口コミのやらせ行為と法律の関係は?お客様に何かをプレゼントすることで口コミをもらうのは違法なのでしょうか。ステマ規制との関係についても説明します。
口コミのやらせ行為とは?
口コミのやらせ行為とは、虚偽の口コミや高評価の口コミを捏造する行為のことを言います。
主にGoogle、食べログ、楽天、SNSなどのインターネット上のプラットフォームで行われます。
口コミの投稿者は、商品やサービスを提供する当事者やその関係者、何かしらの金銭的なものをもらった購入者などが考えられます。
高評価の口コミは、他の消費者の意思決定に大きな影響を与えるため、やらせ行為はなかなか無くなりません。
口コミと景品表示法
口コミは景品表示法の不当表示と関係します。景品表示法とは、商品やサービスの品質・内容などを偽って表示することを規制する法律です。
不当表示に関する条文は以下です。
(不当な表示の禁止)
第五条
事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの(優良誤認表示)
二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの(有利誤認表示)
三 前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの
不当表示の中では、口コミは主に優良誤認表示、有利誤認表示、ステマ規制に違反する可能性があります。
優良誤認表示
優良誤認表示とは、商品やサービスの品質、規格その他の内容についての不当表示です。
例えば、以下のような口コミは優良誤認表示で景品表示法違反です。
<具体例①>
化粧品の口コミで「この化粧品を使ったらシミがなくなった」という文章を投稿させた場合、化粧品の効能効果として「シミがなくなる」ことはないため、優良誤認表示になります。
※この場合、薬機法違反にもなります。
<具体例②>
ダイエット食品の口コミで「これを食べただけなのに1週間で3キロやせた」という文章を投稿させた場合、優良誤認表示になります。
ダイエット食品を食べただけで1週間に3キロやせることはありえないからです。
有利誤認表示
有利誤認表示とは、商品やサービスの価格、その他取引条件についての不当表示です。
例えば、以下のような口コミは有利誤認表示で景品表示法違反です。
<具体例①>
「このお店は◯◯市で一番安い」という文章を投稿させ、それが事実でない場合、有利誤認表示になります。
<具体例②>
「ここの脱毛なら月額3,000円で3ヶ月あれば全身脱毛が終わる」という文章を投稿させたものの、3ヶ月のうちに受けられる施術回数には制限があり、全身脱毛が終わるとは思えない場合、有利誤認表示になります。
ステマ規制
ステマ規制とは、消費者に広告であると明記せずに隠して行われた宣伝行為等を取り締まる法律です。
例えば、以下のような口コミはステマ規制違反です。
<具体例①>
Googleの口コミで星5の高評価を美容院の関係者が投稿していた場合、ステマ規制に違反することになります。
<具体例②>
飲食店で「Googleに星5の高評価を投稿してくれたら、500円割引」というキャンペーンをやっていた場合、ステマ規制に違反することになります。
<具体例③>
インフルエンサーが報酬を受け取っているにもかかわらず、「広告」「PR」などの表示をせずに、「このお店すごくよかったからおすすめ」などの投稿をSNSにしていた場合、ステマ規制に違反することになります。
口コミ・レビュー・お客様の声をプレゼントでもらうのは違法?
事業者がプレゼントをする代わりに、消費者に口コミを投稿してもらう行為をしただけで、ステマ規制に違反するわけではありません。
事業者が表示内容の決定に関与しているかが重要です。
例えば、プレゼントをする代わりに、高評価を指示したり、「〜〜〜」という文章を入れた口コミをしてほしいと言ったりしていれば、違反と判断されます。
また、10万円など高額なプレゼントをしている場合は、高評価せざるをえない状況にしていると判断され、ステマ規制違反になる可能性があります。
口コミで割引は違法?
割引もプレゼントと同様で、口コミをしてもらう代わりに割引をしたからといってステマ規制に違反するわけではありません。
こちらも事業者が表示内容の決定に関与しているかが重要です。
高評価や特定の内容を投稿するように指示していれば、違反と判断されます。
景品表示法に違反したときの罰則やリスク
口コミのやらせで景品表示法に違反したときの法律上の罰則やリスクには以下があります。
措置命令
措置命令は、景品表示法第7条に定められています。
第七条
内閣総理大臣は、第四条の規定による制限若しくは禁止又は第五条の規定に違反する行為があるときは、当該事業者に対し、その行為の差止め若しくはその行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示その他必要な事項を命ずることができる。
措置命令を受けると以下の対応を求められます。
・再発防止のための対策
・一般消費者へそれらを知らせること
そして措置命令は消費者庁のホームページで公表され、ニュースになり、多くの人に知れ渡ることになります。そして企業の信頼を大きく損なうことになります。
課徴金
課徴金は、景品表示法第8条に定められています。優良誤認表示と有利誤認表示の場合に課徴金の対象となります。
第八条
事業者が、第五条の規定に違反する行為(同条第三号に該当する表示に係るものを除く。以下「課徴金対象行為」という。)をしたときは、内閣総理大臣は、当該事業者に対し、当該課徴金対象行為に係る課徴金対象期間に取引をした当該課徴金対象行為に係る商品又は役務の政令で定める方法により算定した売上額に百分の三を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。
課徴金の金額は、該当商品やサービスの売上の3%(最長3年)です。
罰則
措置命令に違反した場合、2年以下の懲役または300万円以下の罰金になります。
口コミのステマ規制違反事例
2024年6月6日、ステマ規制で初の措置命令が、医療法人に行われました。
<表示内容>
インフルエンザワクチン接種のためにクリニックに来院した者に対し、Googleマップ内のクリニックの口コミ投稿欄で、
クリニックの評価として「★★★★★」又は「★★★★」の投稿をしてくれれば、インフルエンザワクチン接種費用から割り引くことを伝え、その投稿を表示していました。
<解説>
口コミの高評価を条件に割引することは、ステマ規制違反です。星5・星4という高評価を指示して投稿させてはいけません。
ステマ規制違反による弊害は措置命令以外にも多数あります。
例えば、以下のことが起こっています。
・クリニックのGoogleの口コミ欄に、ステマ規制違反に気づいてそのことを指摘した文章と星1評価を一緒に投稿している患者がいる。
・クリニック名で検索すると上位にステマ規制違反のニュース記事が表示される。
・SNSでクリニック名を検索するとステマ規制違反に関する投稿ばかり表示される。
長期的に事業に大きなマイナス影響を与えるため、できるだけ社内で景品表示法の理解を深め、違反を防ぐことが大切です。
景品表示法に違反する口コミを防ぐ方法3つ
1. 社内教育を徹底する
景品表示法に対するスタッフの理解を深めるために、定期的な社内教育やコンプライアンス研修を行うことが重要です。
やらせの口コミが法律違反行為であることや、その結果として企業にどのようなリスクが発生するかを社員に周知します。また、具体的な事例を通じて、どのような口コミがダメなのか分かりやすいようにするといいでしょう。
特に、マーケティングや広報部門の担当者に対しては、景品表示法ややらせの口コミのリスクに関して徹底的に理解してもらい、日々の業務で法令遵守を意識してもらうことが大切です。
2. 従業員向けのSNSや口コミ投稿ガイドラインを策定する
社内でやらせの口コミが発生しないよう、従業員や仕事を依頼した相手が、SNSや口コミサイトに投稿するときのルールを明文化したガイドラインを策定することが大切です。
従業員が個人的に会社の商品やサービスを宣伝する場合でも、「広告」「PR」などの表示をして企業関係者であることを明示し、消費者を誤解させないように注意を促す必要があります。
ガイドラインを策定したあとは、社内全体で共有し、実際の運用においても遵守されているかどうかを定期的に確認しましょう。
3. 第三者に監視やチェックをしてもらう
社内でのやらせ口コミや景品表示法違反を防ぐためには、第三者に監視やチェックをしてもらうことも有効です。
外部の会社や専門家に、口コミや広報活動が適正に行われているかのチェックを依頼し、違法行為がないかを確認してもらうことで、内部の見落としを防ぐことができます。
また、違反行為が見つかった場合には、改善点を明確にし、再発防止策を講じることで社内の体制を改善できます。
まとめ
口コミのやらせは、ステマ規制も始まり、本格的に規制されるようになりました。
違反が発覚したときのリスクは非常に大きく、その後の事業に大きな影響を与えます。違反しないように、スタッフへの教育を行い、そのような違反が起こらないようにしましょう。
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