の条文です。

(資料開示要請等)
第三十五条 適格消費者団体は、事業者が現にする表示が前条第一項第一号に規定する表示に該当すると疑うに足りる相当な理由があるときは、内閣府令で定めるところにより、当該事業者に対し、その理由を示して、当該事業者のする表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料を開示するよう要請することができる。2 事業者は、前項の資料に営業秘密(不正競争防止法(平成五年法律第四十七号)第二条第六項に規定する営業秘密をいう。)が含まれる場合その他の正当な理由がある場合を除き、前項の規定による要請に応じるよう努めなければならない。

まとめ

今回の改正に至る背景には、違反する事業者が後を絶たないことがあります。景品表示法はほとんどの事業者が関係する法律なので、違反を減らすためには、事業を自ら行う人や営業・広告などに携わる人全員の知識やモラルの向上が不可欠と言えるでしょう。

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